#20 侵入
美郷達がいた時代から少し遡り戻った一向。
「…ここはどのぐらい前なんだ?」
誠が美郷に問いかける。
「一年前よ。所長が変わる三日前」
「三日前か…。その所長がいつどうなるかわからないからまずはここから様子見だな」
「そうね、あまりにも情報が無さすぎるから」
二人の会話を聞いていた香澄がふと疑問に思う。
「美郷さん、まこっちゃんにそういう話し方でしたっけ?」
いつの間にか変わっていた美郷の話し方に疑問を感じた。
「うん?まぁ、そういう仲だからね」
「ちょっと待て」
美郷が答えるとほぼ同時に誠が止める。
「誤解しか生まないことを何さらっと言ってるんだ?」
「誤解?一緒に寝たのに?」
「寝てません」
「寝たじゃん。…ひどい、あれは遊びだったのね」
「お前が勝手にベッド占領しただけだろうが、おかげで俺はテーブルに突っ伏して寝てたわ。正確に言うとちゃんと眠れなかったわ!」
「眠れなかったから無防備な私に……」
美郷は両手で顔を覆い、下を向いた。
「あんた!!何をしたの!!」
香澄が怒る。
「…最低っすね」
「殺意が沸いてきました」
龍牙と尊は誠を睨みつけている。
「………ほらな、誤解しか生まない。俺にそんな度胸があるように見えるか?」
誠は少しイラッとしたが冷静に話すことにした。
「……見えないわね」
「そっか、そもそも童貞だったっすね」
「納得しました」
三人は美郷の戯れ言だと理解したが反面、誠は納得いかなかった。
「それはそれで腹が立つな。皆で俺を弄って楽しいか?」
「で?何で話し方変わったんですか?」
香澄が構わず話を戻す。
「大きな理由は無いよ。まぁ強いて言うなら信頼関係かな。まこっちゃんは私に惚れてるから」
「うん、今それ禁句ね。梨々香の事忘れたのか?」
「えっ!?じゃあ本当に?」
香澄が口元を手で抑えながら睨んでいる。
「まこぽんの言葉を思い出せ!……いや、俺は何を言ってるんだ?」
誠はそろそろ疲れてきた。
「冗談はさておき、私は元々その人に慣れたらタメ口になる性格だからね。さっ!行こうか!」
美郷はさっさと歩きだした。
「誠さん…、大変だったっすよね」
「…よく耐えましたね」
「そういえば美郷さんはあんな性格だった…」
龍牙、尊、香澄は誠に同情をしつつも美郷に続いた。
「……俺は怒っていいんだよね?」
確認しながら四人の後を追いかけた。
研究所
美郷と香澄が先頭で研究所に入ることにした。
男三人は見学者として入れるかもしれないと考えたからであった。
「お疲れさまでーす」
「お疲れさまです」
受付にいる従業員に声をかける二人
「お疲れ様です。どうされたんですか?後ろの方は」
「うちの研究所に興味があるって事で連れて来たんだよ。もしかしたら戦力になるかもって」
「はい、研究が進むのならばそれがいいかと」
受付は少し考えた後
「お二人がそう言うなら構いませんが…。それならゲストIDカード渡しますね」
IDカードを首から下げた三人は美郷と香澄の後に続いた。
「…まずはどうするっすか?」
龍牙が話を始める。
「ん?所長に直接未来の事を言うよ?絶対に理解してもらえるし」
「そうですね、その研究をしているのですから」
「…意外に楽勝っぽいすか?」
「伝えることだけで言えばね。実際に所長にどんな事が起こるかわからないからもしもの時は頼むよ?」
美郷は龍牙にウィンクをした。
「は!はいっす!」
龍牙ほ直立不動で返事をした。
「尊、俺は思うんだが…」
「誠さん、俺も同じ事を思ったと思います」
「…だよな、やっぱり」
「はい…」
「お互い、気を付けような?」
「はい、もしそんな感じがあったら殴りますね」
「………うん、その方がいいかもしれないな」
誠は受け入れた。