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この未来なき世界 ~自由を求めた少女の物語~  作者: いから
It's more blessed to give than to receive
18/27

見知らぬ訪問者

部屋から出た私は廊下を右に進み、数分して突き当りまで着いた。


そこにはエレベーターが2台あり、右側にはお目当ての自販機がある。

レベーターはそれぞれ1階から6階にまで続いており、階段でも行ける仕様だ。


私は6階の階のボタンを押し、エレベーターが降りてくるのを待った。


「自販機あったあった、何買おうかな……」



私は財布から取り出した硬貨を手に持ち投入口に入れる。


えっと、確かニックはコーラだっけな。

普段はコーヒー飲んでるのにどうしたんだろう……


私はミネラルウォーターでいいかな……ストロンは適当に炭酸のぶどうジュースでいいか。


まだ高校生だしね。


私はそれぞれの飲料水のボタンを押す。

それと同時に3つのジュースは順番に取り出し口に落とされ、私はしゃがんでそれを取った。


どれも冷えていて美味しそうだ。

今南半球は冬の時期だけど。


その時、エレベーターの扉が開いた。どうやら降りてきたようだ。


エレベーターには人が乗っていて、がたいがいい黒スーツの男が3人いた。

サングラスもしている人もいて、いかにも強そうな雰囲気だ。


私は先に降りてもらうため、少し体をずらした。


しかし、降りてきたうちの一人はズガズガと私の横を通り、肩を当てようとしてきたのだ。

私は紙一重でそれを避け、何も無かったかのように歩いていくその男を片目で睨んだ。


私は自分の分以外のジュースをかばんに詰め込み、ミネラルウォーターのキャップを捻りながらエレベーターに乗る。


階を指定して押した私はゆっくりと壁にもたれかかった。


「危ないなぁい……わざとやってんのかな?」


私はそう愚痴を言い、水を口に持っていった。



------------



屋外プール。ではなくただのガラス張りの屋内プールだ。


簡易的な作りとなっており、水を触ると温水だ。

当然、この時期にプールに入ろうとするものは少なく、すぐにストロンも見つかりそうだ。


「過疎ってるね、さてストロンはどこにいるのか・・・」

私は靴と靴下だけを脱いだ姿で短パンで歩き回る。


ちなみに靴下等は更衣室に置いてきた。


ストロンどこかな……人いないにしてはどこだー?


「やっほー!!」


ん? ストロンの叫び声?


私は声に反応して横を向いた。ウォータースライダーがそこにはある。

少し顔を上に傾けると、視線の先では人が勢いよく滑り落ちてきていたのだ。


「えぇ!?」


なんとニックがウォータースライダーから落ちてきたのだ。


「──っ」

気づいた時には時すでに遅し、私は服に思いっきり水がかかった。


水を浴びた服とズボンは半透明になり、服からポタポタと水が絞り落ちた。


「あ、すみま……てっ、ひとみ──」


「…………いいよ、別にこれぐらいじゃ気にしないから、あとはい、これ」

私は濡れた髪をかき上げてぶどうジュースを前に出した。


「ぶどう……まあ、ありがとう」


「じゃあさ、ストロンもプール飽きた頃だと思うし……海、見に行こ?」


「海?」


「うん、ニックも作業してるから終わるまでちょっと暇つぶしにね……どう?」


「おお、分かった。じゃあ行こう」

ストロンはそう頷き、プールのそばにある更衣室に向かった。


本当はニックも待ってるんだろうし、すぐ帰らないとだけど……


私は近くの椅子に腰を掛け、焼け石に水ではあるが濡れた服を絞ったのであった。



------------



『続いてのニュースです。昨日昼頃、フィリピンを訪問した日本の水原国防相はフィリピンのジュラルド国防相と会談し、フィリピン国内で新たに6ヵ所の日本軍事拠点を設置することで合意したと発表されました。背景には日中の歴史的対立や近年加速している日中の摩擦があるとされています。これに対してワドルデ米報道官は、中国との勢力均衡による太平洋の平和のためには、その太平洋最大の友好国である日本との連携は不可欠とし、両国にとって不利益のない協力関係を築きたいと表明しました。また、中国は──』


テレビではまた物騒でないことが流れている。

最近は中国と日本の対立が激しいなー。台湾でなんかあったんだっけ?


戦争にならないといいが。


俺はコーヒーを一口飲み、テレビを消した。

それと同時に朝の記憶が唐突に蘇ってきた。


「ニック、俺は瞳と色々としたいこともあるし、日本の高校に行くことにするよ。」


「おおーそうか。まあ頑張れよ。ちなみに日本語話せるのか?」


「話せるわけがない。でも大丈夫だよ。1年で習得するよう努力する」


「…………そうか、頑張れよー。あとこのことは自分で言えよな。俺の問題じゃないしー」


「うん。分かった。ところでさー。これ──」


ストロン、一年で日本語習得できるとでも思ってるのか?

俺でも4年はかかったのに……まあいいか。


俺は椅子に腰掛け、パソコンを開いた。


「よし、あともうひと踏ん張り──」


コン、コン、コン、コン


入り口の扉からノックの音がした。

咄嗟に俺は立つ。


瞳が帰ってきたのか? いや、瞳ならもっとわいわいガヤガヤ言うはずだ。

ストロンも瞳といるだろうし……この時間は船職員がくる予定はない。


誰だ?


俺はサイレンサーのついたベレッタの入った棚に手を伸ばした。


扉の奥からは戦慄した空気がひしめいてきている。

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