1ー2間 幕間①
1年A組の教室では、異様な沈黙が漂っていた。
全員が席に着いているのに誰も一言も喋らず、黙って無表情で前を向いている。
何か、操られたように。
その教室の教卓には、1人の青年が座っていた。
「ほえぇ、1-Eの生徒が喧嘩。それで処分なし、かぁ」
先ほど聞いた情報を再び口にして、唇を歪める。
「気にいらねぇ。裏でなんかあんなぁ、コレ。………チッ」
教卓から降りると、教卓を蹴り飛ばして教室から退出する。
そこに座る生徒達は誰1人として動こうとしない。
しかし、しばらくすると、ポツポツと動きを始めた。
「ん〜〜っ!よく寝たぁ。この学校の机で寝る背徳感って言うの?」
「なんかあるよねぇ〜。ちょっと悪いことしちゃってる感じ。背徳感っていうより罪悪感かもしれないけどね」
ワイワイと、何事も無かったかのように話を始める。
まるで、そうするのが当たり前のように。
こうして、1年A組の日常は終わる。
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私は1人、友達から聞いた話を聞いて愕然としていた。
「せ、生徒同士が喧嘩ぁ!?そ、それはいいとして、その相手が山岸!?しかも、山岸が負けたぁ!?!?」
その声は、いつもおとなしくしていた私から出たとは思えないほど大きな声で教室内に響き渡り、自分のクラス……1年C組のクラスメイト全員がこちらを向いてきた。
「ひっ………な、なんでもないですぅ…………」
「秋元さん、あんなに大きな声出せたんだ……」
「あの子、大人しいけどめっちゃ可愛いよなー」
「ちなみに、中学の頃やばい奴と付き合わされて男子トラウマって噂だぞ」
「よし、癒してあげよう」
「男子、キモいから黙って」
なんか……陰口みたいなこと言われてる……。
い、いや。
こんなんだから卑屈で大人しいって言われるんだ。
これから頑張るぞぅ…。
ちなみに、
あんな大声を出してしまったのには、ある理由がある。
あんな男のせいで、私の中学生活は地獄に変わったのだ。
学校の立場は最悪で、彼氏という体で有名な不良にこき使われて、家にも居場所がなくて。
そんな中、その生活から抜けることができたというのに、また山岸と再会して高校生活さえも最悪なものになるかと思われていたのに。
そんな中、彼はただ1人、私を助けてくれた。
そして、彼は言った。
「山岸は今日で大人しくなるから」と。
そして、言う通りに、山岸様………いや、春太くんはその日のうちに喧嘩をして、そして負けたと聞く。
しかも、私を助けてくれた彼が倒してくれたのだ。
あの武道館。
あそこで戦いが行われていた。
私は、山岸に言い寄られて中学時代を思い出してしまい、吐き気を催して体力テストを抜けた。
その時に、私は見たのだ。
あの武道館が、破壊されるその瞬間を。
春太くんが吹き飛ばされて、壁を突き破っていくその時に、偶然居合わせたのだ。
正直、顎が外れるんじゃないかと思うぐらい口を開けていたと思う。
彼がそこまで吹き飛ばされるほどのダメージを負ったところを、私は見たことがなかった。
その時、私を助けてくれた、彼が見えた。
とても優しくて、強く、頼れる彼。
その時に見た彼は、まさしく救世主のように輝いて見えた。
私の“初恋”は、そこから始まった。
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「1年E組……ッ!!」
暗くなった教室、1年D組の教室で、1人彼は唇を噛み締めながら机をバンと叩く。
「クソッ……あのクラスにいる………。この高校を壊そうとする奴が………!!」
彼の手のひらには、【特技】によりできた【黒い嵐】が渦巻いていた。
「なんなんだ、アイツは……!!いつか、早く。早く見つけなければ……!!」
自身の不甲斐なさに呆れ、項垂れながら暗くなった教室を出る。
「待っていろ……!絶対に、俺が阻止してやる!《特待生》の名にかけて!!」
《特待生》である彼、浦見 心汰は、裏にいる1年E組の誰かに敵意を持ったまま、その教室を後にした。
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「おい、志動。あの、喧嘩の奴ら。後ちょっとしたらあるGWに呼び出せ」
成金のような見た目をした男が、1年E組の男子寮で執事に命令する。
「坊っちゃま。どうするおつもりで?」
「僕より目立ったこと、2人まとめて後悔させてやるのさ」
あの喧嘩を皮切りに、すべての謀略が。
イレギュラーの存在、神咲 帝に向かい出す。
うらめもっ!
「ちなみにこいつら、まだ入学式して1日しかたってないんだぞ。なんでそんなに馴染んでるんだ」




