#21 背後取り
所長室前
「じゃあ行くよ」
美郷が全員を見ると各自頷いた。
「失礼します」
ノックをすると同時に扉を開ける美郷。
「ちょっ!返事待たないんですか?」
「えっ?私はいつもこうだよ?」
「そ、そうですか…」
香澄は少し引いている。
完全に扉を開けると机でコンピューターの画面を見ながらぶつぶつ何かを話している男性がいた。
「…ね?どうせ気付かないから返事を待ってたらいつまで経っても入れない」
「…確かに私達が入っても気付いてないですね」
男性は画面から目を離さず、美郷達に気付いていなかった。
「すごい集中力だな。………いや待て、これって悪い事し放題なんじゃないか?」
誠は香澄に話し始めた。
「これが原因で?…確かにこんなに話してるのにまだ気付いてないし、後ろに回っても気付かないかも」
考えるような素振りをした香澄も少しわかってきた。
「とりあえず…」
ポケットから携帯電話を取り出し録画を始めた。
「しばらく撮っておきましょう。所長は証拠が好きだからこのまま私達で会話をしながら所長の様子を撮っておくわ」
「あぁ、そういう人なのね。じゃあしばらく様子を見ていよう」
そう言いながら誠は龍牙を見て
「所長の後ろに回れるか?」
「…やってみるっす」
これ以上ない証拠動画を撮るために龍牙に背後を取るように頼んだ。
龍牙は足音を立てないように進み、いとも簡単に背後を取った。
美郷と香澄は頭を下げ抱えた。
今度は
「尊、俺と美郷と香澄で会話をした状態で背後を取ってもらいたいんだけど」
「楽勝でしょう」
「頼んだ」
誠、美郷、香澄は特に関係の無い話をその場で始めた。
少し声を大きくしてみたりしながら会話をしたが、尊も簡単に背後を背後を取った。
「こりゃダメだ……。美郷、頼んだ」
「そうだね…」
美郷はカツカツと机に向かい
「所長!!!」
と大きく言いながら机をおもいっきり両手で叩いた。
「うわぁ!!ビックリした!!」
所長は美郷を見た後に後ろにいる龍牙と尊に気付いた。
「だ、誰だ!!」
「所長、お話ししたいことがあります」
香澄が近付きながら録画を止めた。
「…な、何だ?」