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4.入学は体力テストと共に




 入学2日目。


 体力テストの日だ。






 そして、何やらわからない勝負の当日。




 なんであんなの持ちかけちゃったんだろう。


 僕って頭おかしかったのかもしれない。


 なに?戦闘狂いってやつ?


 それとも狩猟民族?戦争国家?




 もう何が何やら、と言ったところだ。






 自分から勝負を持ちかけておいて、そのまま負けるなんてカッコ悪すぎる。



 菜々のためにも、ここは僕から頑張らなくては。





 そう思った矢先、連絡が入った。



 教師長第3番席殿からだ。



『おはよう。君の欲しがってたもの、もうできてるから今のやつは使い潰しちゃっていいよ☆ by科学道具作成班』



 仕事が早いな。


 あんなものどうやって作っているのか全くわからないからな。


 【特技】なんてものが出た時点で思ったが、最近は科学の進歩がすごいんだな。




 こんな形で感じるとは思っていなかったが、人生ってそういうものだと割り切っておこう。





 はてさて、登校の準備をするが、次準備の最中にも2件の通知がきた。



 一件目は菜々からの激励メッセージ。

 自分のせいでごめんなさいと謝罪から始まり、


『結果はどうなっても、貴方は私のために体を張ってくれた人で高校初の友達です。ありがとうございました。』


 という旨のメッセージが来ていた。



 なんか負けを確信しているようで心底腹が立った。




 もういい。

 【特技】使わずにボコボコにしてにしてやる。








 そしてもう一件は可愛らしい死刑宣告……。




 ではなく、先生からの通告である。


 要約すると、『危ない関係は程々に』という内容だ。



 ただそれだけなのに、超敬語ですごくわかりやすい説明を書こうと模索している様子が見受けられる。




 やっぱり昨日の件(教師長的に言えばセクハラ)は逆効果だったみたいだ。



 後でもう一度よく説明する必要がありそうだな(にちゃあ※ねっとりとした笑み)。






 これを読み終えた時点でかなり登校時間が迫っている。



 さて、勝負なんて大袈裟なこと言っても、ただの殴り合いだ。



 それに、3番席殿にも()()を頼んでおいたからセーフだろう。






 いやぁ、今日ちょっと学校行くの気まずいなぁ……。




 右隣は不仲女子。


 左隣は友人兼助ける対象。


 そして、どんなところでも挑発したり喧嘩売ってきたりしそうな山岸。


 憂鬱以外の何ものでもない感じがするよ。





 せめて目立たず終わりますように…………。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





「おい、自己中偽善者」


「それって僕のことであってる?」





 学校の教室に着いた時、早速山岸に絡まれた。



 いろんな生徒が見てる前でおっ始めるなや、菜々も未来も見てやがるぞ。



 でも、みんな。

 なんかお通夜みたいな雰囲気出してるな。



「悪いが今日の決闘、なしだ」


「なんだ?怖気付いたか?」






「いんや、あの女が『俺の女になるから戦いはやめてください』って言ってきたんだぜ?助ける対象に見限られるなんて、不安なこともあるよなww」



 あぁ、これのやりとりをこの教室でやったからみんな絶望してたわけね?



 うーん、え?




「うん、で?」


「は?」



 教室内がざわつく。

 いやいやいやいや。え?





「いや、菜々が戦いをやめてって言って、なんでやめないといけないんだ?」



「どういうことだよ、おい?お前が助けたい女が助けなくていいって言ってんだから勝負しても無駄だろ。俺の女の名前も呼び捨てにしやがって」





 困惑しながら詰め寄ってくるもんだから、僕は真正面から向かい合う。




「だから、僕はただただお前がイラつくからぶちのめすって言ってんだ。友達だからと言って、菜々にそんなこと決められる権利なんてないぞ」


「はぁ……!?」






 山岸の胸にビシイッ、って指を刺してカッコつけてみる。



「お前がイラつくからぶちのめすっていう動機に、口出せるやつなんていないんだよ。わかったら自分の準備不足を呪いながら反省文の用意をしておきな」



「どこまでも侮辱しやがって………!」


「そう!そういうところ!!」

「ああぁ!?」






「そうやって自分が悪くないってナチュラルに人を見下すところが嫌いなんだっていってんだ」


 まだ続ける。







「お前のような人間は、ただ自分の欲望に忠実で、その欲望を満たすためであればどんなことでもする。そして、それに罪なんて言葉は一切介在しない。だから、お前は人との協力による支え合いによる生き方ができず、1人で死んでいくのがお似合いなんだよ」



 ゆっくりと後ろに歩いて振り返る。




























 中指を立てて宣言してやる。


「I hate you. 僕は、お前が大っ嫌いだ」




 教室内から歓声が沸く。

 山岸が歯軋りをしながら去る。


 右隣からは称賛の口笛が聞こえた。


 そして左隣からは………。






「なんてこと言ってるの!?私はあなたが巻き込まれないように……」



「友達なんだから、巻き込ませてくれよ。このくらいだったら、僕もやる」



 まぁ、こう言われるだろうとは思っていた。



 でも、不思議と気分がいい。


 いやぁ、言いたいこと言えてスッキリしたわ!



 こりゃ体力テストもいい点とれるな!






 と考えているともうSHRの時間だ。


 固い足取りで先生がやってくる。





 それはもうビクビクしながら。



 山岸をチラッと見て、ビクッ!



 こちらをチラッと見て、顔の血の気が『サーッ』と引いていく。





 なんか、警戒されてるなぁ。






「しょ、しょれではSHRをはじめましゅ!」




(((((((((((((((((この先生、かわいいな!!)))))))))))))))))






