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11.入学は結末と共に





 打倒、山岸!


 を掲げて頑張った体力テストだったが、成績的には負け、事実的には大勝ちといったところだろう。




 だが、それは個人の話。





 全体の話となると違うのだ。






 なんといったって入学2日目からクラス内で喧嘩を始め、しかも武道館半壊まで激しく戦ったのだから、そりゃあ問題視もされる。




 幸い、福島先生が頑張って反論して職員達は落ち着き、教師長からも生徒同士の諍いは(今回はやりすぎだが)OKだと通告が入り、事態は収まるところに収まった。










 まぁ、一部の生徒は除くが。






「何をやっているんの、帝!そんなにケガばかりして!!そこまでアイツにイラついていたのか!?なぜそこまでした!!!」





「おいおいぃ。あそこまで派手にやるんだったら観客がいても変わらなかっただろうがよぉ……観たかったなぁ…」





「ふぅ〜ん。春太に勝てるって、かなり喧嘩が強いみたいね。噂によれば【特技】もまだ使ってないとか。アンタ中学不良だったりしないでしょうね?」







 とまぁ、こんな感じでちょっと絡んだことある3人組こと、菜々と純也と未来に詰め寄られていた。




 山岸は療養のため数日学校敷地内の病院に入院するらしい。


 お見舞いに行った人によれば、ピンピンしていたらしい。






 なんと言うか……暇な時間作らせちゃって、ごめん!








 ちなみに僕の方は病院にかかるほどの傷すらない。





 まぁ、改造人間だしね。




 イカれた科学者達がよくわからない治癒機能を付けててもおかしくはない。



 それに、体内のナノマシンによる骨の固定や一時的な修復も可能だから、目立った傷なんてニキビが潰れたとかそこらへんくらいだと思うが。







 にしても。



 当然と言えば当然だが喧嘩を起こしたくらいで他のクラスからも大勢の物見遊山がこのクラスに集まってきている。



 生徒達からの喧嘩へのブーイングは止まったが、次は『一度見てみたい』という思考からかなりの生徒がここに集まってきているのだ。





 ここで商売したら丸儲けだぞドチクショウ。







 そんなことを考えながら、()()()()()()右手を後ろにやる。



 これは決戦前、教師長の開発チームに依頼して作ってもらった義手だ。






 端的に言うと、硬い。

 そして多機能である。




 あの必殺技として放った本気のパンチ。


 あれはこの義手の肘からスペースロケットの燃料を一回で使い切るぐらいの熱量を放出したことによる超強化パンチだったのだ。






 山岸戦では惜しみなく使ってしまったが、日常生活的にはあまり使いたくない能力ばかりなのは明白だ。



 みんなに見られず、出来るだけ穏やかに生活し過ごそうと思っている。







 だがまぁ、山岸が口を滑らせないか。



 これが一番の警戒ポイントだと思っている。



 ま、あいつの信頼度なんて地に埋まってるぐらいだろうし、アイツがどう告発しても誰も信じてくれないだろうな。





 まぁ、隠すことはしなくてもいいだろうが、かといっても自分から言うほどのことでもない。




 まぁ、これに関しては保留だ。



 う〜ん、それはそれとして今対処すべきは…………





「─か──みか────」






 ??

 なんか聞こえt──────


「帝!!」

「うおっ!びっくりしたぁ……」





 菜々に大声で呼ばれてびっくりした。



 何をしてくるんだ。





 と思ったが、そういえば今さっきから僕のことをずっと呼んでいたかもしれない。


 いや、そうではないかもしれない。


 …………これが噂の反語表現ってやつか?





「急にボーッとし始めて、どうしたんだ?まさか、戦闘の後遺症…!」





 菜々が異常なほどに心配してくる。


 そこまで心配されるほど今の僕は普段の僕と様子が変なのか気になってきてしまうな。













◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







「大丈夫だって逆原。僕が今まで無理をしてでも嘘を突き通したことがある?」


「嘘つきにそれ言われても説得力ないよ?上代くん?」




「その件に関しては悪いと思ってるけどさ、しょうがないだろ?咄嗟に出ちゃうんだから」





 未来にあの事を揶揄されるなんてな。


 確かに嘘をついたかもしれないが、僕にはその記憶がないだからその罪を僕に問うのはお門違いだと思うんだ。




 罪を問うべきは僕ではなく、僕をこんなにした世間や周囲の環境が問題だと思うんだ。




 そんな中、黒田が全く違う話題を提示してきた。







「そう言えば、『ランク判別テスト』みたいなやつ。どうだった?」




「どうだったって………なんか模試みたいな難易度だったよね。簡単な問題からどんどん難しい問題に発展してく感じ」


「私は一応空欄は埋めたけど、100点の自信はないわ」


「70点以上はもう難関高校合格レベルだったりするからそこまで自信があるんだったらAランク以上は余裕なんじゃないか?」



 逆原がサラッとえげつない事を言う。

 そんなことが簡単にできるんだったらこの世に勉強という概念無くなっててもおかしくないんだぞベイベー。





「あそこの面積を求める問題俺わかんなかったんだよねー!あの円と四角と線がめちゃくちゃ書いてあるやつ!」


「そのレベルまで行ったらかなりいい方なのでは?」



 黒田も陽キャの割にはかなり頭がいいようだ。

 これからは陽キャは頭悪い的な偏見はやめるとしよう。




「未来と帝はどこまで行ったぁ〜?」



 黒田が僕と未来に聞いてくる。



「私はねぇ〜、まぁコイツよりかは高いんじゃない?なんかミスター・平均点って顔してるし、狙って平均点取れるもんねぇ〜?」



 ニヤニヤしながらこっちの顔をのぞいてくる。


 ほうほうほう。

 そこまで煽ってくるんだったら僕も容赦はしないとも。




「僕は未来とかいう奴を筆頭にしたそういう有象無象共とは違って頭がいいからね。逆原と同等かそれ以上ぐらいの自信はあるかな」








 ふぅ、行ってやったぞ!?

