旭vs丹奈が侍らせてるイケメン's
俺は丹奈が侍らせているイケメン達に向かって話しかける。
「さて、1戦目は俺達の勝利となったわけだが……2戦目はどうする?棄権するならそれはそれで構わないけど」
俺の言葉にイケメン達は憤慨する。
「誰が棄権なんてするか!ニナとレンジは負けてしまったが、人数だけで見れば1対8だ!数の有利は変わらない!」
「カイルの言う通りだ!いくらチートじみた人間と言えども、人数の不利は滅多なことでは覆らない!僕達は勝負を受けるぞ!」
ふむ、あの光景を見ても戦意は喪失していないようだ。
まぁ、リーアが使った戦術は人海戦術だから尚更なのかもしれない。
イケメン達はこちらが有利だ!と言わんばかりに高らかに叫んでいる。
俺も【魔力分身】が使えるとは知らずに。
俺はイケメン達の言葉を聞いて、丹奈に向き直る。
「ニナのパーティメンバーはあんな風に言っているが……いいのか?今ならまだ慈悲を与えてやれるぞ?」
「……ああなったら止まらないよ……。個人的には勝てるはずがないから……もう勝負から降りたいんだけどね」
「仕方がない連中だな……。レーナ、リーア。お前達はあんな風にならないでくれよ?ヤンデレよりもタチが悪い」
「パパ……流石にわたし達でもあんな風にはならないよ」
「レーナの言う通りだよ、お兄ちゃん。私達はあんな風になる前にお兄ちゃんが止めてくれるもの」
レーナとリーアは心外だと言わんばかりに俺の服を引っ張ってくる。
ぷりぷりと怒る2人も可愛いな。
たまにこう言う表情されると、とても愛おしくなるから不思議だ。
そんなレーナとリーアの頭を撫でつつ、俺はイケメン達に告げる。
「じゃあ、2戦目も続行ということで。もう取り消しはできないからな?」
「しつこいぞ!男に二言はないわ!」
俺の言葉に騎士っぽい男が叫ぶ。
……名前はなんだっけ?
名乗っていなかった気もするから、騎士と呼ぶことにしよう。
……名前が雑じゃないかって?
男の名前なんてどうでもいいだろ?
「男に二言はない……ね。はい、言質取りました。じゃあ、勝負を開始しよう」
俺はそう宣言して、レーナとリーアを安全圏に移動させるために魔法を発動させる。
「【魔力分身】。分身体、レーナとリーアを連れてルミアのところまで向かってくれ。ルミアのところに着いたら結界の外で待機。危なくなりそうなら3人を守れ」
俺が魔法で出した分身はコクリと1つ頷くと、レーナとリーアを誘導し始めた。
その様子を見たイケメン2人が顔を青くする。
「ユウ……あれってさっき見たやつだよな……?」
「あぁ……【魔力分身】ってやつだ……。あいつも使えたのか……。ど、どうする!?あいつもあの魔法を使えるなら人数的に不利なのはこちらだぞ!?」
「カイル、ユウ……落ち着け。先程の勝負と今の魔法をみて確信したが、複雑な命令はできないようだ。意思のない分身など恐れるに値しない」
……ほう。
魔法に詳しい男もいるみたいだ。
まぁ、俺の場合は叡智さんがいるから複雑な命令もできたりするんだが。
魔法の分析をしたイケメンの言葉を聞いた2人のイケメンは途端に元気になる。
……関係ないけど、イケメンイケメン言ってて頭が混乱してきた。
イケメンが多すぎるのが悪い。
「じゃあ、開始しようか。ハンデとして最初は攻撃させてやるよ。全力でかかってくるといい」
俺は無詠唱で【魔法吸収】を重ねた【聖域】を展開する。
イケメン達は俺の言葉を挑発だと思ったようだ。
後衛以外の5人がそれぞれ武器を持って向かってくる。
「俺達5人を1人で相手にするってか……?ふざけるなよ!?いくぞ、みんな!時間差で攻撃を開始する!休む暇を与えるな!!」
「「「「「おう!!」」」」」
騎士の言葉を受けて、他のイケメン達が連撃を繰り出してくる。
しかし、その攻撃は全て【聖域】によって阻まれてしまう。
……今展開している【聖域】は【魔法吸収】だけだから、耐久値はそんなに高くないはずなんだけど。
「……クッ!!結界が硬すぎる!5人で攻撃しているのに耐久が減っている感じがしないっ!」
前衛の攻撃が効いていないことを確認した後衛は、前衛に告げる。
「前衛下がれ!!俺達3人の魔法であの結界の耐久を減らす!!その後に攻撃すれば流石に壊れるだろう!」
後衛の言葉を受けた前衛達は即座に戦線を離脱する。
それにしても……距離取りすぎじゃないか?
そんなにフレンドリーファイアが怖いのだろうか?
