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幼女エルフと始める異世界生活  作者: 朝倉翔
第4章
80/199

旭は女神と対峙する

 ソフィアが時空の歪みを確認してから数分後。

 時空の歪みから篠田伊吹姫の姿が見えてきた。


「ゼウス!今のうちにあの歪みに飛び込め!今ならあの女神も油断しているはずだ!!」


『了解しましたぞ!フンヌゥゥゥゥ!』


 ゼウスは妙な掛け声を発しながら時空の歪みに飛び込んでいった。

 飛び込む際に身体を透過させていたのは……伊吹姫の体に触れないようにするためなのだろう。

 ……そんなこと気にしないでもいいのに。

 とにもかくにもこれで、女神をこちらの世界に引きずり込む手はずは整った。

 ……時間稼ぎは任せたぞ、ゼウス。


「……なんで転移ってこんなに眩しいわけ……?……ん?何か聞こえてきたような……」


 俺がゼウスに指示を出していると、伊吹姫が何やら呟き始めた。

 ふむ……女神の転移は光が強烈……と。

 丹奈はそんなこと言っていなかったよな?

 まぁ、どうでもいいことではあるんだけど。

 俺はハーデスに指示を出す。


「ハーデス!ハッキングを開始しろ!目を閉じている今がチャンスだ!ソフィアは俺と一緒に送り返す準備に入れ!」


『了解だ、ご主人!ハッキングはすぐに完了する!』


[旭、私はいつでもいけます!……伊吹姫に【催眠】と【傀儡】のスキルがあるのを確認。ハーデス、そのスキルも使えないようにしておきなさい!]


『Yes,Ma'am!』


 ソフィアは【鑑定眼】を使って伊吹姫に【催眠】と【傀儡】のスキルがあるのを確認したらしい。

 確認してすぐにハーデスに指示を出すのはナイス判断だと言えるだろう。

 それにしても……【催眠】と【傀儡】ねぇ……。

 大方の予想だが、女神が異世界転移記念とか言ってスキルを付与したんだろうな。

 ハーデスがハッキングしていなかったらどうなっていたことやら。

 ……まぁ、【聖断】もあるし、もし俺以外にかけたとしても【完全回復】があるから問題はないんですけれども。


「……ん?旭……!?」


 ソフィアの声が聞こえたのか、今まで閉じていた目をカッと見開くと俺を睨んできた。

 ……なんだ?

 いきなり睨みつけてきて。


「あーたん!そんな小さな子供を侍らせて!……絶対に慰謝料を払わせてやる……!【催眠】のスキルを使用……って使えないじゃない!使えるようにしてくれたんじゃないの!?」


 あーたんって久しぶりに聞いたなぁ……ってそうじゃなくて。

 どうやら伊吹姫は俺がレーナとリーアという天使を侍らせているのが気に障ったようだ。

 ……後ろにはルミアもいるんだが……なぜそっちはスルーした。

 ルミアの猫耳もいいものだろうが。


 ちなみにスキルが使用できないのはハーデスのハッキングが間一髪で間に合ったからだ。

 そんなハーデスは冷や汗を拭う仕草をしている。

 失敗したらソフィアに半殺しにされるからなのかもしれないが……。

 ハーデスって冥府の神だったよな?

 なんであんなに人間味が溢れているんだろう……。


「……久しぶりに会って第一声がそれか……。あのまま付き合っていなくてよかったよ。それとな、この2人は俺の嫁だ。他人の嫁のことを悪く言うのは……人間としてどうかと思うぞ?」


 俺は伊吹姫に向かって冷たく言い放つ。

 いやだってそうだろう?

 こんな可愛らしい天使をみてそんなことが言えるなんて……精神がおかしいとしか思えない。


「いや……あーちゃん。幼女2人に抱きつかれているのを見て、ああいう反応をするのは……至極当然だと思うよ?」


 丹奈があきれた様子で呟いているが……無視だ無視。

 俺に都合の悪いビッチの意見は全部無視すると決めている。

 反論は認めない。


 伊吹姫はそんな丹奈の言葉は聞こえていなかったらしい。

 ……というか視界にも入っていない可能性が高い。

 頑なに俺の横にいるレーナとリーアを見比べているからな。

 ちなみにレーナとリーアの2人は、伊吹姫に対してドヤ顔をしている。

 伊吹姫は【狂愛】の対象にすらならないみたいだ。


 だが……このままだと殴りかかってきそうだな……。

 俺は斜め後ろで控えているルミアに小声で話しかける。


(ルミア、俺に合わせて【空間固定】を発動してくれないか?伊吹姫が動き出す前に拘束しておきたい)


(わかりました。発動のタイミングはどうしますか?)


