35.勝利は誰の手に
巨人の【特技】がとける少し前。
山岸 春太は挟み撃ちに遭いながらも、なお無傷で戦い続けていた。
堀那の謎の【特技】、練治の金属を操る【特技】に対応し、全てを回避していた。
進化したエネルギー弾に弾き飛ばされ、巨人に叩きつけられた練治が立ち上がる。
「ちょいと、乱暴すぎないか?おい」
金属でできた槍を宙空から高速で投げ飛ばされても、弾道を読み切り躱した上で投げ返してくる。
「◾️◾️□◾️□、◾️□◾️◾️*、◾️□◾️◾️□◾️!!」
地面が爆発したとしても、爆発のエネルギーを全て吸収し、吸収しきれないエネルギーは相殺しているので、ダメージは0だ。
「チッ、こいつ爆発もエネルギー吸収で衝撃を吸収しやがる。チートが」
「褒め言葉をありがと、さん!!」
練治の方に手を向けると、練治の背中から衝撃が走った。
「っ!?エネルギー弾が、手元に戻るだぁ!?」
練治の背中を攻撃したのは、先ほど巨人の背中まで練治を吹き飛ばしたエネルギー弾。
エネルギー弾は残ったエネルギーを『磁力』に変化させ、春太本体への最短到着距離の道筋に、練治がいただけだ。
練治は体に穴が開く前に、身を捩ってエネルギー弾を受け流す。
「なんであんな【特技】が【スーパー】程度で止まっているのか理解しかねるな………」
どう見ても上位【特技】の持ち主である二人を相手にしながらもなお、彼はまだ一人の男を見ていた。
『なぜ、何故アイツの行動を読む?アイツは、金田 国満とやらは、それほどまでに俺より秀でているというのか?』
彼の内心は、唯一の格上のことを理解することができないせいで荒れていた。
もういい。
そこまで国満の期待をしているのならば、しょうがないと割り切ってやる。
「お前が見ないというのなら……」
「っ……!?待て。お前の【特技】………」
練治が異変に気づくが、気づくのが少し遅かった。
もう少し早ければ、やりようはあったのに。
春太の右腕におびただしいほどの【スーパーエネルギー】が渦を巻いていた。
それは、何かを拒むような否定の躍動を放ち、オレンジが散りばめられていた黄緑であったはずが、いつの間にか黒の入り混じった深緑のような色に変化していた。
「まずい、堀那!早めに切り上げ……っ!!」
堀那へと計画しようとした次の瞬間、春太の右腕が空を切る。
練治の頬を縦に掠って、そのまま春太の拳は地面を叩き割り、E組バスケットの周囲の足場を崩壊させた。
「なんだってんだ………そのパワー!!」
「一旦退避だ!巨人を飛び越えてあっち側に戻る!!」
退避して体制を整えようとする。
だが、汎用性抜群である【スーパーエネルギー】を舐めすぎだ。
強化&磁力&引力………。
その他etc,etc.を積み込んだ、圧倒的スピード。
それにより、練治と堀那は一瞬で腹に一回ずつぶち込まれる。
「コハッ……」
「ぐっ……、待て。たぶんもうすぐ、あの【特技】が解かれる………」
彼、練治に確証があったわけではない。
だが、彼の【特技】である【錬鉄の加護】を会場の表面全体に張り巡らせていたため、会場のどこで何が起きているのかはいつでも理解できた。
そこで、国満の足跡らしきものが巨人に極めて近く、徐々に巨人が縮んでいる感触がしたからだ。
結果、見事予想は的中。
国満によって【特技】は解除され、巨人がいなくなり、E組バスケットへの道が現れた。
「さぁて〔玉入れ〕ももう終了目前!!残り、1分です!!」
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わずかな残り時間を知らせる実況とほぼ同時に、大体の人間がE組のバスケットへと走り出す。
われ先にと突き進み、このクラスを蹴落とそうと絶好の機会を見逃さなかった。
司令塔である国満は【スーパーパラサイト】によって自由に動けず、春太1人で残りの彼ら全員を相手できるわけがないからだ。
この競技におけるE組の勝利は、彼のこの一分間の行動で決まる。
そんなE組全員のプレッシャーを一心に受け止めながら彼は……………。
何の行動も起こさず、その場に立ち尽くしていたのだ。
「おい、山岸!!動け!どうせまだっ、っ……動けるんだろ!!あぁ!?」
「………そんなの、どうでもいいんだよ」
そう言った瞬間、人の波は春太に到達し、それに押し流されて春太は倒れた。
E組のバスケットには玉がどんどんと溜まっていく。
『隣の芝は青い』、というようなものだ。
他人のものが良いものに見えてしまうようなこと。
先ほどから巨人で閉ざされていたせいで、E組のバスケットが『いざという時に球を入れられない貴重なもの』という認識となったのだ。
そのせいで、ほとんどの人間が他のクラスのバスケットに玉を入れるのをやめてE組のバスケットにだけ玉を入れ始めた。
