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ワールシュタットの剣聖  作者: 舟揺縁
第一章【剣聖と問題】
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第一章50、『キョンシー』


 『三枝学園』に『不死鳥』と『シスター・ネクロ』が渡る前。

 三人の【魔術師】と殺し合う前。

 親子二人は。

 こんな会話を繰り広げていた。


「母さん、私は何をすれば良いんだ?」

「今代の俺と同じ立場の存在、そいつに対して、交渉を持ちかけてくれ。それで、味方になりそうなら、ここに引き入れろ」


 彼女のその言動は、母親と言うよりも、父親のものに近い。厳しそうな声色と言うべきだろうか。


「駄目なら?」

「駄目なら、殺せ」


 それとも、冷徹と言うべきか。


「同類以外の人は?」

「敵は殺せ。味方なら、無視して構わない」

「そうか」


 会話が途切れる。

 ノエル・アナスタシアが、【転生者アナスタシア】として覚醒したことを聞いてから、ずっとこの調子だった。

 ただ、一つだけ、違う点があるとすれば。


「……あの女の情報では、お前の妹分が俺の同類と共に行動しているらしい」


 ポツリと、そんなことを口にしたことだろうか。


「殺さないと駄目か?」


 それは。


「……味方に引き入れたいのなら、俺は止めはしない。だが、無理はするなよ。一応、お前の妹分は【魔術師】だ。本来なら、俺の敵である存在だ。気を付けろ、あの娘からは、【ラプラスの悪魔】の匂いがする」

「……了解した」


 彼女にしては、優しい言動だった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 手榴弾が投擲される。

 その瞬間。

 砂鉄が宙に浮かび、トム・ジェイソンやレクシー・ブラウンやイドラを守るように、大きな壁となる。

 そして、破裂した。

 三者無傷。

 敵はどうだ。

 それを知るために、トム・ジェイソンは仲間の名を叫んだ。


「レクシー!」


 電気操作能力。

 その応用での電子操作。

 その更の応用による電子感知。

 人間は必ず電気を流しているものである。

 それの応用による敵の感知。

 言ってしまえば、歩くレーダー装置である。

 ポツリと、彼女は言う。


「居ない……?」

「つまり、死んだのか?」

「いや……」


 三人の中で唯一、目視での確認をしようとしていたイドラが、大きな声で叫んだ。


「上でございます!」


 キョンシー。

 伝承曰く、空を飛べるらしい。


「狡いぞ!」

「ええ、訳が分からないわ!」

「伝承通りでございますね!」

「……」


 何だ、コイツら。

 そんな印象をネクロは得ていた。

 それでも、冷静にネクロは尋ねる。


「レクシー・ブラウン。話を聞いたところ、貴様の目的はアズマに成り代わることではないのか? だというのに、何故、貴様はあの男の味方をしている!」

「勘違いをしないでもらえるかしら」


 黄色い線が、なびく。


「私は最初からアイツの味方なのよ!」


 ネクロに向けて、雷鳴が大きな津波のように襲い掛かった。

 それをネクロは、これでもかと必死に回避する。それを見て、ふとトム・ジェイソンはとあることを思った。だからこそ、残り少ない弾丸が籠められている銃口をネクロに向けて、一切の躊躇なく引き金を引いた。

 すると。

 予想通りに。


(――避けない)


 ニヤリと、トムは珍しく笑う。

 金属に当たった時のような音を出しながら、ネクロに触れた弾丸は弾かれてしまったにもかかわらずだ。

 つい、それを聞いて、本当に元々は人の肌なのかをトムは疑いたくなるが、それは意味がないなと首を振る。そして、同時に、トム・ジェイソンの一つの憶測が、何よりも信用できる確信へとたどり着いていたのだ。

 一方、その光景を見ていたレクシーは、弾丸が効くことはないと判断したのか、トムと非戦闘員のイドラに向けて、こう発言する。


「下がってなさい、二人とも。私がこいつを引き留める!」


 どうやら、この中で最もネクロに打点を入れられるレクシーの中では、ネクロに対して、足止めするので今は精一杯だと判断されているようだった。

 だからこそ。

 トム・ジェイソンは、起死回生の案を出す。


「……レクシーさん、イドラさん、僕に策がある」


 声は真剣そのもの。

 ならば、信じるだけの価値はある。


「出来るだけ協力いたします」

「じゃあ、私は足止めしとくわね!」


 ちぐはぐなチームワーク。

 それは不自然なほどに、敵に対して通用していた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 トム・ジェイソンは考える。

 受け売りの情報を振り絞る。

 【剣聖】による連撃はとてもないものだったと予想される。

 少なくとも、『不老不死』を相手にする時と同じレベルで攻撃していた思われる。

 しかし、ご覧の通りに、キョンシーにはびくともしなかった。

 となると、基本的に打撃は彼女に効果がないと考えるのが妥当である。

 そして、弾丸も聞かなかった。

 つまり、イメージ的に打撃攻撃っぽいものは、彼女に効果がないのだと予想される。

 そして、ここで最も重要になってくるのは、ネクロが手榴弾をその身で受けることなく、逃げるように避けたことだ。

 人間だった頃の名残で、つい怖くなって避けてしまったからか?

 違う。

 あそこまでの普通の人間と比べて大差ない動きは、随分前のキョンシーぐらいにしかできやしない。

 つまり、手榴弾が出来る以前に生きていた人間である可能性が高いのである。

 となると、理由があって、手榴弾を避けた可能性が高い。

 そして、レクシーの電撃、彼女はこれを避けた。

 つまり、彼女はこう言った手段の攻撃に弱いと予想される。

 レクシーの攻撃手段は、括りで言うと、科学兵器に近い。

 そして、手榴弾もまた、一種の科学兵器と呼ぶことが可能である。

 そこから考えると、ネクロは科学兵器が弱点だと憶測することが出来る。

 何が言いたいかと言うと。


「――つまり、僕らは倒すことが出来る」

「その作戦を今から言う」


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