表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

留置場

おれは今、手錠と腰縄をされて歩いている。

「手錠」ときいたからにはもうわかっているかもしれないが、おれは捕まったのだ。とはいっても、正式な逮捕ではない。まだ「容疑者」である。


白い鉄格子のはめられた部屋へ、おれは入れられた。入る際、手錠と腰縄ははずしてくれた。

部屋には、既に二人の男がいた。一人は髪の毛がボサボサで、めがねをかけていて、ぐったりとしている。もう一人は、力強そうな男で、まゆげが太い。

おれは、この二人のどっちかに分類されたら、めがねをかけているほうに入れられるだろう。めがねはかけていないし、ぐったりもしてないし、髪の毛も整っているけれど、運動が嫌いで、ゲームが大好きだ。力強そうなほうは、あきらかにスポーツが得意そうなので、おれとは全然違うと思う。


正直言って、おれはこの二人よりはかっこうがいいと思っている。よく、小学生時代に女子からもてはやされたものだ。その女子たちに手錠と腰縄をつけたおれを見られたら、なんといわれるであろうか。


さて、今まで話していなかったが、おれが捕まった理由を教えてやろう。「万引き」だ。それも、盗んだものは9円のうまい棒。我ながら、馬鹿なことをしてしまったと思う。おれは貧乏で、両親とも音信不通だが、9円くらいの安いお菓子なら買えないこともない。


ここで、他の二人に留置場に入れられた理由を聞いてみた。めがねをかけているほうは、殺人だという。殺人犯と同じ部屋だなんて、なんとも恐ろしい。

まゆげの太いほうは、トラックでひとをひいてしまったかららしい。そのひとは死んでしまったので、罪が重くなるぞ、と、警察官からおどされたそうだ。だが、故意ではないようなので、どっちかというと、いいひとなのかもしれない。


さて、それからしばらくしておれは裁判をうけたわけだが、判決は懲役2年で5年の執行猶予つきであった。もちろんおれは執行猶予のほうを選んだ。ついでに、9円の罰金もさせられた。おそらく、うまい棒を売っていた店にわたすものなのだろう。


ここで、他の二人の判決を予想してみた。まゆげの太いほうは、懲役20年はありそうだ。殺人犯のほうは、もしかしたら死刑かもしれない。


警察署の門から外へ出ると、すがすがしい風がひたいにあたった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