国満と春太という防衛組2人がいなくなったことにより、残りの4人で彼らを止めるのは不可能だった。
どんどんとバスケットに玉は入り、玉は限りなくゼロに近くなる。
もう拾える玉もないからと、他クラスのところはと向かうものたちも増え、やがてE組のバスケットからはE組以外の全員がいなくなった。
「な、んで……。私たち、頑張ってたんだよ?なのに、なんで………」
「あーもう、西野ちょっと泣いてるし。これだから体育祭とか嫌いなんだよね〜。萎えた。もうやめる」
「だ、大丈夫だよ、西野さん、高橋さん!まだまだ、頑張れば逆転のチャンスはいくらでも………」
E組の女子たちは、絶望感あふれる雰囲気を醸し出していた。
やりたくないのにやらされたのに、努力が報われなかった西野 花。
ちょっとやる気出してたけどやる気の失せたギャル、高橋 木葉。
希望を捨てずに励まそうとするリーダーシップのある水無側 静。
反応は様々であった。
そして………。
「ふざけんのも大概にしろよ春太あぁ!!」
肩也と春太はいがみ合っていた。
「ふはっ。なに本気になってんだよ………」
「こっちは本気でやってんだぞ!!疲れてんのも一緒だ!だってのにテメェは!!それを軽く見てアイツらを無視しやがった!!!」
肩也の激昂に、春太はただ肩をすませただけだった。
「それよりも、これから面白いことが起こるぜ?見てた方がいい」
「何が『面白いこと』だ!テメェのせいでこっちはぁ!!」
「何を怒ってるんだよ。こっちの勝ちはほとんど確定なんだからさ」
「「「……………は?」」」
その一言は、その場にいた半数を困惑に陥れた一言となった。
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今の………。
黒金 練治は自身のバスケットに戻りながら、先ほどの春太の行動に疑問を呈していた。
いや、行動というか、『行動しないという判断』だ。
春太の【スーパーエネルギー】は、先ほどの争いで異常なほどの効力を誇っていた。
それこそ、バスケットに押し寄せていた彼らを止めるほどの力はあった。
それを彼は自覚していたはずだ。
でも、行動しなかった。
様々な理由が考えられるが、その理由を考察できるほど、彼との関係は深くない。
「さて!残り20秒を切りました!」
「もう秒読みか。とりあえず、元々あった100個以上はあるだろう?」
堀那が聞いてくる。
「そうだな。こんだけあれば安心………?」
少し、異変に気づく。
B組のバスケットに戻り、玉を確認する。
「…………して、やられたな」
「え?どうしたんだよ?」
堀那が聞き返してくるが、これはまずい。
「この勝負、E組の勝ちだ」
「はぁ?どういうことだよ。アイツらの得点範囲には、玉はもうほとんど…………」
「これからあそこに玉が入るんだ。この玉を見ろ」
適当な玉を拾い、堀那に投げる。
ちょっと黄ばんだような白をした玉が、うっすらと黒を纏っていた。
「ん?この黒いの……汚れか?」
「違う。勘のいいやつはこれだけでわかるさ。開始当初は気づかなかったが、アイツは俺たちとの戦いで、【スーパーエネルギー】に黒みがかかってた」
堀那も言われて思い出す。
黒の散りばめられた深緑のエネルギーに変色した時のこと。
「つまり、この玉………いや、この玉だけじゃない」
辺りを見回すと、この会場にある玉全てに、黒の散りばめられた深緑がまとわりついていた。
「〔玉入れ〕開始と同時に玉を無作為に全て吹き飛ばした時。あれの対象になった全ての玉が、【スーパーエネルギー】を纏っている………」
「…………おい、確か、【スーパーエネルギー】の能力には…………」
「エネルギーを磁力に変換させて、引き寄せることが可能だ…………」
その事実に気づいた瞬間、玉はある1人の男の元に引きずり出された。
バスケットに入っている玉、入っていない玉。
A組B組C組D組E組、全部一緒くたにして。
唐突の出来事に周囲の人々は戸惑い、何もすることができなかった。
“得点強奪”のことを知らない者達は尚更、意味がわからなかった。
「おい練治、それってつまり、俺たちは……」
「……少なくとも俺は、勝敗は終わるまでわからないってやつ、初めて実感したよ」
玉は全て、春太の元に集まる。
E組のただいまの得点領域内の玉、500個である。
「終っ!!!了っ!!!!!ですっっ!!!!!!!!」
その瞬間、残り時間は0を切り、〔玉入れ〕は終了した。
うらめもっ!
「【スーパージャイアント】って【特技】さぁ、【原初の巨人】みたいなのになったら『○撃の巨人』みたいに『巨人が操れる』みたいなのになるのかなぁ?」
なるべくパクリは作らないように気をつけてるつもりです




