丹奈が旭に伝えたいこと
宣言通り連日更新となります。
レーナ達3人との10日に及ぶ聖戦が終了した後……。
【遅延空間】を解除しようとしたら……ドアの外に丹奈の姿を発見した。
なにやら叫びながらドンドンと空間を叩いている。
「……ねぇ、パパ。あれってパパの元カノ……だよね?」
「……そうだな。【遅延空間】使っているから……向こうからは見えないはずだが……。いつからいたんだ?」
俺とレーナはお互いの顔を見てため息をつく。
いや、本当にいつからいたんだ?
そして……なんでそんなに眠そうな顔をしているんだ?
ーーーー[疑問を感知。どうやら旭が【遅延空間】を使用した時には受付にいたようです。そこで受付嬢とバトルを繰り広げていたようですが……受付嬢は根負けしたようですね]
……なんで叡智さんはその情報を知っているんだ?
そんな疑問を感じたが……まぁ、叡智さんだからな。
【遅延空間】内にいたとしても、外界の情報を得ることなんて容易いことなんだろう。
「……お兄ちゃん、あれどうするの……?」
そんなことを考えていると、リーアが服をくいくいと引っ張ってきた。
ちなみにまだ起きたばかりなので、俺達は全裸姿だ。
今のまま魔法を解除したら……確実に何か言われるだろう。
「……正直無視したいが……そうも言っていられないんだろうなぁ……。よし、服を着てから【遅延空間】を解除しよう」
「そう仰ると思って、ここに全員分の衣服を用意してあります。ほら、レーナさんとリーアさんも。旭さんを惜しむように見つめていないで、早く着替えてくださいな」
ルミアはそう言うと、俺の息子を見つめているレーナとリーアに服を着せ始めた。
その光景に俺も戦闘態勢になるが……流石に自粛するとしよう。
服を着終わった俺達は【遅延空間】を解除して丹奈を出迎えることにした。
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「ようやく入れるようになった!!なんで部屋に結界張ってるわけ!?まさか朝まで入れないなんてっ!」
【遅延空間】を解除した途端、丹奈が激しい剣幕で問い詰めてくる。
結界じゃないんだけどな。
説明が面倒だから何も言わないけど。
それにしても……朝っぱらから叫ぶな。
近所迷惑になるだろうが。
「朝っぱらからうるさい。……というか、何の用だ?俺達には必要以上に関わるなって言わなかったっけ?」
俺の言葉にレーナ達もウンウンと頷いている。
その為の決闘だったしな。
しかし、丹奈はそんなことは関係ないとばかりに叫んでいる。
……というか、なんで1人できているんだ?
あのイケメン達はどうした。
「あーちゃんに関係していることだから警告しにきたんだよ!」
……俺に関係していること?
丹奈はそんな風に言っているが……俺にはなんのことだかわからない。
俺が首を傾げているのを見て、ルミアが丹奈に尋ねる。
「丹奈さん。旭さんはなんのことか分かっていないみたいですが……。どうしたのですか?」
丹奈はようやく話ができると感じたのか、深呼吸を1つしてここにきた理由を話し始めた。
「実は……私をこの世界に転移させた神から連絡が入ってね。なんか、もっと面白い状況にするために、あーちゃんの元カノをもう1人この世界に呼ぶことにしたんだってさ」
「……俺の元カノをもう1人転移させる?それで……名前はわかるのか?」
丹奈を転移させた神は俺のことをなんだと思っているんだ。
元カノと遭遇させて俺の反応を見るのが楽しみってか?
俺の元カノは丹奈を含めて4人だ。
その内の誰かを転移させるのだろうが……
……直接会う機会があったら是非とも痛い目に合わせてやらねば。
「えーっと……確か……篠田伊吹姫って名前だったと思う」
「……なんだと!?それは間違い無いんだろうなっ!?」
丹奈が発した名前を聞いて、俺は思わず丹奈の胸ぐらを掴んでしまう。
それにしても……篠田伊吹姫だと!?
なんでアイツを呼び寄せるんだ!?
自称神とやら……ふざけんじゃねぇぞ……!
