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ワールシュタットの剣聖  作者: 舟揺縁
第一章【剣聖と問題】
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第一章4、『二つ目の依頼』


 まるで、妖精のような人だった。

 『生徒会長』に対して抱いた第一印象はこんなものだろう。

 いや、根拠はないのだが。


「……それで、根拠は何ですか?」


 さて、状況を整理しよう。

 アズマ・ノーデン・ラプラスは【剣聖】である。

 それと同時に【大罪人】でもある。

 この少年の過去を語るとなると、少なく見積もって小説一冊分程が必要になるが、それでも大雑把にまとめるとすると、目が覚めたら記憶を失っていて、そこを先代の【剣聖】である『フレイ・ノーデン・ラプラス』に拾われ、彼女の元で修行しているとある少女と出会い、その少女を巡って大規模な騒動が発生し、その結果、アズマは【英雄】を殺害したことで【大罪人】になってしまい、【剣聖】という地位を彼を守るためにフレイから譲られ、【理想郷アヴァロン】に投獄されることになった。その後、色々あって、【転生者アナスタシア】と呼ばれている【運命】を担ってしまった少女――ノエル・アナスタシアを護衛することになる。但し、その護衛対象自体はそのことを知らないので、誘き出すためにアズマは色々と『策』を講じた。

 結果、それが目の前の現状である。


「一つ、それは関連性です」


 真剣な表情が、目の前にある。

 どうしようどうしようと、心の奥底で真剣に慌てている少年がそこにはいる。

 以前、アズマは、護衛対象であるノエルを校長室に誘き出すために、放送室に入ってきた少女を脅したわけだが――『生徒会長』の声が聞き覚えのある理由はおかげさまで考えずとも理解できる。


「――アズマさんが要求した読み上げ。それに書かれていた【パンドラ】という名前。この『三枝学園イギリス支部高等部』において、【パンドラ】という名前の母親を持つ生徒は『ノエル・アナスタシア』さんしかいません。そして、あの時間帯は『ノエル・アナスタシア』さんが『オカルト部』で部活動――もとい、天月やイザベラに対するパワハラもどき……もとい、パワハラに似て非なるものが行使されているはずですからね。そして、『校長室』への呼び出しの詐称。それから考えるに、あの読み上げは『ノエル・アナスタシア』さんを誘き出すことを目的としていた」


 名推理である。

 名付けよう、貴様は『マトモなイザベラ』だぁッ!

 ――ふざけている場合ではない。


「……それで、この出会いは偶然なんですか? それと、俺じゃありませんよ、脅したの」


 アズマはそう言うと、彼女は頷く。

 頷かれてしまった。

 そして、長ったらしい話が始まったのである。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「――策を講じました。それと、わたしを脅したのはアズマさんに違いはありません」

「――アズマさんとの再会を果たすために、わたしは考えました」

「――考えて、考えて、考えて、考え尽くして、わたしは気が付きました」

「――その日の昼頃、『黒いローブの男』によって、イザベラが以前にボコボコのフルボッコのギタギタの油のようにした不良連中が、再びReフルボッコ祭りに参加しやがった、という話です」

「――この事件と、放送室でわたしの命をハイジャックした事件。その関連性を見出しました」


「……それで?」


「――見事手詰まりです。自信満々に王手をしたつもりが、歩兵に対して王手と叫んでいたわけですよ。まったく、笑えますね。笑ってくれて構いませんにょ……構いませんよ。まぁ、とにかく、それで大人しく、宿題をすることにしました」


「は、はぁ」


「――話は後日に移ります」

「――『ノエル・アナスタシア』さんが病院に入院した」

「――髪を切ったわけでも、肌をお手入れしたわけでも、ない。無きにしも非ずの有り得ず」

「――傷を縫い上げる、病院に入院した」

「――それで、あの事件とこの事件と『ノエル・アナスタシア』さん入院事件に関連性を見出しました」

「――閃きましたね。頭の上に電球が浮かびました。まるで、エジソンのように。それはそうとで、速攻で早退して、お見舞いに行こうとしました。鮮度な情報を得ようと、地面を必死に駆けましたとも」


「……でも、駄目だった、と?」


「――そう、面会謝絶でした。少なくとも、大けがは確定でしたね」

「――その割には、すぐに退院しましたけどね」

「――おかしい」

「――愛おしいほどに、可笑しい」

「――まさに、狂っている」

「――日常に紛れ込んだ黒猫の如く、この狂いに狂い咲いた非日常が誰にも気づかれずに、ポツリポツリと点々と転々としながら存在していました。それも、どれもこれもかれもあれも、そのすべてに関連性が見出され、線となってわたしの目の前にあった。これは、明らかにおかしい」

