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第七話 雄叫び

 麗羅と別れた三人は、兵士に案内され城の中を歩く。



「き、綺麗なお城……私、本当に姫になった気分だわ……」


「本当は平民だったのか……」



 ボソッと、拓真は呟いてしまった。

 真姫は、微かに聞こえた言葉に反応する。



「あ? なんか言ったぁ?」


「いいえ、なにも言ってないです!」


「今日も仲良しだね」



 ベラは、ニコニコしながら後ろから水を差す。



「……あんた、着いてきて良かったわけ?」


「勿論! 身近で見ていないと、ですよ!」



 戦闘時、ちゃんと連携出来ていた事が驚く程に今の三人の歩幅はバラバラだった。

 緊張もまた然り、警戒心など無かったのが理由だろう。


 何故なら、沢山の綺麗な花が城中に咲いており、どの花の匂いなのかも分からないほどに充満した良い自然な香り。


 そして、奥の王座に見えた若い男の格好が……変人そのものだった。



「え、な、何あの変な格好……」


「しっ! き、聞こえるだろ!」


「お二人共、落ち着いて下さい……」



 王座で腕を組み、前かがみになっている男が突如、大きな声を出した。



「よぉくきた!」



 麗羅の言っていた、



「王様ですか……? あぁ……よく分からない方ですよ! 物凄く優しいですけどね!」



 その言葉が鮮明に蘇る。



「初っ端からやばいの引き当てた気がする……」


「私こそ!永遠の花園(バリーフラーワ)を統べる者……

 フローダル・バンクシューだ!」



 片足の膝を付き、頭を下げた二人を見て咄嗟に僕も真似をした。



「ベリオ・スペーラ。業火の国(フレイニア)からヒューを養成する為共に参った者です」


「お前は名乗らんでもわかるわ!」


「はっ! お久しぶりでございます」


「……後ろの二人が、例の者か。にしても、二人とは珍しいな」


「今までに無かった事態です……」



 王座から降りてきたバンクシューは、三人に向かって言った。



「――あ、そんな格好せんでいいぞ! 楽にしてくれ!」


「あ、ありがとうございます!」


「礼など要らんさ!」



 頭を下げた僕達に、いや本気で楽にしていいから! と、優しい言葉をくれた。



「ここに来た理由は……やはり?」


「王の血筋の儀式です!」


「ふむ、火の儀式は済ませてあるようだな。ラディのちんちくりんは元気にしてるか?」


「ち、ちんちくりん……」


「元気にしてますよ!」



 なら良かった……と零したバンクシューは、真姫を見やる。



「さて、身だしなみを馬鹿にした件についてだが……」


「ほんっとうに、申し訳ございませんでしたぁ!!」



 凄まじい速さで真姫は土下座する。

 冗談だっつうの!! とツッコミを入れるバンクシューは涙目になりながら笑った。



「それにしても……バンクシュー様、本日は街に数多くの兵士がおられましたが、何か不安事でも……?」


「あぁ、大きな事にならんといいんだが……最近、少数ではあるが魔物と山賊が攻め入って来た」



 山賊、と言う言葉に僕は反応してしまった。二人も同じようだった。



「ん? 心当たりが?」


「はい、先日国に着く直前、森の中で彼らと接敵しまして……同じ山賊なら、情報提供をと」


「ほぉ! それは助かる。という事は東面の山か」


「そうなりますね。攻め入ってきた……となると、最悪の事態に備えて、ということですか?」


「あぁ。もし大勢で来られては間に合わんからな。魔獣や魔物を連れている、言わば……」



 魔族。と、ベラとバンクシューは声を合わせて言った。




「――だから急ぎたい。早速始めよう! 儀式の開始と行こうじゃないか! 花の儀式……、それは、信じる事だ」



 その言葉と共に景色が変わる。

 拓真と真姫は、お互い別の空間に転移した。



「ここは……どこよ?」



 ベラ! 拓真! と真姫は叫ぶ。

 誰も居ないらしいこの空間が、儀式なのだろうと気付いた。


 だが、目の前に現れた金髪の美人が真姫に謎の問いかけをする。



