地震
地震が多いことで有名なある都道府県のある町の崖のすぐそばに、一人の少年とその母親が住んでいた。
父親は大昔おきた大地震で既に死んでいて、少年がたよりにできるのは生き残った母親だけであった。
少年と母親は、父親がいなくても、毎日楽しくすごしていた。
ある日。少年が住んでいる家がある地域に、大地震がおきた。
少年と母親は、なんとか助かった。お互いは抱き合って喜んだ。
次の日、その大地震の大きな余震がおきた。
少年が、大怪我をした。だが、死にはしなかった。
死にそうになりながらも、なんとか耐え抜いた少年を見て、母親は泣いて喜んだ。
さらに次の日、またもや大きな余震がおきた。
少年の母親が、ちょっとした怪我をした。だが、かすりきず程度で、死にはしなかったので、少年は泣いて喜んだ。
その次の日、またしても大きな余震がおきた。
少年と母親が、一緒に大怪我をした。少年の母親は、血だらけの手で少年を抱きしめ、泣いて喜んだ。少年もまた、泣いて喜んだ。
さらにその次の日、また大きな余震がおきた。
少年が少し怪我をしたが、大事には至らなかった。少年の母親は、とても喜んだ。
その次の日、また大きな余震がおきた。
少年の母親が、がれきに潰されて死んだ。
少年は嘆き、悲しみ、そして苦しんだ。
少年がたよりにできる人は、もう一人もいない。
母親が死んだ次の日の夜、少年は、明日、家の近くにあった崖から身を投げようと決心した。
その次の日の早朝、ふたたび大きな余震がおきた。
少年は死んだ。