「――それに嫌な予感を感じつつも、『ノエル・アナスタシア』さんが登校した初日に、即速攻に話を聞きに行きましたが、良いようにはぐらかされたというか、嘘で固められているような、そんな隔たりをわたしは感じましたよ」

「――だから、『オカルト部』で待ち伏せをすることにしました」

「――だから、わたしはアズマさんに再会できたわけですよ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 話が終わる。

 それを確認して、アズマは内心『三枝学園』には頭脳が化け物レベルの奴しかいないのか、とビビりながらも、『生徒会長かのじょ』のそれが正解だと認知しておきながら、頑なに否定する。

 少なくとも、これを肯定したらすべてが終わってしまう。


「……出会った、ですよ」


 こうして否定してなんだが、頑なに否定しているせいで、何かやましいことを隠している風に見えている気がする。


「……それはそうと、もう下校時刻は過ぎていますね」

「そういえば、そうですね。じゃあ、そろそろ解散というわけで――」

「ええ、もしもわたしがここで『キャー、痴漢よぉ! 助けてぇ!』と言えば、警備員の人がアズマさんを捕まえてくれますよね!」

「はーい、そうでーす。俺がやりました。俺が『生徒会長』を脅した犯人でーす」

「え、なんだかヤケクソになってませんか?」

「はい、そりゃ脅されたらそうなりますよ」

「え、もしかしてわたしの推理間違っています?」

「いえ、この高校には推理力が高すぎる生徒が多すぎますと思いますですます」


 アズマは茶化しながらも、その態度を変えずに『生徒会長』に問いかける。


「はぁ、……それで俺に何の用ですか? 少なくとも、正気ですか? 俺は脅した相手ですよ? そんな人間相手に、こうしてタイマンで向き合って話し合う――明らかに、危険度が高過ぎます。俺じゃなかったら、絶対に口封じで殺していますよ?」

「大丈夫です。……その場合は、わたしと最後に話していた貴方が真っ先に疑われるはずですし、襲われることはないと踏んできました」

「……何が目的ですか?」

「アズマさんには、『七不思議』の真偽について解明してほしいのです」

「迷信だと思いますけど」

「わたしは、『オカルト』に関わる気はありません。そんなものに関わった人間の末路は、知らなくても容易に想像できます。知らないくせに、知ろうと思える時点で『ヤバい』存在なんですよ」

「……分かりました。俺が代わりに狂いましょう」

「え、いや、そこまでしなくても」

「じゃあ、俺はそろそろ帰りますね。それでは、失礼します」

「ちょっと待って」


 何というか、見ている方が情けなくなってしまいそうな、そんなあからさまに逃げようとするアズマを『生徒会長』は引き留めた。

 いじめられているのだろうか、自分は。


「これ、わたしの連絡先です。何かあった時は、これに連絡してくださいね」


 訂正する、悪意はなかった。

 謝罪するべきだろう、だがアズマはしたくない。


「……それはそうと、思い出しました。先輩、これについての話は二人きりの時だけにしておいてくださいね」

「分かりました」

「じゃあ、いい加減に失礼させて――」

 

 ふと、彼は思う。

 思ってしまう。


「――先輩、一つ良いですか?」

「はい、なんでしょう?」

「『オカルト部』に、この件について相談をする気はないんですか? そういう話は、俺よりもアイツらの方が向いていると思いますけどね」


 『七不思議』というと、やはり昼休みで『オカルト部』に無理矢理入部されかけているだけのアズマよりも、その方面の『専門家へんじん』共の方が真偽の審議も簡潔に簡単に最速で済ますことが出来るだろう。

 だからこそ、無責任という利点のみでアズマに依頼するより、そういったものに対する耐性がある――それも、『生徒会長』とイザベラや天月の会話を聞いてみると恨みがありそうという点もかんがみて、『オカルト部』に『七不思議』を擦り付けたほうが良いのではないかと、アズマは素直に憶測し、指摘する。


「……簡単な話ですよ」


 アズマのその問いに、僅かに視線をズラしながら彼女は答える。


「天月やイザベラに、恩を売ることが、心底気に食わないだけです」

「――それは……」


 同意である。


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