第一章54、『【無敵】』
血の匂いがする。
鉄の匂いがする。
『不死鳥』の体は、あるはずのない刀でズタズタになっていた。
それどころか、身動きもできないように、『不死鳥』は人の形を失っている。
「天月、このまま決めるぞ!」
「分かってます、アズマ!」
声が響く。
実力差を悟る。
それにゆえに。
女は。
「【神代領域】――」
同じように。
手加減を止めた。
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最後に。
『不死鳥』は綴る。
「――【輪廻転生・現世地獄】」
世界は移り変わる。
業火。
業炎。
劫火。
終末。
溶岩。
不自然なほどに、匂いはない。
これほどなら。
少しぐらいは、焦げ臭いだろうに。
否。
それとも。
既に焼けるものはなくなってしまったのだろうか。
まさに。
地獄絵図。
そこは。
まさに。
地獄のような場所だった。
「……」
呆然と、アズマはそれを眺めていると。
バタン、と。
「天月!?」
人の倒れる音が鳴る。
「……」
「天月!」
「――熱中症」
声が響く。
服は焦げ、その肌は多く露出している。
その姿は、実に男らしい。
「っ!」
咄嗟に、【剣聖】は天月をかばうように構える。すると、ゆっくりと人差し指をアズマに向けて、ポツリと警告する。
「早くしないと、貴様もそいつのようになるぞ」
死ぬ。
このままでは、天月未来は死ぬ。
自分も同じように死ぬ。
他人。
自分。
それぞれの死を悟る。
そう思ってからの行動は、実に早いものだった。
刀を握り。
「――【限定魔術・影鏡】!」
地面に刺した。
すると。
血しぶきが舞う。
【神代領域】。
少なくとも、これは彼女の【人生】――【歴史】の一つだ。
ならば、これもまた、一種の偶像である。
「……無駄だ」
その言葉を真っすぐに表現するように、一瞬で『不死鳥』の体は再生する。
「――【限定魔術・偶像】!!」
また、舞う。
「……無駄だと言っている」
「――【限定魔術・偶像】!!!」
またまた、舞う。
「……憐れだな」
熱気が、増す。
段々と、意識が遠のいてゆく。
「後は任せろ。お前の後は、俺が引き継ぐ」
「――させるか、焼き鳥」
聞き覚えのある声だ。
「――【神代領域】、【未来永劫・屍山血河】」
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この悪臭を覚えていた。
あの戦いを覚えていた。
その契約を覚えていた。
だから。
意識が冴えた。
続けて、足音が聞こえたのである。
朦朧とした、されど冴えた意識の中。
彼は。
彼女を認知した。
「――忘れるな、【剣聖】」
姿ではなく、声で誰かを識別する。
彼女――【転生者】は手を差し伸べて、静かに続けた。
「――汝と吾輩で【無敵】だと言うことを」
言葉はいらない。
するべきことは決まっている。
アズマはその手を掴み、ゆっくりと立ち上がる。
そして、手の空いている方であるはずのない刀を握った。
体に響く痛みを無視しろ。
しっかりと、己の敵を見据えろ。
そして。
「――戦え。吾輩が手を貸してやる」
仲間と共に、己の敵を打倒しろ。