(伊吹姫が次に言葉を発した時で頼む)


(了解しました)


「嫁!?ついに頭がおかしくなったの!?……1発入れたいのに体が動かない!」


 伊吹姫は俺に殴りかかろうとしてきたが……ルミアと発動タイミングを合わせた【空間固定】の効果で伊吹姫は見えない鎖で拘束される。

 うんうん、タイミングは完璧だったな。

 さすがはルミア。

 完璧超人の元ギルドマスター補佐だっただけはある。


「さて……と。これでソフィアの時間稼ぎもできただろう。それにしても……レーナとリーアは今回【狂愛】を発動させなかったな?ニナの時は発動させたのに……」


 俺は2人にそう問いかける。

 別にヤンデレを発動して嫉妬してほしかった……のも少しはあるが、純粋に疑問に思ったからだ。

 俺の言葉に2人は首を左右対称にこてんと傾げた。

 ……なにその仕草。

 めちゃくちゃかわいいんですけどッ!


「だって……あの伊吹姫って人……わたし達よりもかわいくないし。それでよくパパと付き合うことができたよねぇ……」


「レーナの言う通りだよ。それにお兄ちゃんを裏切っている時点で、嫉妬する気すら起きないし。哀れな人生を送ってきたんだなぁ……、ねぇ、付き合っていた元カレをこんな幼女にとられて悔しい?悔しい?残念、もう私達のものだけど〜!っていう気持ちの方が強いかな」


「…………ッ!なんで幼女2人にそんなこと言われなきゃならないわけッ!?」


 2人の言葉を聞いた伊吹姫は激しく暴れ出す。

 だが、暴れるだけ徒労に終わるのがこの【空間固定】。

 俺ほどの実力がないと抜け出すことすら叶わない禁忌魔法級の拘束魔法なのだから。

 ……まさかレーナとリーアがあんな煽りをするとは思わなかったけれども。


[旭!準備が全て整いました!]


 そんな会話をしていたら、ソフィアから声がかかった。

 ようやく全ての準備が整ったらしい。

 俺は未だにドヤ顔をしているレーナとリーアの頭を撫でつつ……伊吹姫に宣言する。


「……じゃあな。お前が生きるのはこの世界じゃなくて向こうの世界……地球だ。俺のことは完全に忘れて日々の生活を送ってくれや。……【対象記憶消去】を転移後に発動するように調整。そして【紅き鎧】を発動。……ソフィア、力を貸してくれ」


[Yes,My Master。私はいつまでも貴方の側に。……マスターのスキルの同調を開始……完了しました]


 俺は万が一のためにソフィアに助力をお願いする。

 今から使う魔法は【境界転移】だ。

 俺もソフィアも【紅き鎧】を使用しているので、綺麗な赤色が2つ並ぶ。

 スキルを同調したソフィアは俺の今の心情を完全に理解し、いつまでも側にいてくれると言ってくれた。

 ……ソフィアには敵わないなぁ……。


「…………ッ!」


 伊吹姫は俺の顔を見て何かを思い詰めたような表情を浮かべる。

 その表情の裏で思っているのは……後悔なのかそれとも憤怒なのか……俺にはわからない。

 だが……俺のことを完全に忘れてこれからを生きてくれればと思う。

 ……それでまた同じことをしようものなら……それが伊吹姫という人間の今世の生き方なのだろう。

 伊吹姫は俺とソフィアの【長距離転移】の光に包まれて、地球に転移されていった。

 転移した後に【対象記憶消去】が発動するようにしたので、今の出来事を思い出すことはないと思う。


『主!女神を連行してきましたぞ!』


 伊吹姫が転移された後、ゼウスがそういって時空の歪みから戻ってきた。

 その後ろから雁字搦めに縛られた女神が姿を現わす。

 ……こいつが女神なのか……。

 なんか……予想していたよりも残念な感じだなぁ……どこがとは言わないけど。


「え……?え……?ここは……ってなんで旭君がここにいるの!?伊吹姫ちゃんは!?さっき転移させたばかりだよね!?」


 ゼウスに連行されて早々騒がしくなる女神。

 ……いや、本当にうるさい。

 俺は殺意を全開にして女神の前に仁王立ちする。


 ーーーーゴゴゴゴゴゴ。


「……えっと……。なんで私はこっちの世界に引きずり出されたのかなぁ?それで……旭君はなんでそんなに怒ってるの……?私達……初対面だよね……?……グスッ」


 俺の殺意に当てられた女神は途端に涙目になる。

 ……泣き落としでもしようってか?