「グッ……!?神が言っていたから……!それについては間違い無いと思う……っ!」
「お兄ちゃん、落ち着いて!……【狂愛ノ束縛】!」
「……プハッ。……ハァ……ハァ……」
丹奈の顔が青白くなってきているのを見たリーアが、俺に【狂愛ノ束縛】を使用する。
俺が拘束されたことにより、丹奈の顔色が戻っていく。
拘束された俺は気持ちが落ち着いていくのを感じた。
【狂愛ノ束縛】は俺の愛情の強さによって、拘束の強さが変わる。
それ即ち、向こうの愛情で俺の精神を安定させることにも繋がるのだろう。
……何を言っているのかわからなくなってきた。
「パパ、落ち着いた……?いきなり激昂するなんてどうしたの?」
レーナは俺の頭を撫でながら心配してくれる。
先ほどの状態を見ても引かないとは……肝が座っているというかなんというか……。
今の俺からしたらありがたいことなんだが。
「……あぁ、もう大丈夫だ。リーア、とっさの判断で拘束してくれて助かった。ニナもすまない。あまりの出来事に周りが見えていなかったようだ。詳しい話は中でする。ルミア、朝食を準備してくれないか?俺は……風呂場で頭を冷やしてくる」
「わかりました。すぐに朝食の準備に入りますね。丹奈さん、大丈夫ですか?どうぞ中へ」
「……まぁ、それについてはいいんだけど……。じゃ、じゃあお邪魔します……」
「パパ、私とリーアも一緒に行くよ。1人じゃ色々と考えちゃうでしょ?」
「そうね。お兄ちゃんは私達で存分に癒されるべきだと思う」
ルミアが丹奈を部屋に案内し、レーナとリーアは風呂場に向かう俺の後をトコトコとついてきた。
うん、今の俺に必要なのは癒しだな……。
レーナとリーアの気遣いに感謝しながら、お風呂場に向かった。
まさか周りが見えなくなるほど激昂してしまうとは……反省しないと。
▼
「……またせてすまない」
お風呂場でレーナとリーアによる最上級の癒しを存分に堪能した俺は、先にテーブルについていた丹奈とルミアに一言詫びてから席に着く。
テーブルにはルミアが作った朝食が並べられていた。
本日のメニューはスクランブルエッグとトーストである。
「それはいいんだけど……あーちゃんがあんなに激昂するなんてね。その伊吹姫って子と何があったの?」
丹奈は先ほどのことを気にすることなく、俺に質問してきた。
他の3人も同じ気持ちだったのか、無言で続きを促してくる。
「……俺はこの世界に転移する前、児童売春の疑いをかけられたんだ。まぁ、未成年と交際している時点でアウトなんだが。……で、その時付き合っていた彼女に裏切られてフリーターになった。……で、その時に付き合っていた女が……篠田伊吹姫だ」
「未成年と付き合っていたって……私も付き合っていた当時は高校生だったんですけど」
丹奈がなにやらブツブツ言っているが……無視だ無視。
あの時は丹奈の叔母からの協力もあったしな。
ちなみに俺の言葉を聞いたレーナ達3人はというと……。
「パパを裏切る……?こんなに愛してくれる人滅多にいないのに……!その女は……バカなの……?」
「お兄ちゃんの世界が未成年と付き合うことに対して、かなり厳しいのは知っているけど……。裏切った上にお兄ちゃんの人生を奪うなんて……!信じられない……!」
「確かに旭さんは幼い容姿の娘が好きですが……守備範囲が広いだけでしょう?その女性は……明らかに慰謝料目当てなのでしょうね。……許せません。旭さんにそのような狼藉を働くとは……!」
……3人とも【狂愛】と殺意のオーラを全開にして伊吹姫に対して怒りを燃やしていた。
何気なくルミアにロリコンだと言われた気がする。
これは後でお仕置きをしないといけないな。
年上の女性も好きなのだとその体に分からせてやらねばなるまい。
「……あーちゃんの今の彼女達は、あーちゃん以上に重い愛情を注いでいるんだねぇ」
「俺が重い愛情が好きなのは知っているだろうに。お前は2年目くらいからメンヘラになったけど」
「重い愛情あげるのはいいけど、もらうのはNGなんですー」
……こいつ、開き直りやがった!
俺はレーナ達3人を近くに呼び、丹奈に向き直る。
3人のそれぞれの感触を一度に味わえるのは……至福のひと時だ。
落ち着いて話を進めるためにも必要な行程といえよう。
「……で?伊吹姫はいつ頃転移されてくるんだ?」
俺の言葉に丹奈は空中を見つめて、数秒固まった。
……なにやってんだこいつ。
「……うん、わかった。サプライズで呼ぶつもりだったらしいけど、私がバラしちゃったから2週間後にこのウダルの街へ転移させるってさ。……ちょっと。なにやってんだこいつみたいな視線やめてくれない?あーちゃんが聞いてきたから神に問い合わせたのに」
なんとこいつは現在進行形で神と連絡していたらしい。
なんで神と連絡できるんだ?
