19.【特技】の発動は戦前に
まぁまぁまぁ。
GW初日となりましたよ。
国満くんからメールが来ておりますが、やはり僕は行きたくないのである。
………無視していいかな?
………いやでもそしたら寮にまで突っかかってくるだろうし。
一応メールの中身だけでも確認しよう。
『場所: 高校敷地内体育館
日時:5月3日、午前11時
持ち物:特になし』
しょうがないから一回行ってみるだけ行くとしよう。
っと、その前に。
プルルルルルルルル、プルルルルルル───────
ガチャ
「おい、今日の国満のこと、頼んだぞ」
「い・や・だ」
「かなしいこと言うなよ。僕泣くぞ?」
「ケッ!勝手に泣いとけ!!」
「ろくな奴じゃねえなお前!約束したのに破りやがって……」
ガチャ。
ツー、ツー、ツー、ツー。
まぁ、そういうことだ。
もう一人、現地召喚する奴もいるが、ソイツには電話しなくてもいいだろう。
さてさて。
えっと、体育館でしたっけ?
嫌だなー、行きたくないなー、もう何もかも無視して実家に帰ってやろっかなー。
まったく、行きたくないけど行くしかないってのはこんなにも辛いもんなんだなあ。
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「ほう?なるほどな?」
ただ今私がいるのは校内の敷地内にある第一体育館。
なんと、そこにはまだ誰もいない。
僕は一番乗りだったようだ。
でも、何と言うか早すぎたかもな。
集まるのは11時。
今はまだ8時半だ。
うーん、もうランニングもラジオ体操も筋トレもほとんどやり尽くしてしまった。
できることはもうない。
いや、やろうと思えばなんかできると思うけどね?
1人しりとりとか、1人絵しりとりとか、1人食べ物しりとりとか、1人動物しりとりとか、1人しりとりとか…………
素直に仲間を呼べって?
仲間が呼べると思うか?
この僕に?
ぼっちを馬鹿にするのも大概にしたほうがいいぞ!?
と言っても、ここまで時間が余ってしまえば自由時間とかそう言うのじゃなくて、もう逆に時間の無駄だ。
しょうがないから、時間の無駄を省く僕のスペシャル雑魚【特技】を初披露してやろう。
僕がこの【特技】を『雑魚』とした理由は二つだ。
まず一つ目は、攻撃に使えないからである。
この【特技】は、ある人から見れば普通に『最強じゃあん!!』とか言ってくるかもしれない。
だが、これは小技系であり、これを利用して決定打を入れなければ戦闘に関しては無力だ。
そして二つ目は、使用に関しては、かなり面倒なところがある。
一時期、『ワンチャン使いようによっては最強……!』って思って試してみたが、やっぱりダメでしたね、はい。
見事なほどに予想と外れて無理だった。
そんな、帝から雑魚【特技】とも言われる【特技】…………………。
「………………………【時渡り】!」
体育館の時計の針と周囲に変化があったのは、その言葉があった後であった。
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今の時刻、11時36分。
場所は第一体育館。
神咲 帝は、その場にいなかった。
「アイツ、まだ来ないのか……?一体どこで何をやってる………?」
志動が近づき、イラつく国満に報告をした。
「6時半前後に寮をでてまっすぐ第一体育館に、その後、様々な準備運動の後、監視を巻いたそうで、どこにいるのかは誰もわからないとのこと。この体育館から出た痕跡は見当たらず、トイレを始めとする隠れられるような場所もほぼ全て探しましたが見つかりませんでした」
「説明が長い。もっと短くしやがれ」
「…………はい」
志動は叩かれる。
さぞストレスも溜まるだろう。
確かに、こんなやつの世話係なんてよくやってるよな。
まぁ、そろそろいいや。
【時渡り】、解除。
「っ!!おぼっちゃま!」
「何だぁ?しどっ───」
次の瞬間には、国満は吹き飛ばされていた。
「ぼっちゃま!!」
彼は、国満はようやく理解していた。
今相手取ろうとしている怪物、『神咲 帝』という男の特異性に。
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何だ今のは?
今さっきまで何もなかったはずの場所から出てきた、1人の男。
もしや、今のが【特技】か?
「志動、一旦この体育館から出ろ」
「………はい。おぼっちゃま」
志動を一旦体育館から出す。
普通に、そこらをノロノロと動き回られると目障りだからだ。
さて、話を戻そう。
帝は入学から今まで、【特技】を使ったことがないし、漏らしたことも、入学式の大嘘付きモードで言ったっきりだ。
彼の特技がどうと言う噂は聞いたことがないし、山岸も全く口を割ることはなかった。
それに、山岸から出たのは一言だけ。
『アイツには【特技】を使わせることができなかった。正真正銘の化け物だ』
ってな。
つまり、やつは【特技】以外の実力で、【特技】持ちの山岸をボコボコにできる。
それに【特技】が合わさっているから……。
「今回は、本気だなっ!」
「ちょっとめんどくさいけど、そうしろって言われたからなぁ」
神咲は本当にめんどくさそうに、肩をすくめたように距離を取る。
アイツが俺以上に人気を取ったことは気に食わないが、それよりも今は………。
「どうやって戦うのか!見せてもらおうかぁあ!!!」
彼の身体のことが知りたい!
『止まれ』
彼もまた、【特技】を発動した。
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身体がピタリと止まる。
動かない……これじゃあまるで………………。
「まずは………一本!!」
国満の拳が鳩尾にはいる。
うおっ!
武術の心得でもあるのかってぐらい効くな……。
『感じろ』
…………?
いや、待て。
痛い……?
この状態の僕が痛がるなんてこと、あるのか?
「効いてるみたいだっ、なぁっ!!」
さらに鳩尾に拳が入る。
冗談じゃないぞ。
痛い、痛い!!
何だ、コイツの能力。
言ったことが実現する力……?
いや、そんな万能なものじゃない。
そんな【特技】なら、もう僕は負けてるはずだ。
じゃあ、それ以外の何か……?
あんまり使いたくはないんだけど、これを使うしかないってことか!!
「っ……《デーモン》!一時顕現!!」
脳が、加速する。
頭には、情報、情報、情報…………。
このスローの0.数秒の間で、全て理解できる。
この、チカラ………《ラプラスの悪魔》の擬似再現。
分子、原子、粒子の一粒の一片まで知覚して、過去、現在、未来を見通す、物理法則の絶対的王者。
その眼と脳を一時的に再現して、全てを理解する超万能型観察眼。
国満の【特技】を半ば強引に理解して、《デーモン》を解く。
国満の【特技】で警戒すべきなのは、『距離』と『声量』だろう。
【特技】はわかったが、対処法ばかりは勘でどうにかするしかなかった。
国満が吸った息に合わせ、僕も息を吸い、スピーカーをオンにした。
『止まr『ぅう"るっせえええええぇぇぇぇ!!!!!』』
国満の言葉は、帝のスピーカーを通した声でかき消される。
喉に搭載された二つのうちの一つの機能である、《マイク&スピーカー》による、大音量の三角の声によって。
「攻略法は、簡単だったな」
帝はマイクをオフにした声で、一瞬苦しめられた【特技】相手にドヤ顔して見せた。
うらめもっ!
「帝くんの体にはねぇ、脳に《デーモン》、神経にも一個仕掛けがあってぇ、あと義手には指一本ずつに仕掛けがあってぇ、手のひらからビームが出たり……シールドが出せたり……口から火炎放射と大音量でぇ、肘にロケット燃料……あとは……忘れちゃったけど、すごいよねぇ」




