大胆不敵
めっちゃ遅くなりました。すみません。
内容は決まっても書き出すのに時間がかかるんですよね……
瞳らが日本に向かう当日
瞳たちとの別れを終えた副会長、シムナは部下たちよりも一足先に空港から出ていた。
今は出入り口を出てすぐのあたりだ。
さてさて、この後本部で用事があるから早く出なくてはのう。
一つは日本政府との密談で後は……
シムナがそう思っていたとき、一人の女性がこっちに向って全力で走ってきているのが目に留まった。
その女性、それはカラだ。
「はっ、はっ、ま、待って──」
白い髪をたなびかせながらそう言ったカラは、そのまま勢いが殺せないままガシャンとフェンスにぶつかった。
ちょうどその瞬間、フェンスの先では瞳たちを乗せた飛行機が飛びたっているのがカラの目に映った。
「あ、あと、あとちょっとで間に合ったのに……くそう」
カラは網フェンスの格子の隙間から飛行機を見つめそう呟いた。
「カラ、そもそもここは空港の外だ。全然間に合っておらんぞ。はぁ……なぜ遅れたんだ?」
「別に、寝坊してない」
「寝坊したかどうかは聞いておらんのだが……それに寝癖がついてるぞ」
カラの頭を見ると、確かに所々で毛が明後日の方向に跳ねている。
「これは、もともとそう言う髪質だからだよ。そう、もともと」
くるくると毛先を触り、少し目を逸らしてそう答える。
「それに……そうだ、また会えるからお別れの挨拶はいらな──―」
カラが自慢げにそう言ってる間、シムナはそこを離れていった。
…………カラは何か言っているが、まあ大体予想できよう。
カラは後で部下に回収してもらって先に本部に戻るとしよう。
日本語にこういう奴のことを表す表現、なんだったっけのう──
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その頃、離陸した飛行機の機内では、なにやらストロンがガタガタ震えていた。
「ストロンって何気に飛行機初めてなんだね。施設にいたし」
私はストロンとニックが座る前の座席に向けてそう言った。
窓際のこの席は外の見晴らしがいいが、列につき2席しかないので私が二人の席の後ろに座っているのだ。
前は男子二人だ。
「そうか! ストロンは飛行機初めてか! 怖かったら父さんが手を握ってやろう」
ニックがふざけた声でそう言う。
こんな父親は嫌だなぁと思うが、こやっぱり任せないほうがよかったかな?
任せる時「え、まじ?」って言ってたし、やっぱり無理させてる?
でも私も「うん、まじ」としかその時言えなかったからなんとも言えないし、一緒に行きたかったしな……日本。
「ストロン安心して、飛行機はほとんど落ちないから大丈夫だよ」
「ま、まあそうだな、墜落は数万分の一し、怖くな────って揺れ! 墜落する!」
しかししばらくして、揺れは治った。
「こんなんじゃ墜落しないぞーストロン、瞳の言ったことを信じなー。やっぱりお前子供だなぁ」
「うるせえ、俺はおっさんに言われたくないね」
「おーん? 俺がおっさんだと? 確かこの前も金髪イキリとか言ってくれたなこのマッシュ」
「全然マッシュヘアじゃねぇだろ、たく……これだからY世代(1980年代生まれ)は……」
私はストロンがどこでY世代という言葉を覚えたのか不思議だ。
まあ軍の施設の教育のせいとしよう。
私は二人が暴れないように二人にゲーム機を配り、私は携帯の地図アプリを開いた。
(ニック達は意気揚々とゲーム機を手に取り遊び出した)
大阪の学校に行くにあたり住む家が必要だ。
そこのところは副会長のシムナが手配してくれるそうだが、家に行くまでの駅の構造が分からない。
記憶が正しければ、10年ぐらい前に大阪は一度だけ一人で行ったことがあるなぁ……
グリコ?の近くに行こうとしたけど、駅で迷って家に帰ってしまった。
あの時おどおどしていた私を想像するだけで恥ずかしい。
今回こそそうならないためにも駅の構造を予習しとこうというのだ。
まずはこのウメダ駅の構造が簡単そうだ。
どれどれ……
私は携帯でウメダ駅の構内図を開く。
…………
しかし、開いた先に広がっていたのは魔境のように複雑な駅だった。
え!? こんな、一時間に1、2本の駅を想像してたのに、これただの迷宮じゃん……!
私は心でそう思った後、そっと画面を閉じて目も閉じた。
少し寝よう。あんなもん見るもんじゃない。
それに最近忙しくてろくな睡眠時間が取れていない……はずだし。
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気づくと、目の風景は機内から変わっていた。
誰かの部屋だろうか、クローゼットには乱雑に服がかかっており、床には紙やノートが落ちている。
窓のカーテンの隙間からは夕陽が眩しく差し込んでおり、薄暗い部屋を照らしていた。
そして、私はこの部屋に見覚えがあったのだ。
私は後ろを振り向いた。
そこには机があり、隣には一段が収納スペースになっている二段ベットだ。
「ここは……私の中学の時の部屋……」
机の一番上の引き出し、そこに何が入っているのかは知っている。
私は引き出しに手を伸ばした。
「やあ、開原瞳。シッシッシ、喫驚したか?」
引き出しに手が触れようとしたとき、笑い声混じりに声が聞こえた。
ベッドの方からだろうか。
私は声が聞こえた方向に顔を見上げる。
するとそこには、ベッドの上から身を半分乗り出し、笑顔で私を見下す……私の姿がいたのだ。
私がいる!? いやいや、夢か……?
でも夢にしてはおかしい。もしこれが夢なら、普通夢を見ている間は自覚できない。
EAOの精神攻撃か!?
でも私自身EAO波長をなぜか出せないから反撃できない。
一体どうなって……
あとなんで私の名前を知って……
「そうあたふためくんじゃない。シッシッシ、哀れだ」
そう言ってもう一人の私はベッドから華麗に降りた。
着地したもう一人の私は私より少しばかり背が低く、服装もなぜか制服だ。
私の髪は今肩甲骨の下辺りまであるのだが、もう一人の私は肩までしかない。
あと妙に言動が明るい……
彼女は降りて着地したあと、私のもとに歩み寄り顔を近づけた。
目の前で見てもやっぱり私だ。
そして、彼女はそのまま唇を近づけて――
「――――ッ! ちょまっ……痛てっ」
私は我に返ったように体をそらした。
しかしそらした勢いで壁にぶつかりその表紙に腰が抜けたように尻餅をつく。
「なんだ、声を出せるじゃないか、接吻は嫌いか?」
彼女は私が上げた目と合わせてそう言う。
「す、すみません……。でも、そんな、自分と同じ姿の人とキスしたいなんて思う人いないと……思います。あと、あなたは誰なんですか?」
「そうか、誰ですかか……ならばこうしよう、私は全知全能の神! 人を動物を万物をこよなく愛する救世の神とな」
全知全能の神とやらは私に向かって高らかにそう言い、笑った。
そして全知全能の神は体をしゃがませ、私と視線の高さを合わせ続けてこう言う。
「私は君の味方だ。シッシッシ、崇拝の準備は出来たか?」
その笑顔は、不敵で、そして大胆だ。
まだ見てくれている人、初めて見た人はありがとうございます。
1ヶ月に一回は出したいですね……って言うと三ヶ月かかるんですが……




