27.本能寺は襲撃によって
本能寺は燃えた………はず。
戦闘シーンを書くのが意外と難しかったので、わかりにくいかもしれませんね
「食べかけのチーズケーキは流石にダメだったか」
「ダメに決まってるでしょ」
帰り道である。
今日も今日とて神社に寄るため、猫用のエサを持たされている。
「何なんだ、猫を撫でている最中の私を見たいって。嫌に決まってるじゃないか」
「いいだろう。昨日あんな反応されたらもっとじっくり見たくなっちゃうに決まってるだろ?」
「いつ決まったんだ。それに、その見返りに食べかけのチーズケーキあげるって言われて、はいそうですかってなるか?」
「………チーズケーキ好きなら、多分」
菜々は『何言ってんだコイツ』って顔でこっちを見てくる。
まぁそう思うよね、僕でさえそう思うもん。
菜々は振り返って神社への道のりに向かって進んで行く。
そんなチーズケーキよりも猫の方が楽しみのようだ。
「みぃちゃん………たのしみだなぁ……」
僕に見られないように顔を覆いながら、惚けた顔で神社の階段を登り続ける菜々。
お堅い雰囲気が目立つ彼女も、ちゃんとした女子なんだなと安堵する。
「お前のそんな笑顔、初めて見たぞ」
「み、見るんじゃない!!それに、そんなわけないだろ。だって…………。なんでもない」
「なんだよ、やましいことでもあるのか?」
「そういうとこだよ。帝」
なぜかジト目で睨まれてしまった。
なんで??僕は何かしたか????
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「そういえば、お前は神社でお参りしたことある?」
「ほんとに唐突だな」
神社へ行く道の途中、ふと気になって菜々に尋ねた。
「う〜んと………。2〜3回ぐらいだな」
「いいなぁ〜。僕は行った記憶がないからなぁ………」
「え?待って。ちょっと、今なんて言った!?」
しまった。
この内容は、前の交流会(?)で伝えるのを忘れていた。
「え、記憶がないって言った?ねぇ、ねぇってば!!」
さっきの猫による笑顔はどこへやら。
すごい泣きそうな雰囲気で詰め寄ってくる。
僕が記憶をなくして困ることが、彼女にあったのだろうか。
もしや、幼稚園や小学校が一緒だったか?
え、そしたらめっちゃ気まずいというか………。
それなら、話した方がいいだろうか。
どうせいつか、これも話す時が来るだろう。
彼女は秘密を守るタイプだ。
今言ってしまっても、そこまで問題はないだろう。
「…………。言おうと思ってたんだ。俺は事故にあって、ただいま記憶喪失中なんだ」
「そっか……。そうなんだ……………。それもあって私に………………」
「なんか、スマンな。望んでた答えじゃなかったみたいで」
「いや、もういい。ようやく、どうするべきかわかったから………」
菜々はかなり凹んだ雰囲気で神社の階段を登り始める。
かと思えば、急に走って奥に消えてしまった。
こういう場合、追いかけて慰めるのが基本なのだろうか。
きっとそうなのだろう。
主人公などはきっとそうする。
もしかすると、菜々は僕が追ってくるのを待ってるかもしれない。
だが、僕は主人公向きの性格をしていなかったようだ。
今の僕からすれば、それはただ厄介な行動にしか思えない。
菜々は行ってしまった。
それは、一人で考えたいことがあるからではないだろうか。
僕はそれを真摯に受け止めるべきであると考えるわけで、つまり菜々を追いかけるのはやめておいた方が…………。
と思考を巡らせている瞬間、いくべき方向にある神社に異変があることに気づく。
「黒い……煙…………」
行くべき方向には、黒い煙が立ち上っていた。
神社から黒い煙が出る状況といえば、きっと何かしらの行事で火を焚いてるだけなのかもしれない。
だが、この状況で出ている黒い煙は、絶対にそういうニュアンスのものではないと直感で理解した。
つまり今、あの神社は火事の可能性が高い。
