互いの理念
管制室のそのさらに奥、150mもの左右にところどころパイプや窪みがある廊下の先の広間にEAO「strongarm」がセーフルームに収容されている。
特別な素材で作られたここは核シェルターとしての役割も果たす優れものだ。
そして対EAO殊部隊がそこで待機しているのだ。
「管制室が落ちたか……」
隊長はパッドの画面を閉じ、深いため息をついた。
「一般兵だけで対処できないとは思っていたが、ほぼ壊滅だとは・・・」
「俺たち対EAO特殊部隊の出番だぜ」
他のみんなも立ち上がりながら口々に言う。
ところでなぜここにいるのか?
少佐の命令は、セーフルームの前でEAOを待ち構え俺たちがとどめを指すこと。
一般兵は足止めでしかなく、むしろ管制室さえも足止めだ。
だから、悔しいがここで待つしかない。
「お前ら戦闘準備できてるか? まず敵の特徴を共有する」
隊長はそう呼びかけ皆は黙って首を縦に振る。
「まず作戦だが、敵は恐らく特定の"金属"に干渉できる力を有している。モニターから見てわかる通り弾丸の軌道が不思議だし、手榴弾も宙に浮いている。」
「また、EAOは通常、一定以上はEAO波長が体内から漏れ出ているんだ。でも、こいつの場合そのEAO波長を機械で観測できないほど精密に操作している。始め観測できなかったのも故障ではなくそのせいだろう」
「だったら俺らは負けるか?」
俺が話していると、筋肉質なジェームズが廊下に向けて銃を構えてそう遮る。
「問題ない。負けはない」
「じゃあそんなの作戦関係ねーだろ。普段通り闘うだけだ」
「……まあそうかもな」
全員も頷く。全く世話の焼けるやつだ。俺は大きく息を吸い込む。
「さあ、人類がEAOに勝ると言うことを思い知らせてやろう」
「「おう!」」
俺の故郷を奪った奴らを根絶やしにするために、ここで負けるわけにはいかない。
あんな悪魔は、存在してはいけないんだ。
俺は鋭い目つきで長い廊下を睨み、やつが来るのを静かに待った。
------------
階段を降りる足音が人の気配が無くなったここに鳴り響く。
その音は鮮明に聞こえ、血に濡れた服を着てゆっくりと歩くその容姿は周りから見れば悪魔と罵られるだろう。
だが、世界は多数派だけじゃない。少数派の私たちからすればまるで解放者だ。
管制室を制圧した私は部屋を出て、セーフルームへと続く右の通路に向かった。
鍵のついたドアは全て蹴破ることで解決している。
そして今地下に続く階段にいるのだ。
私は最下段まで降りた。この扉の先は長い廊下。右手にライフル、左手に4枚の円盤、ここが最後の戦いだろう。
いや、最後と言ってもまだまだ続くけど……
人を殺す時、私は心のどこかで自分に怒っている。でもその怒りを私に向けれない。
「あなたは……これで良かったと思うかな……?」
私は今では思い出せない大切な人に向けてそう言い、ドアを蹴破る。
ドアの先は広間だった。
そしてその広間の奥、一直線の廊下の先に、こちらに向けて銃を構えている米兵が異様にしっかりと見えた。
「さあ、自由を妨げるあんた達を殺す、はぁー。いいねこれ」
改めて覚悟はついた。あとは果たすだけだ。
隊長はニューヨークで起きたEAO関連事件の被災者です