扉
恥ずかしい話だが、俺は素人童貞である。
風俗でプロにしてもらった経験はあるが、彼女いない歴=実年齢。
普通に彼女とHしたいという願望は膨らむばかりだ。
「早く素人の扉をあけたい…」
俺がぼやくと、
「何だよそれ」
友人の水島に鼻で笑われた。いいよな、彼女がいるヤツは。
俺は、いじけて背を丸めた。もうこいつには、ノートを貸してやらない。
すると、哀れに思ったのか、水島が急にアドバイスめいたことを口にした。
「まずは、外見を変えることから始めようか。人は見た目が9割だからな。髪型を変えろ。新しい服を買え。猫背はやめろ」
確かに一理ある。
俺はまず、青山のおしゃれな美容室を予約し、雑誌やテレビで見た人気美容師を指名した。
美容室の雰囲気にすごく緊張したが、カットが仕上がってみると、流石というか、ずいぶん垢抜けた印象に変わって、自分じゃないみたいだった。
それに自信を得て、思い切っておしゃれな服屋にも足を踏み入れた。
あれこれ店員に薦められるが、普段ユニクロやGUしか行ったことのない俺は、コーディネイトがどういうものかもわからない。
それで、奮発してショーウインドーのマネキンが着ている服を一式購入した。
自分で言うのもなんだが、なかなか似合っている。
その格好で、大学へ行くと、今まで口をきいたこともない女子が話しかけてくれるようになった。
といっても、挨拶だとか、短い世間話くらいの他愛のないものだったが、俺にとっては大きな進歩だった。
「おお、いい感じじゃないか」
水島が、ニヤニヤしながら、近づいてきた。
「まあ、あとは慣れだな。飲み会セッティングしてやるから、参加しろよ」
俺が思っていたより水島はいいやつだった。
その後、水島の後押しもあって、俺は合コンや飲み会にも積極的に出るようになり、女の子と話す機会も増えていった。
そのうちに自然と気になる女の子もでき、お互いいい雰囲気になり、告白し、付き合うことになった。
そして、5回目のデートのとき、チャンスは巡ってきた。
酔っ払った彼女を家まで送っていったのである。
彼女は一人暮らしだった。「…コーヒーでも飲んでく?」
切望していたシチュエーションに俺はコクコクと首を縦にふり、彼女の部屋へ。
「…シャワーあびてくるね」
彼女が先にシャワーを浴び、次に俺が風呂場へ入った。念入りに洗ったのは言うまでもない。
寝室にはいると、部屋の明かりはおとされ、彼女はすでにベッドに入っていた。
「…おじゃまします」
俺はドキドキしながら、そうっと彼女の横に滑り込んだ。
「優しくしてね」
可愛い彼女の言葉に、俺は奮い立った。
キスをして、手を胸にはわせ、そしてそっと下へ下へ・・
ん?
…これはナニ?
何か…
ナニがついてる…?
まさか・・・・彼女は・・・・
男・・・・だった・・・
男の娘というアレか・・・・
そして、俺は、ある意味また別の扉を開けてしまったのであった。