「あの菜々っ…………!!」
火事の原因はわからないが、菜々を追いかけるために僕は階段を駆け出した。
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「ねぇ、あなたはどういうつもりでここに来たの?」
「君と同じじゃないかな。だって僕、若くして指名手配犯だからね」
「あら、なら私と全く一緒じゃない。こんな偶然、あり得るのね」
轟々と神社が燃える中、それを背景に二人の男女が向かい合っていた。
「この惨状は君の【特技】かな?かなり派手にやるみたいだけど、その調子じゃ、バレるのも時間の問題じゃない?」
「そう思う?わたしがどれほど燃やしてきたと思ってるの?バレないやり方なんていくらでもあるわ。それに………」
「「たとえ犯罪者でも、生徒は擁護する」」
「だろう?」
「あら、貴方も全く同じことを言われていたなんて、運命を感じちゃうわぁ。いっそ付き合う?」
妖艶な放火魔、若い指名手配犯は互いに歩み寄る。
「そうだね。僕ら、付き合おうか」
犯罪者二人。
ここに、交際関係という、名ばかりの利用関係を作り出したのであった。
「そういえば、あなたはあの野良猫を見たかしら?」
「随分と無惨な燃やされ方をしていたね。罪な女だ、君は」
「神社を燃やしておいて、見苦しいかもしれないけど、実はあれ、私じゃないのよ?」
「……………つまり、僕らと同じ人がまだ、この学校にいるわけか。ゾクゾクするね」
燃えている神社に背を向けて、二人は寄り添いながら歩き出す。
グチャリ、と指名手配の男が生々しいものを踏んでいく。
そこには、元々何だったのかわからないほどグチャグチャにされた、猫の焼死体があっただけだった………。
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「チッ、どこだよ………。神社広すぎるだろうが………っ!!」
神社の本堂と呼ぶべきだろう場所の前に着いたが、菜々の姿は見えなかった。
探す範囲が広すぎて、もう脚はパンパンだ。
昨日猫がいた場所には、何もなかった。
きっと猫は色々なところで見つけるのだろう。
つまり、菜々も猫を探している可能性が高い………。
「じゃあ、猫を探せば…………っ!!」
猫を探そうと思ったが、それを見つけた。
まぁ、この惨状だ。
仕方ないと言えば、仕方ないか。
でも、ここに留まるのは良くない。
「……気が済んだら…………行くぞ。…………それは置いていくぞ」
「いやっ!!何で!何でえぇ!!!」
菜々は無事に見つけた。
見つけたもう片方…………『みぃちゃん』と呼ばれる野良猫の方は、無事ではなかったが。
「諦めろ。消防車?だかわからんが、学校島の消防隊に連絡は入れておいた。遺体は回収できる」
「いやだ!可哀想じゃないか!!まだ生きてるかも知らないんだ……助けてあげなければ……………」
「現実見やがれ!!!」
無理やり菜々をこっちに向かい合わせる。
「もう、その野良猫は助からないラインに来てるんだ!!燃やされて、腹も踏み潰されている!!今生きている方を優先するんだ!!」
「じゃあ、この子の遺体も一緒に持っていけば………」
「ダメだ。もう行こう」
そういうと、菜々を立たせる。
「……………わかったわよ。行けばいいんでしょう」
やっと立たせることができた。
「じゃあ行くぞ。抱きつけ」
「……………へ?」
いきなりすぎて目が点になっている。
「時間がない!これから、前言った《ターザンロープ》を使う!!」
「わ、わかった」
超真剣な顔で言うと、しっかりと理解してくれた。
いや、まだ理解してないかもしれない。
最後に、野良猫の方をチラリと見る。
やはり、先ほど感じたものと同じように、僕と目が合った。
『やっぱ、アレ生きてるな』
そう感じた後、右腕の義手の手首が外れて射出された。
「えぇ!?何それ!?」
