表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールシュタットの剣聖  作者: 舟揺縁
第一章【剣聖と問題】
80/133

第一章48、『対話』


「たった、一か月なんだけどね」

「それが、僕が行動をしない理由になると?」

「まさか、君は根っからのヒーローだからね。こういう、自分の全力を出せない状況の方が、無理を聞かせてでも動くと思ってたよ」

「そういう日比谷は、何一つ変わっていませんね。つい先月、自分のお気に入りの手駒を失ったはずでは?」

「失礼な奴だな。手駒じゃないよ、生徒だ」

「変わりないでしょう」

「……やっぱり、君と私じゃ、気が合わないみたいだね。それはそうと、彼があんな目に合った原因は、君にあるだろう」

「いえ、貴方なら止められました。ただ、止めなかっただけで」

「いや、止められないよ。だって、約束だからね」

「約束は破るためにあることを、知らないんですか?」

「馬鹿真面目にそれを実戦する奴は、私はあまり見ないけどね」

「ええ、貴方とは違う!」

「……君は我儘だよ。力には犠牲と責任が伴うんだ。君はそれを鑑みずに、ただ無邪気にハチャメチャに足掻いている。その結果がこれだよ、愚かしい。まず、君は心から信用の出来る仲間を作ったらどうかな?」

「それ、ブーメランになっていますよ。貴方も変わりませんね、本当に。自分のことは棚に上げて、その遥か先の棚から見た景色で、自分の思うが儘に状況を変えようとする。貴方は、結局、他人を利用しているに過ぎないんですよ!」

「自己紹介かな?」

「同類紹介ですよ」

「……【最悪の呪術師】、君と私の付き合いはかれこれ数十年だ」

「ええ、そうですね」

「私は【世界】のために。そして、君は【個人】のために足掻き続けている。もう、止めにしないかい? 私と君が手を組めば、この【世界】を救うことは容易に出来るはずだよ。いい加減に、認めたらどうなんだい。誰も、君の『名前』を知らないのは、君がそうして孤独に戦ってきたからじゃないかい? 確かに、私には納得が出来る。だって、【日本式神秘】には、何かを演じる時、自身の名前を捨てることで、完全に何かへと存在を変貌させることは出来る。でも、君は名前をまだ捨ててないんだろう? 私と手を組もう。共に【世界】を救おう」

「……貴方は狂っている。貴方は実に機械的です。これは僕の見解に過ぎませんが、貴方は最初はまともだったんだと思いますよ。最初から狂ってたから、まともになったわけではなく、まともだったから今狂っている人に過ぎないと、僕は思っています」

「文句ならアイツらに言ってくれよ、【最悪の呪術師】」

「貴方は【人】を【人類】としてしか、見れていない。【世界】を【世界】としてしか見れていないように、【人】を【人類】としてしか見れていないんです。……と言っても、多少の区別くらいはあるでしょうね。例えば、【知り合い】とか、【友達】とか、【親友】とか、【愛人】とか、【生徒】とか……そんな風に。ただ、根本は狂ってしまっている。貴方の一番の欠陥は、【人類】を【一つの概念】としてしか見れていないことです。まるで、神様にとっての価値観のように」

「……それ、みんなには言わないでね」

「素直に聞くとでも?」

「私はそう思ってるけど」

「相も変わらず、僕を舐めていますね」

「まさか! そんな訳がないだろう、【最悪の呪術師】。だって、君は【犯罪者】だとしても、一応は私の【同類】だよ。なら、舐めてかかった方が面倒くさいことになってしまう。誤解を招いたようだから、訂正しておくけどさ。君は異常に甘い。だから、みんなには言わないと私は思ったんだよ」

「……僕は貴方とは組みません」

「理由を聞いても良いかな?」

「僕は完璧人間が嫌いだからですよ」

「駄目じゃないか、時代は機械化だよ。効率化だよ。だったら、これくらいのことはなれておかないとさ」

「貴方は機械じゃない。その根本は人間だ!」

「やるかい、【最悪の呪術師】?」

「いいえ、与えます。殺しは今、必要ない。僕が貴方の氷を解かす!」

「……この前、私じゃなくて、私の【生徒】に負けたってこと、まさか忘れてるのかい、【最悪の呪術師】?」

「いえ、今が仕留め時ですよ、【絶世の救世主】」

「……なるほど。確かに、今の私は【生徒会長】には攻撃できないね」

(どうせ、攻撃はしてくる。どっちみち、この子も彼にとって救わないといけない人なんだから)

「――なら、私も本気でいこう」

「――今の君には、【神代領域】を構築するほどの余裕はない」

「――所詮は有象無象の【呪い】のしっぺ返しを使っているに過ぎないんだよ」

「窮鼠猫を嚙むって言葉を知りませんか?」

「――君はいつも、それを失敗しているけどね」

「――チャンスは上げないよ。これは、自分で切り開くものだからね」

「「――ここに名乗りを上げよう!!」」

「――【絶世の救世主】、日比谷博文」

「――無銘、【最悪の呪術師】」

「返してもらうよ、うちの【生徒】を」

「治してみせます、貴方の【呪い】を!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