旭はギルドマスターの要件を聞く
今日で毎日投稿は終わりとなります。
ユミとお昼寝で心身ともにリフレッシュして、お昼ご飯を食べた後の15時頃。
俺達は冒険者ギルドに戻ってきていた。
ギルドマスターが夕方頃に来て欲しいと言っていたからである。
ちなみに今回はギルドマスター室に直接向かっている。
ギルドマスターから許可はもらっているし……問題はないと思う。
関係者用通路を通ってもなにも言われなかったしな。
俺を怖がって何も言わないわけではない……と信じたい。
「おーい、ギルドマスターはいるかー?」
俺はギルドマスター室のドアをノックする。
ノックしないで扉を開けるのはマナー違反だからな。
そこはきっちり守っていきたいところだ。
「おぉ、旭君か。鍵は空いているから中に入ってきてくれ」
「それじゃあ、失礼しますよっと」
ギルドマスターから入室の許可を得た俺達は、部屋の中に入っていった。
部屋の中にはすでに人数分のお茶と沢山のお菓子を用意して、椅子に座っているギルドマスターが迎えてくれた。
「わぁ〜ッ!にぃに!おかしたくさんある!これぜんぶたべてもいいの!?」
「食べてはいいと思うが……ギルドマスターのおじちゃんに食べていいか確認してからにしような」
「わかった!おじちゃん、このおかしたべてもいーい!?」
「お……おじちゃん……。あ、あぁ、もちろん食べて構わないとも。ユミ君が好きなお菓子を食べてくれ」
「やった〜!!」
「ユミちゃん、そんなに慌てなくてもお菓子は逃げないからね!?」
「ユミ、落ち着きなさいな。お兄ちゃん、ギルドマスターの話は私達だと役に立てないかもしれないから、私とレーナはユミの面倒を見てるね」
「なんかお世話を頼んでばかりで悪いな……。よろしく頼む」
ギルドマスターからお菓子を食べていいと言う許可を得たユミは、元気よくテーブルに向かって走り出した。
レーナがその後を慌てて追いかけていき、苦笑を浮かべながらリーアが続いた。
リーアはさりげなく話に集中できるように、ユミの面倒をみてくれるみたいだ。
……うん、ユミのお世話はレーナとリーアに任せるとしよう。
「それで……俺に話したいことがあると言っていたが……何か用事でもあるのか?」
椅子に座った俺は早速本題に入った。
ギルドマスターの表情からして、そこまで深刻な話とは思えないが……妙に気になったからだ。
「あぁ。以前、笹原君との決闘の時に話した内容を覚えているかい?」
「丹奈との決闘の時……?たしか……ウダルの民衆に俺の魔法を披露するってやつだったか?」
俺はギルドマスターの質問に首を傾げながら答える。
確かそんな内容の話をしたはずだ。
マイホームを建てた後に伊吹姫と女神の一件があったから、今の今まで忘れていたのだが……。
「そう、魔法を披露する件についてだ。旭君のマイホームもできた。それに今は面倒ごとが解決した後だし、このタイミングがちょうどいいんじゃないかなと思うんだよ」
「旭さん、確かにギルドマスターの言う通りではないかと。また新たな面倒ごとが起きる前に対処しておいた方がいいと思います」
ギルドマスターの発言にルミアが同意した。
……確かに何もないこのタイミングで魔法を披露しておけば、今後やりやすくなるな……。
最悪、避難勧告を出せば決闘場以外でも魔法を使える可能性は出てくるし……。
あ、もちろん壊してしまったら完全に修復するぞ?
壊したままなのはただの破壊者だからな。
「なるほど、話の内容は理解した。じゃあ、どうやって民衆に披露するかどうかだな。使える魔法も考えないといけないんだろう?」
「話が早くて助かるよ。……私が考えているのは模擬戦をやって実力を知ってもらうことなんだが……。旭君達の意見も聞かせてもらいたい」
ギルドマスターはそう言って俺達の表情を伺ってきた。
それにしても……模擬戦か……。
命の危険がないようにすれば問題はないし、民衆の理解も早いことだろう。
「模擬戦を行うことについては賛成です。ただ、模擬戦をどの規模でやるかにもよるのでは?旭さんや私達の実力はそこら辺の冒険者よりも高いですし……」
[ルミア、それなら私達で模擬戦を行えば良いのでは?大トリは私と旭の模擬戦にすれば……多少なりとも見栄えは良くなるのではないでしょうか?]
「……旭さんと実力が同じソフィアさんならば大惨事になることはないでしょうね。そうなると、他の組み合わせを考えねばなりません」
ギルドマスターの言葉にルミアとソフィアが相談を始めた。
というか……俺達のパーティ内で模擬戦をやることは確定事項なのな。
まぁ、実力的に言ってもそうした方が安全なのは理解できるんだが……。
「それなら俺vsレーナ達5人による模擬戦を1人ずつ行うのはどうだ?俺としてはレーナ達が模擬戦をして、もしものことがあったときの方が心配だし」
俺の言葉にギルドマスターの表情が変わった。
なんだ?何かおかしいことを言ったか?
「旭君のアイデア……いいかもしれないな!それなら旭君がどれほどの実力を持っているか、その嫁達の強さも同時にわかるだろう!なにより……旭君が相手するなら誰も傷つかない可能性が高いというのがいい!」
「お、おう、そうだな……」
ギルドマスターは興奮したように話し続けている。
正直そこまで考えて提案したわけではないんだが……納得しているならそれでいいか。
[旭、その提案だと連戦することになりますが……大丈夫なのですか?]