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇








 福島先生の可愛いSHRが終わり、体力テストのためにまずはグラウンドに移動する。




 今回は5クラス合同でやるから、グラウンドと体育館で3:2で分かれている。





 体育館は入学式で見ていたが、【特技】を使うからか、見た感じ、割と硬そうだった。





 今は2年生、3年生がいない。


 全校生徒一年生のみで200人だが、これから続くとなると600人全員が入れるようにならなければいけないので、グラウンドは広すぎると言っていいほど広い。




 この島のような学園といい、去年はこれを建てる計画もなかったそうだ。



 なんでそんな短期間でこんなにでかいものができているんだ………。



 これも【特技】のおかげってことか…。








 玄関も空きが多いから、混んでるところを避けて靴を履いて出る。




 そこで声をかけてくるやつがいた。


「うぉい!お前か!山岸に喧嘩売ってるやつ!」



「お前は………そう、黒川」

「残念!黒田でした〜」



 そう、黒田だ。


 【必勝の運否天賦】という【特技】を持った男。



 よほど実力に差がなければ幸運のチカラで負けてしまうという、かなり理不尽な【特技】だ。


 と、僕は予測している。





「覚えてるよ。鏡文字が得意と言っていたよな。アレって発達障害が関係してるらしいぞ」


「関係してない場合もあるだろ、失礼だな」




 まぁ、失礼を自覚して言ってるからな。





「お前今日アレだろ?好きな人のために戦うんだろ?いいなぁ〜、青春って感じ!」


「おい、ちょっと待て、なんか変なこと言わなかったか!?」




「え?お前、逆原さんが好きで助けるんじゃないのか?みんなそう言ってるぞ?」



「どこのデマ情報だ。アイツとは高校での初友達だ。友達作った瞬間にそいつが身勝手なことされてぼっちになるのは悲しすぎるだろ?」






「ぷっ、ははははははは!!!」


「なんかおかしいかこの野郎!」





「いや、俺、お前好きだわ」


「え、ごめん、僕男好きの趣味ないんだ」


「ははは〜、ぶん殴っていいか?」




「はぁ、とりあえず、今日はまず体力テストだろ」


「おう、楽しみにしてるよ」




「?なにをだ?」


「だから、山岸との喧嘩」






「あ、それ非公開です」


「??」






「誰にも見られない場所借りてやれることになったから」


「はぁ!?俺ら見れないの!?」





「そんなプロアスリート見に行くみたいな感覚で喧嘩見にくんな!」

「チッ」

「舌打ちもするな」





 こいつ、コミュ力高くないか!?怖すぎるんだが、陰キャには出せないオーラ纏ってやがる。




「は〜い、みなさ〜ん。まずは100m走をするので2m間隔で並んでくださ〜い、【特技】は危ないので並び終わってから使ってくださーい」



 可愛い可愛い福島先生が頑張って生徒たちを引率している。



 まずは100m走か……。





 あまり他のクラスに目立たないようにするには、記録を目立ちにくくするため、手を抜くぐらいが一番ちょうどいいくらいなはずだ。




 さすがにここで全力で走るのは気が引ける。


 とりあえず、普通の人が走る感じで。





 俺は出席番号12番だからギリギリ2番目に走る人だ。



 どうせだったら話したことのある黒田と3番目に走りたかったが、まぁしょうがない。





「位置について」




 黒田は後ろで準備運動(?)的なものをしているな。




 ああ、でもそうか。


 【特技】が雑魚だからここで本気で走っても大丈夫だ。


 みんなには優秀な【特技】があるんだから、少し早いくらいの印象になるだろう。






「レディー……ゴー!」






 みんなが【特技】を使って走ろうとする中、意志を固めた俺は、第一歩を踏み出した。



 ギュン!







「「「「「「え」」」」」」



 ………あれ?みんな【特技】使ってる?





 なんで、俺が独走状態になるんだ?



 え、おかしくない!?!?





 や、やばい。


 一気に先頭出ちゃって目立ってる!!







 うん、これはもう、こうするしかねぇ!!









「う、うわー」


 バタン!ゴロゴロゴロゴロゴロ!!!!





 シーーーン。







「あ、転んだ」

「転んだね」

「あちゃー、痛そう」

「速さ余って転がってるな」

「あいつピクリともしないけど大丈夫か?」






「か、神咲くーーん!え、保健室!?こういう時に動くのが担任なんですかね!?え?え?」



「ぷっくくくくくく、アイツ何やってんの………あははははは!!!」



「え……え、えぇ?え、ええ、え、え?帝……君。え、大丈夫なの?」



「フッ、アイツただの馬鹿だろ。速すぎて自分の体が着いていかないんじゃ意味がない。まぁ、アイツの【特技】が速さ関係って決戦前にわかっただけいいか」



「あーあ、なんかアレも嘘っぽいよ。な〜んか違う気がするんだよなぁ」





 可愛く心配する先生や、さっき喋っていた大げさに笑い転げてる男子、困惑しすぎてちゃんとした言葉が出せない要救助対象はまだいい。


 だが、盛大に勘違いしてるヤンキーもいるし、疑いの目しか向けない女子もいる。




 身を張った、目立たないための時間稼ぎが功を奏してか、みんながどんどんと僕のことをおいていく。








 もちろん、僕を白い目で見ながら。




 はあ………。


 これも全部、足の遅いお前らが悪いだからな……………!!!







 転んで犠牲になった足を抑えながら思ったのだった。






 


うらめもっ!


「黒田の認識だと、未来→かわいい子、帝→面白そうなやつ、菜々→めんどうなやつに好かれた美人、だね。帝は誰とでも意気投合できるって特技も持ってるから普通にいいタッグが成立するのである」



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