参 〜緊急ミッション、猫を見に行こう〜
「【特技】、【時渡り】。対象を未来へと送り飛ばすチカラだ」
「なるほど。だから、未来に送った相手が存在しない数時間があるわけね」
と、頭の良い人間達ははいち早く理解できていた。
菜々は普通に天才並みの頭脳の持ち主であり、未来も父親が教師だからなのか、地頭はかなりいい方だ。
国満は言わずもがな全て理解しているし、意外にも春太は未来よりも早く理解していた。
そして、まだわかってない男………純也に、矢印を扱い何度も説明していた。
「だから、ここで、コイツが未来の時間に飛ばされたら、コイツはもうコイツがここにいることはできないだろ!?だから………」
「だーもう!もうちょっと分かるような説明してくんね!?」
「さすがFランだな………」
「いや!Eだからぁ!!!」
ボソッと言ったはずなのに、純也の耳に捉えられてしまった。
これも、【必勝の運否天賦】の効果だろう。
「でも待てよ。教えてる方はGランだぜ?」
「しょうがないわよ。彼、テスト中ずっと寝てたらしいし、【特技】を使って何をするにしても、かなり頭を使わないといけない【特技】でしょうしね」
どうやら僕が〔Gランク〕という噂だけ先行して、それ以外の理由は一部しか知らないようだ。
春太や国満はそのくだらない理由に地味に驚いていた。
「そういえば、国満と春太のランクはなんだったんだ?」
それもそう。
予想が当たれば、コイツらはかなり高い。
春太は運動神経もよく、【特技】も戦闘に特化している。
それに、国満は天才だ。
やること全てが人並み以上、練習なんてする必要がない人間だ。
「そうだなぁ。僕は〔Sランク〕だったかな?」
「俺は〔Cランク〕だな。【スーパーエネルギー】は用途は多いけど、そこまで強いエネルギーってわけでもないらしいな」
「すごい丁寧に説明してるが、お前、最初は僕に牙剥き出しだったよな?」
「今では別に大丈夫だぞ?お前は真正面から潰してぇし」
「言動が戦闘民族のそれだ…………」
少しは丸くなったのかなぁとは思ったが、ポリシー的な問題なのかもしれない。
「それに…………」
「ん?」
「俺、あんな呆気なく負けたの、初めてなんだよ。だから……衝撃的っつうか……………。色々ぶっ壊されてなんかどうでも良くなったんだわ」
純也が頭の中で【特技】について整理している最中、春太の心変わりについて、春太は天を仰ぎ説明していた。
「まぁ、今まで調子乗ってたんだよ。だから………今までイキってたのなんだったんだろうなーってな」
「なるほどぉ〜。つまぁり、帝のヤロウに自尊心ぶっ壊されたって感じ?」
未来はかる〜く解釈してまとめる。
本人にとっては大事な問題だろうに、と心の中で合掌しておく。
「そんな感じかな」と言いながら金髪を撫でる。
「あーじゃあ僕も言っちゃおっ!」
国満が元気良さそうに手を上げる。
「これって事実上の帝への敗北宣言でしょ?いやぁ、全てのことでそうだけど、身近に僕より優れた人なんて誰もいなかったから嬉しいよ」
国満は気持ちよさそうに握手を求める。
「なんだよ、気持ち悪いな。もっと正直になったらどうだ?」
「そうするにはまだちょっと早いよ」
そういうと、座っていた椅子から飛び降りて机に戻す。
「よっし、じゃあ僕は帰るかな〜。お先失礼するぜ〜」
「あー、俺もちょっと早めに帰るかなぁ〜。昔話したらやりたいこと思い出したわ」
「じゃあ私も帰ろうかしら。帝くん、一緒に帰る?」
国満が帰ったことを皮切りに、ほぼ全員が帰宅準備を始める。
菜々はさりげなく僕を待っている。
菜々の元に早く行くために早く準備をしようとするが…………。
『その手、とってもいいのか?』
背後から声が聞こえた。
『お前のためだ。やめておくんだ。俺の言うことを聞いてくれ………』
男の声が聞こえる。
僕を心配する声だ。
「黙ってろよ………?」
そう言って振り返ると、そこには誰も居なかった。
「ん?どうしたんだ?帝」
「………いや、なんでもない」
そういうと、バッグを肩にかけて歩き出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「そういえば、今日の帰りのSHRで言っていた、体育祭。どうするの?」
「体育祭………?」
そう言うと、『あ。コイツ、ダメだ………』と言っているかのようなため息をついた。
「明日っ!体育祭の種目を決めるの!!」
「マージカッ」
まともに取り合ってくれない帝に段々と腹が立ってきて、最終手段を取ることにした。
「あなたの種目、私によって全て決めてもらえると思っておきなさい」
「ありがたく考えさせていただきます。」
全ては菜々の思うがままなのだ。
理不尽である。
それに、彼女は生徒会長ときた。
やはり最後は権力が勝つと言うことか…………。
「ま、僕は体育祭に積極的に出る気はない。どうしても出ないといけない時は、一番楽そうなやつをする」
「へぇ〜ぇ。つまり、当日は……暇、なのね?」
そうやって決めつけてくる人ってよくないと思います!!
(でも事実だからなぁ………。なんも言い返せないんだよなぁ………)
「あぁ、そうだよ。それで?」
「いいえ。それだけ確認しておきたかっただけよ」
そう言うと、僕らは通学路にある神社にさしかかった。
そこで、菜々がソワソワしていることに気がついた。
「………どうしたんだ?」
「へぁ!?……………いや、………その、だな。最近、この神社にいる野良猫と遊ぶのが最近の趣味だったから、行きたくて…………」
「?行けばいいんじゃないの?」
「ぇ!?行っていいの!?」
「いや、ダメとか言える立場じゃないし。行ってきな?」
「や、やった、やった、やった」
明らかに上機嫌な菜々に僕はついていく。
「あっ、そうだ!」
急に何かを思い出したみたく、菜々は僕に耳を貸すように言ってきた。
「何………!」
次に耳に感じた感触は……………………吐息であった。
「これ、私と帝。2人だけの秘密………だぞ?」
顔を赤ながら耳元でそう言うと、急いで神社に急いで行った。
だが、当の帝はと言うと………………。
「………………………………………………?で、なんだったの?」
うらめもっ!
「〔ランク決定用テスト〕は個別の部屋でやらされてたんだ。え?【特技】の発現?いや、寮室に置いてあった封筒にサプリみたいな錠剤があったから、それを飲んで24時間後だったな…………」