「まぁ、本気で命の取り合いをするわけじゃないし大丈夫じゃないか?まず本気を出したらこの街が耐えられないだろ?」
[……確かに……そうなのですが……]
心配そうに俺の顔を見てきたソフィアを安心させるように頭を撫でる。
まず俺がレーナ達を傷つけたくないんだ。
当てる前に【聖域】を展開するなどやり方は多様にあるさ。
「……何気なく物騒なことを言わないでくれ……。と、とにかく旭君の意見でことを進めていくことにしよう。……そうなるとどこで模擬戦を行うかだが……これは1つしかないよなぁ」
ギルドマスターはそう言うと、深くため息をついた。
そんなに深くため息をついていると、幸せが逃げてしまうぞ?
「まぁ、決闘場が一番いいかもしれないなぁ……。観戦者が決闘場に入りきらないくらいにきたとしたら……俺の家の近くにコロシアムを作成すればいい。女神がけしかけた男達の襲撃の時にあたり一面を焼き野原にしたから土地は余っているし」
決闘場も広い方だが……ウダルの民衆に披露するとなると心もとないと思うんだよな。
それなら俺の家近くでコロシアムを【クリエイト】した方が手っ取り早いだろう。
そう思っての提案だったんだが……ギルドマスターは違ったようだ。
なぜか呆けた表情を浮かべている。
「え……?ちょっと待ってくれ。旭君、君の【クリエイト】は一軒家が限界じゃなかったのかい?」
どうやら俺の【クリエイト】は一軒家までが限界だと思っていたらしい。
……そういえば、最後に【クリエイト】を見せたのは丹奈との決闘前だったな。
「あぁ、そのことか。今の俺はあらゆるものを創造できるらしい。そうだよな、ソフィア」
[えぇ、女神の一件で旭にも神格が付与されましたからね。付与される前でも豪邸は建造できましたが、今の旭であれば創造できないものはほとんどないと言ってもいいでしょう]
ソフィアはそうドヤ顔でギルドマスターに告げた。
いや、神格が付与されていたのは今知ったんだが。
なんでルミアもうんうんと頷いているの?
もしかして……神格が付与されたのを知らなかったのは……俺だけ……!?
「そ、そうなのか……。一介の人間に神格が付与されている時点で、旭君はもはや人間の枠に入らなくなっているような気もするが……今更だな、うん」
ギルドマスターは一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに納得したような顔になった。
……なんか釈然としないんですけど。
まぁ、これ以上藪蛇を突くこともないので、グッと心のうちに留めることにする。
……俺、ついに神の資格を与えられてしまったんだな……。
「と、とにかくだ。旭君がコロシアムを【クリエイト】できるのであれば、そちらを使った方がいいだろう。模擬戦が終わった後も、旭君達の練習場として使えるだろうしな。じゃあ、決闘場ではなくてコロシアムを創造してもらう形で話を進めていってもいいかい?」
[それで大丈夫でしょう。コロシアムに観客席を設ける場合、席数によっては建物自体を大きくしないといけません。……ギルドマスター、ウダルの街の民衆がどれくらい集まるのかを近日中に知ることはできますか?]
「それに関してはこの後すぐに動くとしよう。旭君達[ROY]の模擬戦となれば、1日で統計できるだはずだ。集計する時間も欲しいところだな……2日後くらいならどうだい?」
[ふむ……冒険者ギルドは思った以上に仕事が早いみたいですね。では、2日後に観戦者の総数の統計をまとめてください。それに応じてコロシアムの大きさを検討します]
俺がぼーっとしている間にソフィアとギルドマスターが話を進めていた。
……なんか規模が大きくなってきたな……。
何も起こらなければいいんだけれど……。
いや、そんなことは思ってはいけない。
そういうのがフラグになるのだから。
「……旭さんも大変ですね。頭撫でてあげましょうか?」
「…………頼む。今はとてつもなく甘えたい気分なんだ」
「ふふ……ご所望であればいつでも甘やかしてあげますからね」
そんなことを考えていると、ルミアが俺の側に寄ってきた。
ソフィアとギルドマスターの2人で話が盛り上がっているので、こちらにやってきたのだろう。
俺は素直にルミアに頭を撫でられることにした。
……ルミアの手はスベスベだから髪を梳く動作だけでも気持ちがいい……。
「ムグッ!?ムグムグムグ!!!ムグイ!!(あぁ!!ルミアお姉さんがパパを甘やかせてる!!ズルイ!!)」
「レーナ、口に食べ物入れたまま喋らないの。ユミが真似しちゃうでしょ?たまにはルミアさんにも譲ってあげなきゃ」
「ムムゥ……」
俺がルミアに癒されていると、その様子を見たレーナがムグムグ言って叫んでいた。
そんなレーナをリーアがたしなめている。
……後で2人にも甘やかされにいくから。
俺は白熱した論議を続けるソフィアとギルドマスターを眺めながら、ルミアに甘えるのであった。
旭はいつの間にやら神格を付与されていたみたいです。
いつ付与されたんだ……。
さて、特別編も終わったので次回からは通常通りの更新に戻ります。
次回の更新は5/6or5/7の予定です。




