30.競技は尿意と共に
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「………これで、代表者挨拶を終わります」
パチパチパチパチパチパチパチパチ……
校長の長ったらしい演説のような挨拶とは打って変わって、代表者に相応しく、そして簡潔にまとめられた内容であった。
拍手が校長の挨拶の時より長いのが、その証拠だ。
だが、要警戒対象だ。
あちらも、さっきの視線から考えると、僕を敵視しているのは間違いない。
いやはや、面倒にも程があると言うものだ。
今日は競技に出場しないからよかったものの、明日、どさくさに紛れて後ろから○されるんじゃないかと思うと怖いよ。
「以上をもって、創名高校体育祭開催式を終わります。生徒は、一度退場してください」
拍手と共に、生徒は全員退場する。
「え?退場するんだったら、僕らもあっちにいてよかったんじゃないの?」
「別に、こんな日ぐらい朝は寝てたい人とかいるだろ?明日に向けて【特技】の訓練してるやつもいるし、そう言った人に対しての配慮だろう」
純也はコミュ強だからか、かなり人の心情を理解しているようだ。
理解ある夫っていうのは重宝されるからな、その心大事にしろよ。
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「さぁてそれでは各挨拶も終わったことですし、まず一種目を始めましょうかぁ!!!栄えある最初の競技を飾るのは何だぁ!?!?ドゥルルルルルルルルルルル………」
司会が最初の競技を紹介を始める。
いつも思うが、何故発表するたびにいちいちドラムロールを挟むのだろうか。
ドラムロールが挟まれると長くなると言うか、くどいと言うか。
まぁ、ドラムロール非推奨派を持論を持つ僕であった。
「………ルルルルルルル、デンッッ!!最初の競技は!!〔玉入れ〕ですっ!!!!」
「「「「「いええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!」」」」」
いやいやいや!
【特技】専門校で、玉入れ!!!
もうちょっといいチョイスあったやろ………。
「ルウゥゥゥゥルは簡単っ!!『6対6対6対6対6』で自分のバスケットに玉をどんどん入れるだけっ!!でも、これじゃあシンプルすぎてつまらない!!」
なんかこのルール説明、司会者がどんどんとテンション高くなってる気がするんだが!?
「そこで!!《創名高校》特殊ルールうぅ!!!この玉入れは、自チームのバスケットに入った玉の個数分、ポイントをマイナスします!!」
その言葉の瞬間、観客席の頭から『?』が浮かんだ。
無理もない、わかりにくいし。
「解説すると、まずABCDEのクラスのバスケットの周りには囲むように線がひかれており、その線の中にちょうど100個の玉があります!それが、クラスのポイントです!!」
会場の中心にVRでディスプレイが浮かび上がる。
そこには玉入れのバスケットと、その周りにたくさんの玉が置いてある図が写っていた。
「選手たちは、相手のクラスのバスケットに行き、玉を入れる。そうすると、玉が入った分、そのクラスの得点は引かれることになります!!つまり、バスケットに一個も玉が入らなければ最高点の100点、玉が100個バスケットに入れば、得点は0点です!!」
自身のチームがバラけて相手チームのバスケットに行く図が出る。
ここまで説明されれば大体理解した。
自身のクラスのバスケットに入った玉の数だけ、100から得点を引かれる。
「もちろん、自身のクラスのバスケットに留まって相手の攻撃を阻止するのも良し、クラスのバスケットから玉を取り出すのも良しです!!ライバル潰し、漁夫の利、仲間割れもオッケーですよぉ!!」
なるほど。
これは、オリジナルルールなだけあって、なかなかに抜け目がありそうだな。
ルールの抜け穴を使えば、圧倒的大差で勝つことができるだろう。
その抜け穴を利用する者がいれば、ソイツは要警戒対象だ。
純粋な奴は、抜け穴を見つけようとも思わないし、見つけたとしても使わない。
抜け穴を使うような奴は、使おうと思って見つけた奴と、その抜け穴しか知らないような奴だけだ。
前者はともかく、後者はほとんどいないだろう。
「では、選手達はルールを理解していますので、早速!競技に移って行きましょうぅ!!!では、クラス代表の六人、入場してくださいぃ!!!」