あれか。神が自分好みのイケメンだったからか。そうに違いない。
「2週間後か……。よし、ルミア、レーナ、リーア。今日はギルドマスターのところに行く予定だったが……予定変更だ。叡智さんを交えて、伊吹姫が転移されてきたらすぐに送り返せるように作戦会議を行うぞ!」
「「「はい!!」」」
「ちょっと!?」
俺の掛け声に3人は元気に返事を返してくる。
それを聞いて慌てているのは丹奈だ。
……なぜ慌てるんだ?
あいつがこの世界に居つくよりはマシだと思うんだが。
「あーちゃん……送り返すって本気で言ってる!?神が転移させるんだよ!?それに干渉なんてできるわけないじゃない!」
「それを今から話し合うんだろうが。……というか、送り返してやるだけでも優しい方だと思うぞ?今の俺があいつと対面したら確実に殺すだろうし。ラノベもアニメも知らないような奴が転移されたところで、生き残れるはずがない。ほら、そう考えると送り返すのは優しい方だろう?」
「……そう……なのかな?確かに……殺されるよりかは……マシなのかもしれない……?」
俺の言葉に丹奈は首を傾げている。
……付き合っていた当時から思っていたけど、結構ちょろいよなぁ……。
チョロインの丹奈は放置して、ルミア達に指示を出す。
「ルミア、ギルドマスターのところへ行って、今日の予定を延期することを伝えてきてくれ。朝早い時間だが……出勤はしているだろう。レーナとリーアの2人はルミアと一緒に冒険者ギルドに行って、決闘場の使用許可を取ってきてくれ」
「「「了解!!」」しました!」
俺の指示に即座に行動を開始する3人。
うんうん。すぐに行動に移すのは流石だな。
後でご褒美をあげないと。
「……え?……え?行動に移すにしても早すぎない?」
「あぁ、まだ残っていたのね。情報くれたことは感謝する。後は俺達だけでどうにでもなるから、もう帰って大丈夫だぞ」
「えぇ!?私の役目これで終わり!?……久しぶりに抱きたいとか思わないわけ!?……せっかく1人できたのに……」
俺はまだ部屋に残っていた丹奈に帰っても大丈夫ということを伝えたのだが……おかしいことを言い出した。
というか、「抱きたいと思わないわけ」とかどの口が言うんだか……。
付き合っていた当時ならその言葉に負けていたかもしれないが、今の丹奈にそこまでの魅力は感じない。
自分の価値を高く見積もりすぎだ。
「抱きたい?そんなこと思うわけないだろう。大体、イケメンをたくさん侍らせている人間に言われたくはないな。どうしても抱いて欲しいなら、そこの3人を倒せるようになってからにしてくれ」
丹奈はギギギ……と後ろを振り返る。
「……ねぇ?今の貴女にパパは渡さないって前に言ったよね……?1人できたのはパパに抱かれようと思ったからなの……?あまりふざけたことを言っていると……許さないよ……?」
「あんなにイケメンがいるのにお兄ちゃんに抱かれにくるなんて……。私達に勝てない女が何調子に乗ったこと言っているのかな……?」
「……大方の予想ですが。……イケメン達があまりにも粗末なものしか持っていないから、旭さんで欲求不満を満たそうとしにきたのですかね?……そうだとしたら……私も全力で排除せざるを得ませんね……」
外に出かけたと思われる3人がどす黒いオーラを振りまきながら、丹奈を睨んでいた。
まぁ、そうなるよなぁ?
認めた女以外の接触を極度に嫌う3人だ。
こうなることくらい予想がつくだろうに。
「……あはは。冗談に決まってるじゃないですかー。……退散っ!ルミアさんまでヤンデレ化してたら勝てるわけがない!!」
丹奈はピューっと部屋を出て行った。
騒々しいやつだこと……。
「じゃあ、3人とも。先ほど頼んだ件……改めてよろしくな」
俺の言葉を聞いた3人はそれぞれに口付けを交わして、今度こそ冒険者ギルドへ向かって行った。
……さて、俺の方もどうするか対策を考えるとしよう。
温くなったコーヒーを飲みながら、俺は叡智さんと相談を始めるのであった。
遂に旭の過去が明らかに!?
……と思ったらプロローグでそれらしいことを書いていたりします。
さて、次回のお話ですが、フォロワーさんからキャラの身体的特徴等が知りたいとコメントをいただきましたので、キャラ紹介となります。
更新は……3/11を予定してます。
画像を載せる方法も検索しておりますので、楽しみにしてください。
カスタムキャストでの画像となります。
そこはご了承くださいませ。