 それで許されるなら警察なんてものは必要ない。

 ……この世界では警備兵だっけ?まぁ、いいや。


「確かに俺とお前は初対面だな。……でもな、俺がなんでこんなに怒っているのかわからない……だって?……全部お前が原因だろうがっ!」


「ヒィィィ!!」


 俺が怒鳴ると女神はさらに縮こまった。

 正直すぐにでも存在を消滅させたいんだが……レーナとリーアが強く抱きついてきているのでそれができない。

 ……なぜそんなに俺を引き止めるんだ天使達よ。


[旭、一旦落ち着いてください。気持ちは痛いほどわかりますが……このままでは話が進みません。]


 ソフィアはそう言って俺を抱きしめてくれた。

 柔らかい双丘の感触が俺の顔を包み込む。

 ……よし、一旦深呼吸して落ち着くとしよう。

 スーハー……スーハー……。

 深呼吸をするとソフィアからいい匂いがしてくる。

 俺のスキルのはずなのに……こんなにいい匂いがするとは。


[……どうやら落ち着いたみたいですね。っていつまで胸の匂いを嗅いでいるのですかッ]


 俺が落ち着いたのを確認したソフィアは顔を赤くして離れていった。

 ……まだ柔らかい感触を味わっていたかったのだが……それは後で思う存分堪能するとしよう。

 今はこの女神をどうするかを決めなくては。


「……さて、冷静になったところで俺がお前に対して怒っている理由を教えてやろう」


「……グスッ。もしかして……丹奈ちゃんを刺客として送り込んだこと……?確かに旭君が転移してくる5ヶ月前から、旭君に対して有利に立てるように色々と便宜を図ってきたけど……」


 女神は涙声でそんなことを言ってきた。

 ……って、俺は5ヶ月前から転移させられるのが決まっていたのか。

 誰が俺をこの世界に呼んだのやら……まぁ、どうでもいいけど。


「いや、ニナの件は全然関係ない。むしろ弱すぎて話にならなかったくらいだし」


「「……確かにその通りだけど言い方!!……ごめんなさい!無言で【空間固定】をかけないでください!」」


 ……外野がうるさいな。

 俺はルミアとソフィアに目配せをして、丹奈とレンジに【空間固定】を使用してもらった。

 2人は解いてくれだの叫んでいるが……事が終わるまでそのままでいてくれ。

 その方がスムーズに会話を勧められるから。


「……丹奈ちゃんの件じゃない……?そ、それじゃあ……何が原因でそんなに怒っているの……?」


 女神は戸惑いながら俺に尋ねてきた。

 ……そうか、ここまで言っても自覚はないのか。

 ふつふつと湧いてくる殺意と怒りをなんとかレーナとリーアの頭を撫でる事で落ち着かせつつ……女神に言い放つ。


「俺がこんなに怒っている原因はなぁ……!俺が留守にしている間を狙って汚らしい男達にレーナ達3人を襲わせようとした事だ!!レーナなんて男の汚らしい部分を見せつけられたせいで最近元気がないんだぞ!?この落とし前どうつけてくれる!?」


「あ……あー……そういえばそんなことを指示したような覚えもあるような……ないようn「あ゛ぁ゛ッ!?」すみません!愛しい人が寝取られたらどんな反応を見せてくれるか気になってやりましたッ!!!」


 女神はしらばっくれようとしたが、俺の怒気を含んだ声を聞いて本音をすぐに白状した。

 ……やっぱり俺の反応を見るためだけにあんなことをしやがったのか……。

 間一髪で事なきを得たからよかったが……レーナやリーア、ルミアが他の男達に輪姦されていたら……この世界そのものを滅ぼしていたぞ?


「……チッ。話に聞いていた通りだが……俺の反応を見るためだけにこんなことをしでかすなんてな……。さて……この女神どうしてくれようか」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!もう二度とこんなことしないから許してください!」


 女神は雁字搦めに縛られた状態で泣きながら土下座をし始めた。

 ……仮にも神なんだからそんな簡単に頭を下げるなよ……。

 そんな女神を冷めた目で見ていると……レーナがくいくいと服を引っ張ってきた。


「パパ。わたしにいい案があるんだけど……」


 そう言ってレーナは俺に耳打ちをしてくる。

 どうやら今の女神とのやりとりの間にリーアと相談して決めたらしい。

 ……ふむふむ……。

 これなら確かに罰になりそうだな。

 レーナとリーアはかわいい顔をして、たまにエゲツない方法を思いつくから驚きだ。


「……というのはどうかなぁ?」


「うん、俺はいいと思うぞ?ソフィア、俺との感覚を共有しているなら今のレーナの言葉は聞こえたよな?この案についてどう思う?」


[そうですね……。今回の騒動は正直神権を剥奪されてもおかしくないですし……それに比べたらちょうどいい罰でしょう。その後のことは私が神界に連絡を取ります]


 ……ふむ。

 最上級の神ですら相手にならないソフィアがこう言うんだ。

 じゃあ、レーナとリーアの意見で決定だな。


「それでは……女神に対する罰を発表する」


 俺は黒い笑みを浮かべながら、女神を見た。


「……なんか嫌な予感しかしないんだけど……」


 女神が息を飲んで俺の次の言葉を待っている中、丹奈の呆れたような声が空間に響き渡るのだった。

女神は雁字搦めに縛られていましたが、これは旭がゼウスを強化していたからできた事です。

本来のゼウスだと女神と同じくらいだから連行できない可能性もありました。


次回のお話で女神編は終わりになる予定です。

女神は旭からどんな罰を受けるのか……お楽しみに。


さて、次の更新ですが……4/22or23を予定しています。

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