〇【大樹海】から脱出しよう。(1)
凶悪な魔獣たちが徘徊する【大樹海】の夜の森。普通に考えるとアウトだろう。
ただ、森に詳しい【地神】と自称する手長猿が、木々の間を飛び回っていた。
小さなくぼみを見つけたらしく、そこで野宿することにした。
ちょっとだけ手長猿を見直す。
水筒にどこからか水を汲んできたり、山菜を摘んできたり、山鳥を一羽確保してきたり。
山鳥程度なら、何とか自分で捌くことができる。
手元の小さなナイフで、手長猿の何となく的なアドバイスをもとに、肉を焼いてみた。
ちなみに、火は、火打ち石と生活魔法で熾した。
(これなら、ライターいらんじゃん。)
(あれ、今まで、こんなに簡単に魔法がうまく使えることがなかったよなあ…。)
今までの2つの人生の経験から通じた2つの感想。
しばらくの間、自分の中で感想を述べて、自分の中で解説することになるのだろうなあ…
それはそれでおもしろかった。
アウトドアライフって、本当にあこがれだったもの。ただし、凶悪な魔獣はいらないけれど。
さて、
野外活動中に森の奥にとばされてしまったので、一応、背負い袋の中に簡易なアウトドアグッズはある。
セージの記憶によると、クラスのみんなと【大樹海】のふちを歩いていたとき、いきなり、意識を失った様子。
これって神隠し的シチュエーションだよなあ。
捜索隊出してくれているのだろうか。え、放置かもって?
本来、獣や【魔獣】の襲来を懸念しないといけないが、森に詳しい【地神】と自称する手長猿がいるので、そこは安心(多分)。
とにかく、【大樹海】の辺にある、学年のみんなが寝どまりしているであろう【トムトーレルの街】に向かうこと。
夜目の効かない自分は、まずは身体を休めること。
【魔族】を仕留めたのは事実なので、その分パラメーターが向上しているはず。
確かに、凄く疲れて、数時間歩き続けた。
そして、数時間歩き続けて、凄く疲れたわけではない。
つまり、数時間歩き続けても、もしかしたら疲れないくらい、パラメーターが向上している。かもしれない。
今は、ほとんど実感がないけれど、少しずつでも身体が強くなっててくれればいいなあ。