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9.入学は優勢と共に








 ピクリとも動かなくなった帝を、春太は馬乗りになりながらただひたすらに殴り続ける。








「雑魚が!雑魚が!雑魚がぁ!!正義感振りかざして!イキリ散らかしてたクソ雑魚がぁ!!この《塞翁中の拳狼》に敵うわけねぇだろぅがあぁ!!」






 バキリ、バキリと骨が折れていくような音さえ聞こえてくる。




 顔面は1.2倍ぐらいに腫れ、肋骨はかなり折れている気がするし、腹にはもはや酷いアザができている。







 だが、ここは帝が指定した『誰にも見られない戦場』。





 教師長第3番席殿にもお願いし、教師長による全校監視もここだけ見れないように障害電波を発してもらっている。








 つまり、気絶している彼に助けはこない。



































 だが、もともと助けなんていらない。






 パシッ!



 調子が良くなっていた山岸の拳が、片手で止められる。






 もちろん、止めたのは…………。






「ふぅ、力量を計らせてもらったよ。ちょうど1分」


「あ、ああぁ?なんだ、おい……!」




 急な帝の蹴りを春太がバックステップで躱し、帝が立ち上がった。





「なるほどぅ、先頭においては攻撃特化って感じか。いや、強化なのか?まぁどっちでもいいがな」




 首をコキコキと鳴らしながら感想を語る。




「さっきまで無抵抗だったのはそれか……!」



「ご明察〜。で、他にはなんかないの?」




 全ての口論の元を軽くいなしながら、挑発的にさらなる行動を求めてきた。




 当然だ。


 今、相手が使える手口は把握しておかなければ後で命取りになりかねない。






「あるに決まってんだ……ろっ!!」




 簡単に手の内を明かしてくれる彼のような奴は、とても扱いやすい。



 出してきたのは、体力テストの時に出したエネルギー弾だ。


 一応受けてみることにしよう。






 帝はエネルギー弾を受けた。


 まぁ、もちろん(?)吹っ飛ぶ。







「うおぅっふぅ」



 壁に叩きつけられる。


 なるほど、爆発系かな?

 当たったら破裂して吹っ飛ばされた感じだ。



 まぁでも、ダメージは見かけほど入ってない。




 これだったら別に何発くらっても問題はなさそうだ。




 さっき殴られてた肋骨………。


 あ、折れてるな。



 強化ついでに()()()()()か。



 体をほぐすように、軽く伸びをする。




 ……よし。







「さっきボコボコに殴られたんだから、僕も殴り返したんだけどいいかな?」


「やだね!バトルに『待った』はねぇんだよ。将棋も同じだろ?」




 またもよくわからない理論を展開してから突っ込んできた。


 今回の突っ込みはさっきよりも強化されて数段早い。




 だとしても。

 こっちは【足が速くなる特技(仮)】だぞ?


 それに、さっきまでとは勝手が違うんだ。




 もう、やられるばっかなんてつまらないことはしないからな。




 ちゃんと、反撃してやる。



「まずは、一発」














 わずか数瞬。



 0.1秒にも満たない時の中で、それは行われた。




 僕は、目の前まで寄って硬く握った拳で殴る………











 フリをして後ろに回り、渾身の一撃をお見舞いした。




 春太の体がのけ反り、武道館の壁にぶち当たって、壁を貫いた。


「…っ!?!?なぁ、ぐあはっ………!?」






 彼は何が起こったかの理解が及ぶ前に数秒遅れた痛みにのたうち回っている。







「何しやがった……!」





「何ってそりゃあ、見て分かる通り、殴っただけだろ」



「そんな威力じゃねぇ。なんだこれ……!クソッ、痛え、痛えぞこいつは……!!」





 まぁかなり本気で入れたからな。


 意識を保っているあたり、かなり頑張っているだろう。





「………ふぅ。だが、まぁ。」


 よろよろと立ち上がる。




 本気の拳を入れてこうか。




 普通の人であればほとんど勝ち目がないと思うほどタフだろう。


 まぁ、僕が普通じゃないんだけど。




「………なあ?こんだけ痛くてもなぁ、【スーパーエネルギー】ならこんなこともできちまうんだぜぇ?」




 背中に手を当てると、焦り切っていた顔にも余裕が出てきた。





「【スーパーエネルギー】による治癒だよ。痛みを無くすくらいだったらできる……。残念だったなぁ、俺の【特技】は最強なんだよ……!」





 なるほど。

 エネルギーによる治癒。



 あの【特技】、かなり汎用性が高いだろう。












 だからこそ、あんなやつの手に回ってしまったのが惜しい。




 早めに決着をつけてやろう。




「よし、わかった」



 僕も覚悟を決めよう。






「いいか?よく聞け。今から、お前を、全力で殴る。避けるもいい。受けるもいい。なんでもいいから、僕はもう、お前を全力で殴る」



「いいぜ……やってみろよおぉ!!」







 またしても突っ込んでくる。


 まぁ、さっきまでは隙だらけだったが、一度殴られて本気を出したか、かなり殴りにくい走り方だ。




 やはり、喧嘩の実績、というものか。




 でも、僕は殴る。





















「《デーモン》、一時顕現」



















 本気を、出す。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 おそらく、ダメージの蓄積は無意味。

 決めるには一撃で撃沈が最適だろう。




 いくつも浮かんだ『答え(未来)』から、僕は一つ、選びだした。



「いくぞ……」




 僕は拳を構えたまんま、そのまま……………





















 歯を鳴らした。



「………は?」



 猛スピードで突っ込んでくる彼の目には異様な光景が映っていた。



















 彼………神咲 帝は、文字通り()()()()()()()








◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






 何が起きているんだ?


 あの男の【特技】は、【足が速くなる】のはずだ。





 それは、100m走でも、シャトルランでも確認済みだ。





 そのはずなのに、なぜあいつは【特技】をもう一つ使っている?



 【特技】を2個持っているから、こんな俺の挑発を受けたってのか!?



 いや、待て。


 あいつは【特技】についてぼかしていた。


 何か、言いたくない理由でもあったんじゃないか?



 【特技】が弱いなんて理由じゃない、もっとデメリットとなるような理由が………。




 【特技】2個持ちというメリット。



 【足が速くなる特技】がフェイクで、切り札として【火を吹く特技】があるっていうのか?



 だとしたら、その二つを今使うのはさすがにもったいない。


 早すぎる。





 一体なぜ、そこまで【特技】を言いたくないのか。


 隠したその意味はなんなのか、俺にはまだ辿り着けない。




 何か、他のやつとは決定的に違う『何か』があるはずだ。




 あいつは一体、何者なんだ…?







 考えろ、頭を回せ…………!!!




「戦闘中に考え事なんて、呑気じゃないか」






 彼の本気のパンチ。





 気がつけば、視線の真下に、ヤツはいた。



 構えた拳を俺の腹に狙いを定め、不敵に笑う《化け物》。





 その瞬間、彼の肘が眩しいほどに()()()と光る。







 『これは死ぬ』という予感めいたものが寒気として背中にまとわりつく。




 だが、もう何もかも遅い。







 気づいた時には、あの男は拳を振り抜いていた。



 ()()()、体を貫いた。






























◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







「あり?外した?」





 全力の腹パンをしたが、なぜか外してしまったようだ。




 しまった。


 こんなんなら殴る直前にも《デーモン》を使っておけばよかったと後悔する。






 この全力パンチは、当たっても外れても一回こっきりの切り札だ。



 なんてったってもうエネルギーがない。




 もうちょっと補給しないと。








 まぁ、こんなパンチ、巨大建造物の取り壊しに使っても壊しすぎだと怒られるほどの破壊力だ。





 まともに当たっていたら死んでいただろう。


 まぁ、まともに使ったことがないんだから、狙わずに殴ったんならそりゃあ外れるだろうがね。



 殺すようなことがなくてよかった。


 殺してたら悪いのは僕の方になっちゃうしね。




 それでも、ちょっと服にかすめるぐらいはしたし、このパンチの風圧のせいであらゆるものがが撒き散らかされている。





「……何者なんだ、お前」




 腰を抜かしそうになっていた春太が問う。




 あんな爆風に晒されてもまだ立っていられるんだから、本当にそこらの一般人とは違うのだろう。


 《塞翁中の拳狼》の名も、かなり舐めたものではなかったようだ。





「お前は足が異常なほど速く、火を吹くし、しかもこの怪力だ。一つの【特技】に収まるとは思えない。何を隠してる、お前」










 ……もうそろそろ明かしてもいいだろうか。



 【特技】は弱いのだから、このクラスで何か自分の取り柄をアピールするならば、【特技】以外のこれを自慢するしかできない。




 これからも、ずっと隠しながらというのも面倒だ。


 この際、この件をみんなに伝えて受け入れてもらったほうが、目立つ可能性は低いだろう。





 大丈夫、たまにこういう奴はいる。



 このまま、全て洗いざらい話してやろう。






 そして、話せないと思うまで滅茶苦茶にしてやるだけだ。




「いいよ、答えてあげよう」





 春太が、固唾を飲む音が聞こえる。



 時計の針の音が聞こえるほどの静寂の中、僕はこう言い放った。





 あぁ、やっぱり、人が多く騒がしいより、僕は寂しいほど静かなくらいが大好きだな









「僕の【特技】は、そんな大層なものじゃないよ」



 と。





























「それは全て、僕の()()()()()身体能力の話だ」






うらめもっ!

「教師長は合計7人いて、0番から6番がいる。権力順で番号付けがされているから、第3番席の権力は4番目だ。だが、そんな序列は微々たるものであり、別に第0番席の校内監視カメラを第3番席が妨害するっていうのも可能なんだ。まぁ、その理由は問われるから、これから大変なことになるんだろうけどね?」

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