二人の意見
米軍視点
一方その頃、管制室は緊迫した空気に包まれていた。
「全駐屯戦闘員は警戒態勢に入れ。基地内に侵入したEAOと接敵した場合は個人の判断での武器使用も許可するが、可能なら殺害せずに無力化しろ」
「また本国にはスパイ衛星で周辺地域を常時監視するよう要求しておけ」
管制室司令の少佐は無線通信で部下達にそう伝えた。
「通常部隊はあくまで足止めに徹底し施設内に展開しろ。対EAO特殊部隊は戦闘準備が完了次第すぐ応戦する。詳しい命令はこちらで決定した後改めて伝える」
少佐はそう続けざまに命令した。
「これは我々には前例のない非常事態だ。だが皆は優秀な兵士だと言うことを知っている。全員一層の努力をせよ」
「「了解!」」
通信を聞いた部下達はそう言って各々の準備のため移動した。
対EAO特殊部隊はEAOの特性に精通し、それを無力化するために創設された特殊部隊。
通常部隊と違い特殊な武装をしているため、熟練の兵士でしかなれず、部隊の総人数は800人と少ない。
「しかし少佐、やつの攻撃対象がわからない以上適切な部隊の配置ができません。なので、無駄な前線展開は危険を招く可能性があるので全部隊後方展開を提案します」
少佐が通信を終えた後、副官のベドナレク中尉が真っ先にそう勧める。
「いや、恐らくやつの初めの攻撃対象は管制室で、その後管理しているEAOを奪取し、逃走することが目的だろう。施設前部での足止めが必要だ」
「この基地を狙う以上それしか考えられない」
少佐は中尉の意見を否定し、監視カメラに映るセーフルーム内のEAO、「Strongarm」を見ながらそう答えた。
「それなら正面以外の出入口から『Strongarm』移動させれば良いのではないですか?」
「やつが単独犯だという確証がない以上危険だ。移動中に攻撃されたらどうする? 今は特殊部隊もいるここが一番安全だ」
「しかし管制室が落ちれば指揮系統が麻痺します。前方部隊を放置してまず管制室を狙う可能性は・・・」
「基地内施設の第1棟は西から東まで400mで最奥の地下1階にここ、管制室がある。さらにここから、南に150m先のの地下2階にあるのがセーフルームだ」
施設の見取図を指ししながら少佐は言う。
「もし我々のEAOが奪われやつが逃走する時、対EAO部隊と戦った後となると体力はかなり消耗しているはず。だからまず体力がある今に兵士を減らしてからここに来るはずだ。」
「管制室が厳重である可能性や周囲に我々の増援がいる可能性も踏まえるとそんなことをするとは思えない」
「しかし──」
二人の意見はなかなか合わず、部隊に具体的な命令ができずにいた。
そしてこの指揮系統の乱れと決断の遅さはすぐに裏目に出るのであった・・・
堅苦しい内容だけどなるべく読みやすくしたつもりです。