「私は小野蔵真姫よ! 未来の姿! こう言われて信用できるかしら?」


「当たり前じゃない! 私可愛いもん! それくらい綺麗になって当然よ!」



 そう言った瞬間、景色が元に戻った。



「な、何!? これは新記録では!?」



 突如としてベラとバンクシューの姿が見えた。



「え?」


「姫!!」


「……は、早すぎる」


「いや、一分くらいの出来事でしょ……?」



 真姫は外の景色が暗いことに違和感を覚える。



「本当にそんなに時間が経ってるの……?」


「ベラ! 凄いのを連れてきたなこれは!」


「拓真は……」



 座ったままピクリとも動かない拓真を見て、あ、まだ終わってない。そう確信した。



「兵士よ! 浴場まで案内してやれ!」


「はっ!!」


「え!?」


「汗をかいていますよ! 三日近くそこに居たんです。お風呂に入ってきては?」


「拓真は……」


「安心してください! 私達が見守っていますので……」



 真姫は案内され浴場へと向かう。


 また、真姫同様、拓真の前には、過去の自分が立っていた。



「何度も言う。我は貴様の過去だ」


「うっ……嘘だ! そんな訳無い!」


「信じられんか。己自身を」


「信じてたまるか……ありえないからな!!」


「ならば、成長はできぬ」



 過去の拓真は呆れた顔で言った。



「信じられんか。この国が、絶望で満ちることを」


「信じてたまるか!!」


「ならば――」







 無名(ネームレス)本拠地



「お前ら! 準備は出来たか!」



 魔軍を率いるボス、レビスが叫ぶと、魔軍全員が声を張り上げた。



「遂に、決戦の日ね」


「待ちに待った……今日を終えればまた一歩、カノクマ様復活の時が近付く。魔族はこの世界をも手にする……全ての世界を統一した時、真の王が決まるだろう……」


「覇王が居ないこの世界なら、簡単に落とせるわ」


「カノクマ様を復活させなければ意味が無い。探し出さなばならん……器を、必ずどこかに隠しているはず。カノクマ様ならな……」



「ええそうね! まずは一つずつ探っていきま――」



 ミナールとの会話を遮るように、一人の魔人が走ってくる。



「――ボ、ボス! 大変です! 大勢の兵士達がっ! 本拠地に近付いて来てますッ……!!」


「ちっ、勘付かれたか。はたまた、誰か裏切ったか……」


「数日前の例の子供達では?」


「まぁ、なんでもいいが……全員! 詰めて来た奴らを返り討ちにしろ! そのまま……攻め入るぞ!」


 予定より早まった攻め入りに、一同は焦る事なく雄叫びをあげた。



「待っとけ……フローダル・バンクシュー!」







「あれから一週間、あのままなのに大丈夫なの……?」



 真姫は心配そうに拓真を眺める。

 永遠の王、フローダル・バンクシューはそんな真姫に言った。


「大丈夫さ。一番長くて、二週間と三日だった子も居る。まぁ、その子は少し特殊な子だったが……彼もまた、特殊なのかもしれないな」


「……心配せず待ちましょう、姫」


「だって、呼吸だけで飲まず食わずよ?」


「栄養なら、花の力で賄えてるんだ。ほら、だから安心して新技の練習でもしてな!」



 真姫はコクリと頷いた。



「ベラ! 行くわよ!」


「はい! ……それではまた、部屋をお借り致しますね」


「あぁ、好きに使ってくれー!」



 修行部屋に向かおうとする二人と、すれ違うように焦って走ってきた兵士の一言で、城内が騒然とする。



「で、伝令ですッ!!」


「どうした? お前らしくないな」


「山賊のアジトを見つけ出し、突撃した八団の全員が……山賊によって……こ、殺されましたッ……!」


「どう言う事だ!!?」


「尚……山賊側は、五百程の人数と、六百程の魔獣を連れて、国に進行して来ています!!」


「だ、大丈夫なの!?」


「……まずい事態だな……真姫、ベラ。拓真を無理矢理にでも起こせ。そしてこの国から逃げろ!」



 焦り兵に司令する王を横目に、二人は拓真を強く揺する。



「拓真起きなさい! 拓真!」



 ピクリともしない拓真の顔は、歯を食いしばったまま変わらない。


「っ! 起きなさいよっ!」



