表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この未来なき世界 ~自由を求めた少女の物語~  作者: いから
It's more blessed to give than to receive
16/27

丸い眼球

アメリカ合衆国 首都ワシントンD.C.

ペンシルベニア大通り1600番地


ワシントンDCの中央部に位置する、アメリカ人は誰もが知ると言われているここに位置する建物こそが、ホワイトハウスだ。


米大統領の執務を行う官邸であり、アメリカが世界(とは言ってもアジアや欧州はその限りではないが)を動かす上での心臓部分とも言えるのだ。


コンコンコンコン


「失礼します大統領、EAO管理長官です。」

一人の男がドアを開け、緊迫した表情で部屋に入った。


「全員揃ったな、ではシンプソン基地襲撃事件に関する臨時会議を始める。」

大統領が全員の顔を見合わせてそう言った。


「はい、ではまず事件の全容を現段階で把握できている所まで話します。まず、発生推定時刻は7月8日、シンプソン基地にEAOがなんらかの方法で侵入し、損傷の激しい死体も含むため正確な数ではありませんが、戦闘員・研究員など少なくとも156名が死亡し、他41名の死体は鑑定中です。米国が保有、管理していた『strongarm』も所在不明となっています。まだ推測ですが恐らく侵入したEAOが強奪し、国内に潜伏しているものと思われます。また、そのEAOのコードネームを出現場所から取り『Simpsonx』と名付けました」


「おいおい、もう事件発生から5日は経ってるじゃないか。それにEAOだと?」


「はい、基地内のEAO波長の汚染(地曝)濃度量が最高で2.9となっており、最初に駆けつけた戦闘員4名が地曝しています。ですので、EAOが侵入したと考えていいでしょう」

と、EAO管理長官。


「本国との最終連絡記録は5日前、そしてその2日後に事件が発覚した。また基地内の監視カメラは意図的に消されており特定は困難でしょう。今CIA及び地元警察、IME(米国EAO管理機関)が極秘でオーストラリア全土を大規模捜索しています。国外脱出防止のためにも海上警備隊の増強及び空港やフェリーの検閲強化などは要請しておくべきです」

と、CIA長官が続けて言う。


「そうだな、オーストラリア政府にそう要請しておけ」


「了解です」


「まあ、今回の損失で米国の秘匿保有数の合計は6体から5体に減少した。しかし『storongarm』は重要な個体ではない……なにせ波長がほぼ無いようなものだ……まあつまり、その損失は経済及び軍事的に見てもあまり痛くはない。しかし民衆にこのことが知られないよう徹底した情報統制を行う所存です」


国防長官は言い終わるなり水を飲み、続けてこう付け加えた。


「よって、国防長官としては再発防止のため各管理施設での部隊増強及び再指導を職員戦闘員に施し、施設の防衛能力の増加を率先すべきですね」


「ああ、そうだな。では、EAO管理施設での職員戦闘員再指導及び部隊増強と将来的な防衛能力の強化、豪政府と共同した襲撃犯の捜索とその捕獲ということで議決しよう……全員一致だな────では会議を終了する」


大統領はそう言い会議を閉じた。


大統領らは会議室から出てそれぞれの役割に戻る。

大統領も一度執務室に戻るため、数人の護衛と国務長官と一緒に歩いている。


「近年は例の団体や宗教組織、また中国や日本の東南アジア進出、米欧問題など危惧するべきことはたくさんあるな……」

大統領はそう独り言を言い、足をカッカッとならしながら廊下を歩いていった。




------------





彼女ひとみ、帰ってくるそうですな、会長殿」

一人の白髪、白髭でスーツを着る年老いた男性がそう言った。


「ああぁ、そうか帰ってくるのかァ? それならあのHE計画もいよいよいよいよ大詰めに入るなァ」

会長と呼ばれた人がそう言った。


彼は髪が異常に長く、その髪は床にも広がるほどだ。

顔全体も髪で隠れており、部屋が真っ暗なためより見えない。


しかし毛量が多いというわけではなく、薄く汚い髪が広がっている。


上半身に服は来ておらず、下半身は古ぼけたズボンだけを履いている見るからに薄汚れて杜撰な姿で椅子に座っている。


「はい、帰ってきます。おおよそ2ヶ月後ぐらいですかな」


「だーったら! まだだまだだまだだ。今年じゃない」


「はっはっは、我々はあくまでも補佐、会長殿の潮時に委ねますな」

年老いた男性はそう言って大袈裟に笑う。


「あーあーそうだそうだ。だが!」

彼はそう言って両肘を膝の上に立て、両手を口元で組んだ。


「来たるべく歯車に戻す日は遠く無い」


その時、床までにも伸びきった前髪の間から、まるで死んだ魚の眼のような大きい眼球に極端に小さな瞳孔が浮かび上がった。


その丸い眼球はまだたきを一切せず、一点のみを睨んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