猫を失った涙で、ぐしゃぐしゃになった顔で聞いてくる。
射出された右手はかなり遠くの木に掴まった。
「飛ばしていくぞっ!!」
そう言うと、射出された手と腕を繋ぐワイヤーを巻取り、さながらスパイ○ーマンのように、振り子運動で空を駆けた。
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マンションの屋上に手をかけて、《ターザンロープ(?)》で寮まで戻ろうとする。
が、帝は背後の何かに気づいていた。
「やっぱり、協力者みたいなやつがいるな」
「え?どう言うこと!?」
振り子運動の最中、背後をチラリと見ると、そこには流体の鉄がニョロニョロと動いてこちらを追っていた。
『いや、何だよあれ………』と思いながらも、対抗策を考える。
その結果。
「ちょっとヒヤッとするぞ!!」
そう言うと、振り子運動と自分の腕力を使い、菜々を投げた。
「だからどう言うことーーっ!?!?」
菜々が落ちるまでに決着を付けなければ。
そう思えば行動は早かった。
振り子運動の重力によって戻る力を使い、謎の流体金属へ、推進力を得ながら背後へ振り返る。
「邪魔だ」
親指の仕込み銃から、緊急用に用意しておいた、目眩し用のイカ墨を発射する。
アレに目があるのかわからないが、一応撃ち込めるだけイカ墨を乱射。
結果は、とりあえず命中。
流体の鉄にイカ墨がぶちまけられた。
その結果だけ見た後、右肘から《ロケットブースト》を使用。
ロケットエンジンの力は偉大なり、すぐに菜々の元へと辿り着いたのだった。
「ちょっと!?文章だけだったら理解しづらいんだけど!?」
「我慢しろ!!しょうがないじゃん!!!」
そう言いながら、寮の部屋に右手を飛ばして菜々の部屋に入れるように調節する。
「右から5番、下から3番目!!アンタの部屋そこだろ!?」
その部屋の場所に向けて飛び込むが………。
「違う!もう一個左!!」
「先に言えやああぁぁぁ!!!!」
緊急停止などできず、菜々の部屋の左の部屋のベランダに飛び込んでしまった。
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「あらあらぁ、窓からお客さんなんて、今日はなんて愉快な日でしょうねぇ」
「そりゃ嫌味?ごめんね、調整下手で」
妖艶な女子の部屋にダイブした僕らは、親切な彼女の厚意により許された。
食べかけのチーズケーキも食べてもらおう。
「チーズケーキ要ります?」
「ごめんねぇ、流石に食べかけは嫌だわぁ」
残念、ダメだったか。
「すいませんでした。私共が勝手に入り込んだのになんのお叱りもなく………」
「いやいやぁ。今日は彼氏もできて気分が良かったしぃ、さっき帰ってきたばっかりだから怒れるほど元気じゃないわぁ」
良かったぁ。
彼氏さんには感謝状を送ってもいいくらい感謝だ。
「じゃあ、疲れている方の部屋にお邪魔しているのも何ですし、僕らはこれで失礼いたしますね」
「いやはや、面白かったから、暇だったら来てもいいからねぇ。その時は正々堂々、な?」
「あ、コレ怒ってるやつだ。失礼しましたぁ!!」
帝は女子の怒りの様子をいち早く察知して逃げ帰った。
「そ、それでは、私も失礼させていただきます。お礼をしたいので、お名前を教えていただけると………」
「あらぁ。同じクラスなんだけどなぁ」
「そ、それはすいませんでした……」
そう言うと、クスクスと笑いながら手で制してくる。
「まぁ、そりゃあこんなすぐに名前を覚えれる人も少ないわぁ。ワタシ、熱海 穂村って言うからぁ、これからよろしくねぇ?」
「はい、よろしくお願いします」
「敬語じゃなくてもいいよぉ♪」
こうして、菜々は女友達が一人増え、帝は警戒対象が一人増えた。
「…………にしても、あの金属?何だったんだろう……」
うらめもっ!
「ワタシの出る競技ぃ?そこまで多くないわぁ。綱引きぐらいよぉ」




