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29.開催式は敵達と共に













『お前らーーーっ!!!熱くなりてぇかーーーーっっ!?!?!?』







「「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」







 体育祭、1日目。



 体育祭の実施場所として島に新設された会場は、凄まじいほどの熱気に包まれていた。





 普通、この島は生徒、関係者以外は誰一人として入ってはいけない場所だが、今日は違い、参観を希望した保護者や被検体(一般人)(笑)もこの島に来ている。






 まぁ、被検体というのは、体育祭後にアンケートを取るらしく、それは今後の【特技】教育に役立てる、という意味での被検体だ。




 まぁ、科学者達は元々はこれを世間にばら撒こうとしていたんだ。


 世間の声を取り入れたいのは当然だろう。









 そんな会場の一般観客席を横目に見ながら、今日は一競技も出場しない僕は生徒用の観客席に座っていた。






 隣には、同じく全種目出場しない純也と守、蒼が座っていた。






 ちなみに、夏樹は謹慎により体育祭不出場、国満と春太、未来、菜々は案の定、初日の種目にも出場している。





 菜々は妙にやる気だったが……何をやるつもりだろうか。









 とりあえず、僕らは今日は暇だ。





 ゆっくりとコーラでも飲みながら、体育祭の観察でもしようかな。








「おらあぁーーっ!!各クラス、今日の種目に出場する選手の登場だあぁーーーーっっ!!!!」







 司会がそう言うと、楕円形の会場の五方向から、ABCDEと書かれたゲートが出現した。








「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」」」」」」」」






 栄えある選手達の入場に会場は更に盛り上がる。







 A、B、C、D、E。



 それぞれ、10〜20人程度の集団が歩いて出てくる。





 中には、練治や穂村、当然菜々や国満もいた。






「あれ?確か………秋元さん、だったっけ?」



 いつか見たあの女子もいた。



 顔色はいい。


 国満のトラウマは拭いきれていたようだ。






 だが、何か気味の悪いクラスもあった。



「なぁ、帝。あのクラス………」



「ん?どのクラスだ?」





 純也が指差していたのは、Aのゲートから出てくる一団。




 全員がよろよろと無気力に歩いていた。


 それに、全員の歩幅や一歩一歩のタイミングが全て揃っているのが、なにか不自然だ。







「………やばいな、ありゃ………………」



「当たり前だ!どう見たってヤバい奴らばっかだ、ろ…………?帝?」




「いや、厄介な奴がいるなと思ってな」








 あぁ、ちょっとあまりに酷い光景で顔が呆けていて、純也に心配されてしまった。






 A組の状態は危険だ。




 これは、振り出しからとても不利な状況に立たされている………。







「純也。今日の競技、必見だ」



「なんだよそれ。俺巻き込まれんの?」






 ゾンビのようなA組もそうだが、他にも危険な奴らがいる。









 その中でも、練治も凌ぐ、最も危険な奴が、1-Dにいる。







 アレを野放しにするのは、マズイ。






 今の僕の少ない手札だと、彼には絶対に負ける。











「…………最弱には、ちとキツイな……」





 帝は、ちょっとした絶望感を背負いながら、ため息をついた。










◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇











「あのー。逆原さん」



「ん?あー。どちら様だろうか。私には面識がないのだが………」




「もちろんそうですよね。私とあなたは面識がありませんからね」



「?ならば、なぜ私に声をかけた?」







 彼女は息をフッと吸って尋ねた。




「神咲 帝くんについて、あなたはどう思っているのですか?」








 ドロドロとした感情を奥に押し込んだ、とびっきりの笑顔で彼女………秋元 二色は、逆原 菜々に尋ねた。





「……それは、あぁ。大切な人だと思っている」




「そうですか………。あ、あともう一つ」


「?」





「何をそんなに、意地を張ってるんですか?」



「!?………なんのことだ!?」






 そういうと、二色はその場から去って1-Cへと戻っていった。






「なんだったんだ……彼女は……………」









 1-Cに戻った彼女の横顔を見ると、それはもう楽しそうに談笑していた。




 狂おしいほどの激情を心の内に秘めていることを、菜々が気づくことができないほど、楽しそうに。















◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇












 …………俺と似た【特技】が、この会場にいる?





 確たる証拠はなかったが、本能的にそう思ってしまった。



 【言霊の加護】は、自身の声が聞こえてしまった者全員を操ってしまうチカラだ。




 だが、この会場内………。











 特に、北側のA組出口から感じた。



 そうしてA組を見てみると、数名を除いてほぼ全員、何かしらの【特技】によって支配されていた。




 マインドコントロールというやつだろう。







 そして、その力の元凶…………アイツか?










