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この未来なき世界 ~自由を求めた少女の物語~  作者: いから
It's more blessed to give than to receive
11/27

血臭装

私とニック、そして『storongarm』を乗せた輸送車は発車した。

車は砂漠の唯一舗装された砂道を進む。


目的地はシドニー近郊で、明日の昼までには着く予定だ。

だから、それに間に合うようニックが食わず眠らずで運転してくれる。


この輸送車は一般的な軍用輸送車ではなく、軍の重要人物などを危険地域に招くときに使うものだ。

だから、内部も広いとは言えないが広く、両側面の椅子は簡易的なベッドにもなる。


私は棚にあった缶詰めと思われる物体を食べながら、横たわらされている『strongarm』の横に座る。


「私の傷が再生したらすぐ外すから、後少しの辛抱だよ」


私はそう呟き、今後の予定を考え始めた。



------------



「これでよしと・・・・・・」


数時間後、私はメモ帳を閉じて棚の上に置く。米軍のやつ勝手に使ったけど、大丈夫だよね……


私は自分の右胸を見てみる。

すると喜ばしいことに、まだ少しズキズキするが銃で撃たれた時の風穴は完全に塞がりほぼ元通りの状態になっていた。

試しに触れてみると、触感も多分だけど元通りだ。


これほど怪我したことは今までなかったから治るか心配だったけど、元に戻って良かった。


私はそう思いほっと胸を撫で下ろした。


「それはさておき、この人の拘束具を外さないと」

私はそう気を改め、ナイフを持って『strongarm』に近づいた。


この人は大きな黒い一つの硬く柔らかいプラ製の袋に入れられている。

私はこれを基地で奪ったナイフで切り裂いた。


中があらわになる。


中を覗くと、眠っている茶髪の少年がいた。年は16歳ぐらいだろうか?

かなり整った顔立ちをしており、金髪のニックと比べても引けを取らない容姿だ。


強いて言えば、彼の方が子供っぽいと言うところだろう。私と同い年ぐらいだけどね。

服はどこにでもありそうな服を着ている。


手枷と足枷、首枷もしているので、手枷と足枷は能力で変形させた後に破壊した。

首枷はさっきニックが米軍のパソコンで遠隔で外しておいた。


この首枷の名前は反EAO粒子製制御チョーカー。通称はECC。

軽量で硬度の高い高濃度の反EAO粒子物質の合金で作られ、表面上の見た目は光沢もあり滑らかで近未来的だ。


そして、このECC内部に火薬があり、米軍の持つ端末で爆破が可能だ。また、爆破が表面装甲で弱まらないよう首に接する側の装甲が爆発と同時に変形する。

また、ECCに亀裂などの一定の負荷がかかると自動で爆発すると言うおまけ付きだ。


さらに、反EAO粒子でEAO波長の放出を抑止することもでき、その他にも色々な機能があるが、ここではこれ以上言わないでおこう。


私はすぐにこのECCを拾い、窓の外から思いっきり放り投げた。

これで危険物はもう無くなった。


「………………」

私は自分の服をまじまじと見つめる。


血まみれだな……


さてと、優先してすることは終わったし、じゃあこの血まみれの服を着替えよう。

衣服は当然再生しないので、えぐれた部分だけ肌が露出してしまうし、よく考えると血の匂いも臭い。


私は制服のブレザーを外す。

これはかなり大きいブレザーで、少し袖をまくらないと両手が完全に見えなくなるサイズだ。


そして靴、靴下、スカートと脱ぎ、手をクロスにさせて裾を掴み、手を上げて上衣を脱いだ。

片方が破れて使えないブラジャーも脱ぎ捨てる。

そして私は目線を下に向けた。


「げっ、ここまで染みてる……」


私は嫌味な顔でそれを見た後、棚からプラ袋を取り出した。

そこにブレザー以外のさっき脱いだ服を詰め込み、下着も脱いで入れる。

私はその袋をきつく縛り、元あった場所に戻すために棚に向かった。


袋を棚に戻す瞬間、ふと嫌な予感が脳に思い浮かんだ。


今なにも服を着てないから、この人が起きちゃうと勘違いする……よね?


「えーどうしよ……血まみれの服着たくないのにー!」

私は頭を抱え、何かないかと棚を漁った。


しかし案の定、棚からはゴミしか出てこなかったのだ。


「うーん、うーん、何かいい策は……そうだ! ニックの荷物を漁ろう!」

あんまり期待はできないがこれしかない。


私は絶望して袋から取り出そうとしている服を再び詰め込み、ニックの荷物を見た。

しかし、そこにはタンクトップ2枚と男女それぞれの下着が1枚ずつしか入ってなかったのだった。


「なんでタンクトップと女性用パンツが……てかこれ私のじゃない? なんであんだよ……」


私は色々な意味で期待を裏切られたが、仕方なくその2着を着ることにした。

着心地はまずまずと言ったところだろう。


「ふぅー、疲れた……」


私は彼と反対の椅子に腰掛ける。

そして心身疲れた私はブレザーにくるまり、うとうとと眠りについた──



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