変身
ある県に、一人の少し性格の変わった少年が居た。
名前は・・・・ここでは、苗字のイニシャルであるOと言っておこう。
Oは、先述したとおり、性格がだいぶ変わっていた。やさしくしてくる子には厳しく、いじめてくる子にはやさしくしたり、勉強ができないのにガリ勉だったり、とにかく変わっていた。
五月のさわやかな朝、Oが起きると、目の前は真っ暗であった。しかも、布団の中にいたはずなのに広く走れる空間だ。
走ってジャンプすると、体がかなり浮いた。
不思議に思ったOは、自分の体を見てみた。
つまようじのように細い足。同じくつまようじのように細い手。そして、その足と手は、たくさんあった。手足は実際にたくさんあるのではなく、Oからはたくさんあるように見えたのだ。
このときOを見た人がいたら、びっくりしていたかもしれない。何故なら、Oはハエになっていたからだ。
ハエになってからの生活は、Oにとっては、なかなか楽しかったようだ。
空を飛べるからどこへでも行ける。
だが、寿命が近づいてくると、死の恐怖に追われるはめになった。飛べなくもなって、前も見えにくいし、Oはハエの生活にだんだん嫌気がさしてきた。
そして、寿命が来た。Oは、パタリと倒れて死んだ。
それと同時に、Oは人間に戻った。
普段の生活には戻ったが、親やクラスメイト、先生たちに何度も説明された。
実は、人間に戻ったとき既に月日はかなり過ぎており、六月中旬だったのだ。それまで、どこにもOは見当たらなかったらしい。