 支配されていない元気な奴らの中に見つけた、一際異質な男。





 間違いない。


 確証は無いが、マジ奴は同じような【特技】を持っている……。





 つまり、A組のほとんどはソイツたった一人に支配されてしまっているということか。




 一瞬、その男と目が合い、僕は瞬時に目を逸らした。



「この状況は、マズイ……。僕的にも、帝的にも………」








 国満は、帝と同じように、絶望のため息を吐いていた。








◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇












「さぁてそれでは!!開催式を始めましょうかぁ!!!!」





「え、開催式って1日目出場しない人って出ないの?」


「じゃないか?」







「なんて酷い!!やる気のない奴は開催式に出席しなくていいってか!?」



「実際そうだろ」






 純也はこの体育祭の意向に賛成らしい。



 僕だって開催式は出たかったのに。


 だって開催式に出場しなかったら、『体育祭が始まった!!』って感じ全くしないし。






「まぁこの高校は、保護者や生徒の意向全無視の方向で活動してるからな。しょうがないといえばしょうがないだろう」




「それ、生徒会が言っちゃう?」


「あー別にいいよ。生徒会なんて菜々がコミュ障なおかげでほとんど人いないし」


「機能しないじゃん………」







 失礼な。


 これでも放課後に呼び出されてガッチガチに書類作成とかのスケジュール組まされてんだから。





「そぉれでわあぁ!開会の言葉!校長、水森(みなもり)先生!!」




 校長先生……入学式で随分と長いことを話していた人か。




 僕は寝てた気がするし、顔すら覚えていない。



 だが周囲の生徒、特に男子からの評判は地味に良かったはずだ。



 確か……。





 そう思っていると、校長先生が登壇した。







「皆さん、おはようございます。本日は良い天気に恵まれて、本当に幸運でしたね」




 水色髪をロングにした美人が、この高校の校長先生であったらしい。







 ふぅん。


 へぇえ。



 ……ほほぉう。








 まぁ、色んなところがクズな学校だが、許してやらんこともないか。















◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






「───と言ったところです。再三言いますが、今日も健康第一に体育祭に取り組んでください。それでは、私からは以上です」




 校長先生が一歩下がって頭を下げると、拍手が巻き起こった。


 その拍手によって目が覚める。




「………純也、校長先生の話はもう終わったのか?」




「………………zzzzzzzz」




「コイツもダウン、か……」






 目覚ましがてらに伸びをする。


 いやはや、一体何十分語り続ける気なのだろうか。



 そう思い時計を見ると、時間は校長先生が話し始めてから20分が過ぎていた。






 1時間の三分の一と考えると、流石に長すぎる気がする。





「続いてはぁ!!代表者挨拶!!1-Dから、浦見(うらみ) 心汰(しんた)さん、お願いしまぁす!!」








『おい帝、来たぞ。あの男が、1番危険だ』



「わかってるよ……。アイツ、僕と一緒だ」







 1-Dの列から出てきた青年が、コツ、コツと一段ずつ階段を登り、登壇する。




 その瞬間、周囲に背筋が凍るほど恐ろしいプレッシャーが走った。







 その瞬間、浦見 心汰はギョロリと首だけ動かしてコチラを見た。





 バッチリと、真っ直ぐに目が合った。



 呪われるかのような眼光に吐き気を催してしまいそうだが、なんとか耐える。





 その後、浦見 心汰は前を向いて挨拶を始めた。







「んぁ、むにゃ………。なぁ帝、アイツ一瞬こっち向かなかったか?……おい、帝!?」



「なんだよ……ハァ、ハァ、ハァ………」


「いやお前こそ。なんだよその汗の量!!」




「いや、なんでもない………」








 臨戦体制じゃない状態で、油断していたというハンデがあったものの、目を合わせただけで吐き気がする人間なんて存在しない。




 少なくとも、僕は今まで会ったことがない。








 つまり、きっと奴は【特技】を使い、明確に威嚇してきた。





 敵意を持った殺意だった。












 この体育祭、明らかに危険な匂いしかしないな。


















うらめもっ!

「帝くん、つれないわぁ!体育祭なんてあるのに、叔父さん叔母さんに連絡一つもしないなんて!広告見なかったら危うく来れなかったわよ!!」

「まぁまぁ、見られたくない年頃でもあるだろう。許してやれ」





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