#19 完成、そして出発
「ふーっ」
美郷は額に滲んでた汗を右腕で拭った。
「出来た……。今度はより正確に戻れるように出来ているはず」
美郷は部屋を出た。
「…あれ?皆はどこに?」
部屋に誰もおず、廊下に出ても誰もいなかった。
「どこかの部屋に?…えーっと電話、電話っと」
美郷はポケットから携帯電話を取り出した。
「…あれ?誰にかければ?とりあえず……」
どこかへ電話をかけた。
「あっ、もしもし?香澄ちゃん?今病院?」
香澄に電話をかけた。
「…あっ、そうなんだ。うん、わかった」
どうやら香澄が迎えに行くということだったのでそのまま廊下で待つことにした。
「美郷さん」
香澄がやってきた。
そのまま香澄の案内で誠達がいる部屋に向かう。
「出来たのか?」
誠が美郷を見るとまずそう聞いた。
「出来たよ、はい」
「…ん?俺が持つの?」
「いや?見せただけ」
「はいはい、それね」
誠は少し恥ずかしかった。
「で?どうするの?」
美郷が誠に問いかける。
「研究所の所長が変わる少し前に行きたい」
「わかった、皆もそれでいいの?詳しいこと何にも知らないんだけど…」
香澄、龍牙、尊達を見回すと頷いていたので、誠に改めて問いかけた。
「研究所の所長が変わってから色々とおかしくなってるんじゃないか?と思ってる」
「おかしいって何が?」
「おかしい法律多くないか?って話」
「あぁ、それね。研究所の技術を使って誰かが過去に戻って変えたって事?」
「そういうこと、ちなみに美郷は以前の所長は知っているか?」
「もちろん、覚えてるよ。私に色々と教えてくれた人だから」
「今どこにいるかは?」
「…それは知らない。誰に聞いてもわからないって言われてたから」
「香澄もそう言ってたんだ、でもそれっておかしくないか?組織のトップが変わったのに誰も理由がわからないなんて」
「そうよね、…まこっちゃんの考えは?」
「まぁ単純に考えると殺されたのかなと。だから香澄と尊、龍牙にも来てもらおうと考えている」
「じゃあ五人で戻るのね」
「そうだな、頼む」
「それで?いつ行くの?」
「美郷待ちだったから美郷が行けるならもう皆は準備は出来てるからいつでも」
「わかったわ、それじゃ早速行きましょうか」
美郷はポケットから懐中時計を取り出した。
それは以前持っていたものと同じデザインの物だった。
「あれ?同じものか?」
「使い慣れてる方がいいからね、でも性能は上がっているからもっと正確に戻れるよ。それこそ前にまこっちゃんが言ってた数分後にも行けるようになってる」
「おぉ!それじゃ微調整しながら未来を変えられるじゃないか」
「そういうこと、それじゃ行きましょう。皆、手を繋いで」
美郷が懐中時計を操作すると五人はその場から姿を消した。
部屋に残った香弥子は夕子に
「さて、私は何も見なかった。いいわね?」
「はい、私も何も見ていないので」
「ふふっ」
「それじゃ官邸に戻りましょうか」
「そうね、何か変化があるといいのだけれど。って言ってもその変化がわからないのがなんか悔しいわよね」
そう言いながら部屋を出た香弥子は官邸に向かった。