 パチンっと騒がしい城内に、真姫のビンタの音が響く。

 驚いた顔をするバンクシューとベラ。周りの兵士には振り向く者も居た程だった。


 しかし、赤く腫れた顔とは裏腹に、拓真はピクリとも反応しない。



「――戦争が起きる。嫌かもしれないが、二人だけでも逃げなさい。拓真の事は、命に変えてでも守ろう……」


「何言ってんの!! 王様はここで待ってて!」


「え!? それはできな――」


「――ベラ! 行くわよ。この国を、花を……人を、麗羅と拓真を、助ける為に」



 バンクシューはまた驚かされてしまった。



「君達は一体……いや、くれぐれも! 拓真が悲しむ事が無いように!!」


「えぇ。拓真は任せたわ……ほんっと! 起きないバカ!」


「姫……準備はよろしいですか?」


「行くわよ! ……拓真、あんたは気にせず続けなさい……」



 真姫とベラは歩いて行く

 誰も気付かない。拓真の顔が少し、笑っている事に。




 慌ただしい街中で、永遠の花園(バリーフラーワ)に残っていた神田虎雄は、走る兵士に声をかけた。


「すまない! 俺は黄雷の国(プペルニア)の王から駆り出された勇者だ! 何があった!? 状況を説明してくれ!!」


「ゆ、勇者様!? は、話は聞いています! 力をお貸しください!」


「どうした!?」


「森にアジトを持っていた山賊が国に攻撃を仕掛けて来ました!! しかも! その山賊は……魔族だと判明しました……」


「魔族だと!? 何処だ! 教えろ!」


「着いてきてください!」



 話している時、国の遥東側で爆発音が鳴り響いた。



「あそこかっ…!」


「ゆ、勇者様! お待ちをっ!」



 兵士の言葉も聞かぬまま、虎雄は人間ではない程の速度で飛んで消える。



「魔獣か!!」



 大勢の魔獣を見かけた虎雄は、即座に攻撃に出る。



「式等級式刀百二式、抜刀!」


「グラァォォ!」


「魔獣風情がしゃしゃるな! 雷鳴ッ」



 式刀が雷を纏う、鞘から漏れる雷は、まるで大きなハンマーの様な形になって行く。



「ミョルニル!!!」



 虎雄が持つ刀から青白く光る雷が、大勢の魔獣に降りかかる。その轟音は国中を駆け巡った。


 広間一帯が焼け野原になり、魔獣は跡形も無く消え去った。



「爆発音はまだ先か。魔王復活……まさか、もう……?」



 魔王が復活したのかもしれない。その焦りが虎雄のスピードを更に上げる。

 目の前に見えてきた少女と男の二人組の前に居る沢山の魔族に向かって、雷の如く降り立つ。



「雷鳴ッ……雷神の怒槌(トール・レッジ)!!」







 城を出て直ぐに麗羅が駆け寄ってきた。



「無事ですか!? 三人とも!!」


「私達は大丈夫! 拓真は……まだまだ戻って来れないみたい」


「長引いてるんですね……私と、一緒だ」


「麗羅こそ大丈夫だったの!!?」


「はい……私達は城に近い中央街なので大丈夫ですが、東門……真姫さん達が入ってきたと言っていた側は悲惨な状況みたいです……!!」



 関係の無いお二人はお逃げ下さいと、麗羅は真姫達の手を引っ張りながら言った。



「そんな訳にはいかない! 拓真はまだ中に居るの!」


「王様に任せるべきです!!」


「だ、か、ら!!」



 麗羅の手を振りほどき真姫は麗羅の肩を持ち言い放つ。



「私達は戦うわ! 麗羅こそ避難して! ベラ! 行くわよ!!」



 突然の言葉に麗羅は固まる。



「ダメです! 危険すぎます!」


「安心してください麗羅さん! ……姫は、修行し着実に強くなっています」


「そうよ! この件が終わり次第、また合流しましょう!!」



 麗羅は何も言えずに、走っていく二人に手を伸ばした。

 届かない手は宙を掴み、二人を止められなかった。



「折角出来た友人を……失いたくない……ッ」



 麗羅は少し考えた後、覚悟を決め走り出した。

 爆発音の鳴る方角へ――



 真姫とベラは、走りながら目の前に現れた魔獣に驚く。



「何あれ!? めちゃくちゃ大きな犬みたいなのいるんだけど!!」


「姫……あれは魔獣です!! 一筋縄じゃいかないですよ!!」