そういうと、5つのゲートからそれぞれ六人、姿を現した。
我らがE組のゲートからも、六人の人影が見えた。
〔玉入れ〕の出場選手は、国満、春太、そして肩也という野球部随一の強肩とコントロールを持つ男。
男子勢はこの三人で、後の三人は女子だ。
「頼むぞ、春太」
「ウルセェ黙れ。帝から言われるんだったらなら別に文句はねぇが、俺より弱いお前が言ってくるのは話が別だ。雑魚は黙ってんのがお似合いなんだよ」
肩也が仲良くしようとかけた声をフルでシャットアウトしている。
アイツは元々、『僕に負けたから従っている』スタンスであり、別に丸くなったわけじゃない。
春太も、今日は井狩と同等のトゲトゲしさを感じるな。
僕以外に対しても、もうちょっと寛容的になってくれてもいいと思うんだがな………。
せっかく頭がいいんだ。
頭がいいのに何故ヤンキーになったのかは分からない。
でも、あんな本能だけで動くだけじゃなく、もっと考えて動けば僕と同等かそれ以上の実力までいきそうな気もする。
まぁ、僕の見る目がいいか、自分でも分からないけどね。
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「すまん、トイレ行ってくるわ」
試合が始まる直前だが、尿意を感じたらすぐに行けと叔父さん達から教育を受けている。
故に、友達(?)である国満と、好敵手(笑)の試合である玉入れを見るには、速攻でトイレを済ませなければならない。
幸い、トイレは空いててなかなか早く用を足せそうだったが、後一歩のところで何者かに止められた。
急いで走っていたため下を向いていたから、顔を確認できない。
男、女、すらわからないので、“彼”なのか“彼女”なのか………。
「……………トイレ行きたいんだが?」
「そんなの、アンタなら何とかできるはずだ。第一、生理現象で試合を見逃したって体にしようとしてるなら、体育祭自体をバックれればいい」
声から察するに、“彼女”だったらしい。
「お前さん、誰よい。何もないならそこ通してくれ。漏れる。はよ」
「別に漏れても気にしないでしょ」
「するわ!!」
なんだ?
彼女、もしかして常識ない?
「それよりも私の疑問に答えて。あなたは【特待生】?【特待生】は何人?その根拠はどこ?」
「質問が立て続けすぎない?それに、僕が言って得する?」
「え???意味がわからない。アンタ、それ以外にどんな価値があるの?」
「いやいや、価値ならかなりあるだろ?おまえが言ってる通り【特待生】の可能性もあるんだから」
「間違えた。私以外の人間に、価値なんて無いでしょ?」
コイツ、もしかしなくても常識無いな!!!
ゼロだゼロ!!
観点違いすぎて笑えてきたわ!!!
「じゃあなぜ、無価値な人間と一緒に、価値のある人間がいるんだよ?」
「簡単。アンタ達の価値を見出すためだよ」
…………はぁ?
トイレに行きたすぎて頭がおかしくなりそうな僕でさえ、コイツが言ってることがおかしいのは良くわかる!!
「私に価値を見出されないと価値がない人たちなんだから、どうしようもないよね。で、それに適任なのが【特待生】達だろうと思ったからね」
…………ヤバいやつだな。
うん。
僕以上に『あたおか』な雰囲気がする。
もう、こうなったら仕方ないってやつだ………っ!!
「残念ながぎゅ………噛んだ。残念ながら、僕はもう我慢の限界なんでね、押し切らせてもらうよ」
「…………何する気?ベルトを緩めて、ズボンに手をかけ始めて」
そういうと、何をするのか勘付いたのか、彼女は目を見開いていく。
「あ、や、変態。やめろ、クズ男。私に近づくな!!」
この先どうなるのかが分かってしまったのか、すぐ逃げてしまった。
別に、パンツまで脱ぐつもりはなかったんだけどな。
『それでも、充分犯罪だと思うがな?』
「え、マジ?」
『あぁ。やめておいた方がいいぜ』
光榴からは引かれ、井狩にさえ諭される始末。
…………………まぁ、トイレのためだよな。
〔玉入れ〕開始前には、ギリギリ間に合った。
うらめもっ!
「ね、ねぇ春太くん………体育祭の競技なんだけど…………」
「俺はどの競技も出ねぇ」
「あーあーそっか残念だなぁ〜!!僕が出るのに春太出ないって、やる気起きないなぁ〜〜っっ!!!」
「やる」
「帝くん、ありがとう。お礼に………」
「あぁ。僕が全ての競技に出場しないように、手配を頼んだ」




