3.願いのかなう鍵
※シナリオ形式
※モノローグ=M表記
波が浜辺に押し寄せている。
すっかり日も暮れた貸別荘のテラス。
翼:なぁ、みんなは将来のこととか考えてるの?
美佳:翼にしては珍しいこと聞くね
翼:はっ?
佳純:全然決まんなーい
和也:俺は決まっとるよ
翼:そうなの?
和也:うん、一応ね
佳純:なになに?
和也:なれるか分かんないけどさ、レスキュー隊になりたいなって……
和也の発言に、皆驚いた。
李璃:すごいじゃん! 和也、運動神経いいし、なれそうだよ!
和也:李璃に言われると……なれる気がする
和也はドキッとした。
美佳:李璃は戻ってこないの?
李璃:うーん、どうかな……。お父さんの転勤で仙台に行ったけど、本当は途中からでもみんなと同じ中学に行けたかもしれなかったんだ
美佳:えっ?
李璃:震災があったじゃん? それで、お父さんの任期が伸びたっていうか……戻ることを選ばなかったの
和也:そうだったんだ
李璃:その日その時に、その場所に居た人にしか分からないものっていうの? この街を取り戻したいみたいな
美佳:そっか……
李璃:今日ここに来るのすごく楽しみだった。でも……久々に来たら……自分がちょっとこの街の人じゃない気がした。わたしの知らない場所な気がした……
李璃の言葉に僅かな沈黙が流れた。
そして、その沈黙をかき消すかのように、夜空に花火が上がった。
翼:始まった!
佳純:わっ、綺麗!
6人は花火を眺めた。
佳純が優の隣に腰を下ろす。
佳純:ねぇ、覚えとる? 一緒に花火大会行ったの
優:あぁ
佳純:懐かしいね。あの時は、迷子にならないように手……繋いでてくれた
優:……
佳純:ねぇ、やり直さない……?
優:……
佳純:別に喧嘩別れしたわけじゃない。わたし達は……一緒でしょ? 同じ傷を抱えてる者同士
優:それって、同情だろ?
佳純:えっ……。でも、わたしは誰よりも優の気持ち分かっとるよ
優:ただの傷のなめ合いじゃないか
佳純:わたしは優の一番じゃなくてもいい……。優と居たい……
佳純は、そっと優の手を握る。
寄り添う優と佳純の背中を、李璃は物悲しく見つめていた。
翼:夏って感じだなぁ! おっしゃ、俺も頑張るぞぉ!
美佳:翼は、相変わらずなんだから
美佳は、翼の様子に笑った。
和也は、李璃の様子が気になり、声をかける。
和也:どうした?
李璃:えっ……?
和也:ぼーっとしてたから
李璃:あっ……そう? 花火久々に見たなって……
和也:俺も、こうやって見たの、すごい久々な気がする
李璃:そっか……
和也:李璃、時が経てば変わるものもあるかもしれない。でも、ずっと変わらないものもある
李璃:そう、かな……?
和也:街が変わっても、人の気持ちが変わっても……俺の気持ちって変わらないんだ……
李璃は和也を見つめる。
和也:優はもう、李璃の知ってる優じゃないかもしれない。泣きたくなったらいつでも呼んでくれていいんだよ? 俺、レスキュー隊だから!
李璃は、微笑んだ。
翌朝、佳純の姿は、恋路ヶ浜の『誓いの鐘』にあった。
そこには、恋人達の想いが詰まった『願いのかなう鍵』が沢山かけられている。
佳純の手にも『願いのかなう鍵』があった。
李璃M:恋路ヶ浜は、恋人の聖地だ。恋人達は、願いを込めて鍵をかける。もし、願いが叶うとしたら、今のわたしは何を望むのだろう……。