「まぁいいわ!! 試してみるべきよね! 合わせなさいよ! ベラ!!」


「はい!!」



 まずは……と、真姫は異能を使う。



「守備!」



 光が二人を包む。



「桃火炎!!」



 淡いピンク色の火柱が、二体の魔獣を焼き焦がす。

 すかさずベラが前に出る。


「このナイフは猛毒を塗ってあります! 魔獣でも……殺せる!!」



 数本のナイフをベラが放つ。

 五体近くの魔獣にナイフが刺さると、すぐさま魔獣は苦しむ様に倒れ、静かになって行く。


「即効性の猛毒です……間違えても姫は触らないように」


「そんなこと言う暇があったらどんどん投げなさい!!」



 真姫は手馴れた速度で、火の能力を使っていく。



「二個目のシュビ……手火のおかげで、火の能力が扱いやすくて快適だわ! もっと早く気付くべきだった!!」


「あの日よりも圧倒的に効率の良い攻撃ばかりですね!」


「ふん! ベラ! あんたも投げ方カッコよくなってんじゃない!?」



 攻防一体の二人は喋りながら、どんどん前へと進む。



「まだ三個目のシュビは使うまでも無さそうね!」


「まだ完成している訳ではありません!極力使わずに行きましょう!!」



 魔獣の数が減ってきた――そう思った瞬間、魔人が一気に襲いかかって来た。



「――くっ!? 危ないッ!!」



 咄嗟に下がるベラ。しかし大きな一撃を受けた真姫は転がって行く。



「――っ!」


「姫!!?」


「流石に痛いわね……ベラ! 安心して! 少し怪我したくらい!」



 ベラが駆け寄り、真姫は立ち上がろうとする。

 しかし足を狙われ、更に怪我を重ねてしまい力が入らない。



「――っ! 最悪っ!」



 ジリジリと、魔人達は近付いてくる。

 まずい、戦えない――思った時、真上から雷が落ちてきた。


 周囲の魔人を一掃し、雷の中から男が現れる。



「だ、誰よ!?」


「大丈夫か? 間に合って良かった」



 戦闘態勢にベラは入る。



「か、勘違いしないでくれ! 俺は黄雷の国(プペルニア)からやって来た勇者だ。ピンチに見えたから助けさせてもらった!!」


「勇者!? この世界勇者とか居るの!?」


「魔王復活の時現れると、何百年も前から予言されていた勇者!?」


「よく知ってるな……そうさ、俺は神田虎雄。よろしく」


「私は真姫! こっちはベラよ!」


「二人ともよろしく。……とりあえず、ここ一帯を片付けようか。お嬢さんは怪我してるんだろ? 休んでな!!」


「姫! 休んでいてください!」


「嫌よ私も行くわ!」



 言い争っていると、後ろから魔獣が大勢走ってくる。

 そして、その前には一人の少女の姿が……



「れ、麗羅!?」


「た、助けてぇぇぇ!!」


「ベラさん……行けるか?」


「えぇ、勿論!!」



 毒入りナイフを投げたベラ。そして虎雄がそのナイフに雷を纏わせる。雷光が素早く魔獣を射止める。そして、ナイフからナイフへ雷が渡る。



「ヘイチャルド・ボルト!!」



 またしても魔獣を一掃した…



「麗羅!!」



 真姫の元へ駆け寄ってきた麗羅は、真姫を抱きしめる。



「な、何しに来たのよ!」


「ここは私の国です……一緒に戦います! 敵を倒す事は出来ないけど……こんな事なら出来るんです!」



 そう言うと真姫の傷が光り出す。



「花達よ……力を貸して!」



 花の能力により、みるみる傷が治っていく。



「麗羅……ちゃんと後ろを着いてくるのよ? 一緒に戦いましょう!」


「ヒーラーは大切だな……俺は神田虎雄だ」


「私は園町麗羅です!」


「さて、姫……四人で片付けましょうか。とりあえず、目の前の大群を!!」



 四人の前の大群は、一気に押し寄せてくる。



 ……おかしい……なぜここだけに、これだけの戦力を置く……?


 まさか――!!


 虎雄は城を視界に入れる。



「――しまった……ここは陽動。実力者達は、城に向かってやがった……」



 城の前辺りから、白煙が立ち込める……



「――拓真!!」

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