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この未来なき世界 ~自由を求めた少女の物語~  作者: いから
It's more blessed to give than to receive
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EAO Safety and Protection

メキシコ。

それは、アメリカのすぐ南にあり、西海岸は太平洋に、東海岸はカリブ海に面している。

領土の中央には険しい山々や乾燥地帯が広がり、首都のメキシコシティは標高2240mに位置している。


GDPは世界第16位で、これからも未来ある国だった、1990年までは。


1990年12月、突如メキシコ軍部のメンデスが武装組織と共にメキシコ政府に対してクーデターを実施。

当然これに米国は黙っておらず、翌年1991年1月に国連軍と共に反乱軍に攻撃を開始した。


しかし反乱軍の勢いは止まらず瞬く間にメキシコ全土を制圧し、同年1月初旬にはメキシコシティを占領した。

逃げ遅れた大統領を含む政府要人の大多数はここで殺害され、メンデスによる軍事政権が発足された。


ここから5年間の抗争が続いたがゲリラ戦を行うメンデス政権軍が圧倒し、1995年、ついに米本土逆侵攻を恐れたアメリカ政府が和平を提案。

国連軍はメキシコから引き上げれ戦争は終結した。


現在では、日本を含む各国との国交も回復してきているが米国は依然として国境を封鎖しており、両国間の緊張が続いている。

メキシコ国内も独裁政権による圧政や米国からの制裁で貧困化。

今ではGDPは目に見れないものとなっており国内の犯罪発生率も20倍に膨れ上がった。


しかし、この戦争には影に黒幕と言われている……いや黒幕がいる。


それが、EAO安全保護協会(ESP)、いわゆる某組織だ。

ESPはメキシコを拠点に活動する非営利組織であり、他国のEAO管理体制の視察、独自のEAO保護活動などを行っている。まあアメリカや中国、ロシアなどの国からは活動を違法と言われているが……


しかし、その活動はあくまで建前上の話だ。


実際は、保護したEAOを教育し、軍として利用していた。いや、今もしている。

それで圧倒的軍事力を得たESPは、まず既存の麻薬カルテルの8割の壊滅させたのち、軍を操り内戦を誘発し政権の実権を掌握した。

他には、強盗、殺人、強姦、誘拐、違法取引、人身売買などなど……


これが今のメキシコだ。





「ニックー!」


私は車の外に出て、もうすでに外にいたニックにバッグを投げつける。

不運にもそれが頭にぶつかり、「うがっ」という声と共に倒れた。


「あ、ごめん……大丈夫?」


「大丈夫ー大丈夫ー、痛くないってー」

ニックはそうは言って何事もなかったかのように起き上がったが、当たった場所が少し赤くなっている。

彼が少し強がりなのは黙っておこう。


「寝違えて首が痛い……」

私は首を押さえながら痛みでうつむく。


「こっちは運転中に一睡もしてないんだぞ、人間だから死んでしまうわ」


「とか言って〜、お酒飲んでたんでしょ? ちょっと酒臭いよ?」

私はわざと鼻を手で押さえ手を左右に仰ぐ。


「ぎくっ……いや、少しだけなら問題ないさ」


「問題大だよ!」


とか、たわいもない話をしているとストロンも車から降りた。

ちなみに車はここに乗り捨てるからお別れだ。


別に愛着はないけどね。


「お、あんたが『strongarm』か? 運転してて話せなかったんだよなー」

ニックはストロンが降りてくるなり、そう言って彼に手を出す。


「よろしくなー」


「ああ、こちらこそ。これからはストロンでいいよ」


「へーい」

ニックは強めにストロンの手を握り握手をした。ストロンも対抗する。


「じゃあ、これからシドニーに行ってメキシコ行きのフェリーに乗る。ストロンはE波どれくらい? 多分もうアメリカ軍に気づかれてるから、出国のときに波長検査されると思うんだよね」

ニックはカバンを開けて何かを探しながらそう尋ねた。


EAO波長はその放出量とエネルギーの大きさの検査方法に反EAO粒子反射測定法と電磁波測定方法の2つが使われいる。

自然界の物質も微量だがEAO波長を出しているが、それの放出量は0.5〜0.01ぐらい。例外にもっと多いのもある。

そこで、国連では1以上検出されることがEAOである条件としており、今ではこれが国際的な基準だ。


「俺は知らないですね……1ぐらい?」


「うんうんそれぐらいだねー、……1.1か、EAOにしては低いね」

ニックはカバンから検査機を取り出しストロンのEAO波長を調べた。確かに低い。


「そういえば、瞳は調べなくていいの?」

ストロンは私にそう言った。


「私はEAO波長を意識的に0.1以下まで下げれる特殊な体質なんだ。だから検査されても大丈夫。今回はまずいけど」


体から離れた血とか肉とかの放出量は意識的に下げれないから献血されるとまずいんだよね。念の為にも普通に乗船するのは危険だ。


「よし、じゃあ私たちはニックが船に乗船した後、自力で泳いで不法乗船するからそれでよろしくー!」

私はストロンの肩を無理やり組んでそう言った。


「え、ちょっと俺泳げな──」


「私が手で引っ張るから安心して泳いでね」


「そうじゃな──」

ストロンが何か言ったような気がしたが聞こえなかったことにしよう。


「よし、じゃあ俺は普通に乗船して部屋をとる。瞳たちは検査で引っかからないように不法乗船するでオーケーか? 瞳も部屋欲しいだろうしな」


「うんうん賛成ー私はふかふかのベッドで寝たいな」

昨日、変な姿勢で寝ちゃったから首が痛いんだよね。もう治ってきたけど。


「はぁ……そうしましょう」

ストロンはため息をついて賛成した。なんか乗り気じゃないらしい。


「よーし、メキシコにりょこ……じゃなくて我らが故郷に帰還するぞー」


「おー!」


ニックの掛け声のもと、私たち一行はフェリーに乗るためオーストラリア最大の都市、シドニーへと足を向かわせたのであった。

ESPは日本では地安保会と呼ばれています。

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