 おおん!?どうよ!?





「へぇ〜かなり言うのね」



 未来にはかなり効いたみたいだ。

 これで負けたら大恥ものだけどね。




 まぁ、僕が勝つに決まってるけど(フラグ)









 だが、影響を及ぼしたのは未来だけではないらしい。




「へぇ〜?私と同等かそれ以上ね?期待できるわぁ」


「お前そんな頭よかったんだなぁ〜。今度勉強教えてくんねぇ?なぁ?頼むよぉ?」





 未来への嫌がらせより、こっちからくる被害の方が大きそうだな。


 ハイリスクローリターンだったかもしれない。




 これはちょっと………。



 逃げた方がいいかな。





「じゃあ、僕は用事があるのでこれで!」




「逃げた」

「逃げられたわね……」

「あぁ!!勉強教えろよー!約束だかんなーー!!!」










 この声を背中に受けながら、僕はある施設を目指した。







◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






「じゃあ、私もうかーえろっ!」

「私も一緒していいか?」

「いいよ☆女子会しよー!」




 未来と菜々は女子寮へと向かっていく。



 もちろん、黒田は女子寮には入れないので1人でトボトボと帰るしかない。







「はぁ、今日は()()()だったなぁ」

「?なんの話だ??」



「いやぁ?なんでもないよ??」



 未来は何かを誤魔化すように話をはぐらかした。



 菜々は、それにはあまり触れずにいた。







 だが、違和感として、未来と同じものを感じていた。



 (逆原………)




 それは、菜々に対する、帝の呼び方であった。










◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇









 黒田は、女子2人を見送った後、男子寮へと1人で向かうことになった。





「懐かしいな………」





 こうやって1人で帰路に着くのは、中学以来だ。



 高校に入ってからは、信じられないほど全てがうまくいくんだ。



 やはり、この【特技】を取り入れた模擬社会の中であることが関係しているのか。


 はたまた俺の()が良くなったのか。






 どちらにせよ、以前とは違うこの光景、この日常を。




 深く。

 深く、胸に刻んでいかなければならないと、黒田 純也は考えていた。












◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇











「ほーいよ。お疲れsummer」









「………寒い。そして、お前が喧嘩で入院させたやつを見舞いに来る精神性も俺は怖い」










 僕は今、病院の病棟内、425号室にいる。



 入院中の彼………。






 山岸 春太のお見舞いだ。


 必殺パンチで腹をいったから内臓から骨からかなり損傷が入っているようだ。




 ギリギリ、【スーパーエネルギー】での治癒も可能だったらしく、普通の人の数倍早く退院できるらしい。





 まぁだとしても一歩間違えれば死の拳だったわけだし、結果としてはまだいい方だと思う。




 それに、僕めっちゃ頑張って死なない程度に苦しむ場所を選んで叩き込んだんだからこんくらいになってくれないと僕のメンツが立たないよな。







「………あーもう!こんなやつに負けやがった!!事実は事実だし、俺は負けは認めたよ。あの女は諦めるし、これからも大人しくしといてやるよ」



 しばらくした沈黙の後、呆れたように天を仰いで、彼は言った。





「そりゃ何より。僕の高校生活、こんな喧嘩から始まる騒がしいものだとは思わなかったけどね」






 最初は目立ちたくなかったが、やはり課せられた任務(もの)をこなすにしてはこんくらいの立ち位置がちょうどいいだろう。




 そうだ、本題に入るとしよう。



「後、俺の体の件だが……………」



「…………」






 一瞬、空気がピリついた。



 ……だが、気にならない。








「『隠す気は無いが、広めるつもりもない』と言う答えに至った」





「………つまり?」



「当てられたら、はいそうですよって答えるしかないよなってことだ」







 別に、バレても高校生活に支障が出ないくらいならばなんでもいい。





 だが。



「言っとくけど、体の事を誰かに言うんだったら僕から言うからな?お前が勝手に口滑らすのはダメだからな?」





「……そう言われるとやりたくなってくんな」


「や・め・よ・う・な?」















「わーかった!わかったから!言わねぇよ!!所詮俺は敗者だからな!!片手で捻り潰されるんだったらまだいいくらいのボコボコにされちまう」





 よくわからない例えを用いて説明してくる。


 全く、お見舞いに来たがそこまで困っているわけでもなさそうだったな。




「それだけな。じゃあ」



「………待て」


「????」






















「I hate you too.俺も、お前が大っ嫌いだ。神咲 帝」





「……プッ。ククククク」



「……なんだよ」








「いや、僕、お前好きだわ」


「…すまん。俺男好きの趣味はないんだ」

















うらめもっ!

「孤島の学校で、その中で生活することもあり、寮も門限が長く、かなり自由度の高い生活ができるし、病院も最高峰の医療を受けることができてしかも学生だからほとんど金はかからない。最高だぜぇ」

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