〇【魔族】公爵との闘い(4)
そして【魔族】は消滅し・・・
超ハイレベル(このあたり、ちょっと適当)な滅魔魔法の使用権はどこかへ消え去っていた。
どうにもこうにも、適当に撃っても、確実に【魔族】を仕留めることのできるようなシロモノだったらしい。
この物語最大の戦闘シーンは、ここに終わったのである。しかし・・・
☆
『あ、あるじどの。お見事でござるーーーー』
「おい、手長猿、ちょっと話がある。」
オレの肩口で、手長猿がぶるりと身動ぎする。
「【神気】は隠せるの?」
『お、おいらのアイデンティティーが…』という呟きが何となく聞こえたが、きっと気のせいだろう。
手長猿から先ほどまで感じられた、一応ながら神々しい気配が、一気に希薄化した。
手長猿はただの手長猿になる。
「これで、もう【魔神】の部下が襲ってくることはないの?」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
何なのだろう、このふざけた沈黙は。
『あ、あるじどの。今はとにかく距離を稼ぎましょう。とりあえず、こっちの方角へ。』
今まで、【魔族】公爵(名前はきかなかった)から逃げてきた方向を手長猿は指し示した。
☆
数時間もたつと、だんだん空が暗くなってきた。
【大樹海】の夜の森、普通に考えるとアウトだろう。
実家の森林地帯でも【魔獣】来襲の危険性はある。まして、ここは【大樹海】だ。
セージである自分も森歩きが好きなレベルであって、森林地帯専門の探索者ではないのだから。