「「「【魔法威力向上】を使用!」」」
「……全てを飲み込む闇よ……槍に形を変え……かの者を貫け!【ダークネスランス】!」
「……我が望むはかの敵を捕縛する為の紐……魔力を糧に今その姿を現界せん!【貪り喰うもの】!!」
「……今ここに灼熱の暴風を再現する!全てを焼き尽くせ!【炎獄の台風】!!」
イケメン3人の強化された魔法が俺の方に向かってくる。
漆黒の槍、地面から生えた俺を拘束しようとする魔法の紐、俺がダマスク戦で使用した業火の竜巻……。
本来ならば、【貪り喰うもの】で動けなくしてから魔法攻撃を集中させるのが[マスターガーディアン]の方針なのかもしれない。
だが、俺の【聖域】は【魔法吸収】の効果が付与されている。
3人の放った魔法は俺に届くことなく、【聖域】に吸収されてしまった。
……というか、先程レーナの攻撃を吸収したのを見ていなかったのだろうか?
「……な!?魔法が吸収された!?なにがどうなっていやがる!」
「あの結界は魔法を反射するだけじゃないのか!?複数の効果を反映させることができるなんて聞いたことがないぞ!?」
俺の【聖域】が魔法を吸収したのを見て、絶句しているイケメン達。
……どうやら本当に先程の光景を見ていなかったらしい。
いや、あの凄い音で見ていないとか……何をしていたんだ?
「さっき私とレンジが負けた後のあーちゃんとレーナちゃんのやり取りを見ていなかったの!?何をしていたの!!」
丹奈もイケメン達の言葉を聞いて、疑問に思っていたようだ。
というか、レンジに取り押さえられながら叫んでいる。
身長が150cmしかない丹奈がレンジに全力で取り押さえられているのは……なんか違和感あるな。
「い……いや……。ニナとレンジが負けたから作戦会議を……だな。集中する為にグランに防音魔法を使用してもらっていたから音も聞こえなかったんだ……」
騎士が丹奈を必死に説得している。
そりゃそんなことしていれば、【魔法吸収】を知らなくても仕方ないわなぁ……。
俺はそう思ったのだが、丹奈は違ったようだ。
「……バカじゃないの!?ウダルに着く前にあの光景を見たでしょ!?今更作戦会議しても無駄なんだってば!」
……四神の訓練の時のあの攻撃魔法が丹奈達にも見えていたらしい。
まぁ、ルミアの時空間魔法の結界は神霊魔法に耐え切れる耐久度じゃないから、ルミアを責めることはできないんだけどさ。
だから、ルミア。
そんなにプルプルと小刻みに震えないでくれ、怒ってないから。
俺はイケメン達に改めて問いかける。
「さて、俺に攻撃が通じないのは理解していただけたと思うが……。【魔法吸収】の効果を取り除いてやろうか?今のお前達では、一生をかけてもこの1枚を破ることはできないだろうし」
俺の言葉にイケメン達は憤慨する。
「……貴様ッ!俺達に手心を加えるとでも言うのか!?真剣勝負に手加減など……武士の誇りを穢すつもりか!?」
騎士が何やら吠えているが……全く心に響かない。
「その真剣勝負で俺の結界1つ突破できない奴が何を言ってやがる。それに真剣勝負してるのはそちらだけで、俺はまだ本気を出していないんだが」
「……なんだと!?」
「俺はまだ【魔力分身】を戦闘で使用してないし、魔法も禁忌魔法の【聖域】しか使っていない。しかもその【聖域】も付与した効果は【魔法吸収】だけ……。これでどう真剣勝負という括りになるのだろうか?」
俺の言葉に離れたところで観戦していたレーナが呟く。
「パパが本気を出すほどの相手じゃないってことだよね。まぁ、あの程度の実力でパパと対等だと思っている時点でお察しなんだけど」
レーナは本当にイケメン達に対して毒舌だな。
エルフは美男美女らしいから、イケメンだったであろう父親に売られたのが原因だろう。
しかし、離れていたからなのか、レーナの呟きはイケメン達には聞こえなかったようだ。
騎士が俺を睨みつけて叫ぶ。
「ならば!今度はお前が攻撃してくればいいだろう!?本気を出して攻撃をしてくればいい!」
騎士の言葉にそうだそうだ!と勢い付くイケメン達。
俺は【時間遅延】を使用して、騎士の真後ろに移動する。
「本気を出してもいいんだな?この動きについてこれなかったのにそんなことを言うとは……。勇気と蛮勇は違うぞ?」
「……!?いつの間に後ろに!?」
イケメン達はズザザッと後ずさるが、俺はそれを移動する前の位置から見ていた。
すぐに元の位置に戻ったから、イケメン達の反応が遅すぎて心配になるくらいだ。
それにしても……今のはただの警告のつもりだったのだが、予想以上に効果は大きかったらしい。
俺は言葉を続ける。
「じゃあ、この攻撃を俺の結界が破れても立っていられたら、お前達の勝ちとしようじゃないか。臨死体験がしたいなら結界を張らないけど」
俺の言葉に騎士以外のイケメンが顔を青くする。
「わ、分かった!その条件を飲もうじゃないか!」
うんうん。最初からそう素直になってくれればスムーズに話が進むんだよ。
俺は四神に指示を出す。
「四神に告げる。【四獣結界】の天井を解放し、空高く伸ばしてくれ。あの魔法を使う」
俺がそう発した途端、白虎が声を震わせて叫んだ。
『ご主人!まさか……あれをやるつもりか!?』
「白虎……お前が俺の力を見せつけてやれって言ったんだろうが。ウダルの街を壊さないためにも、即座に対応してくれ」
『グ…………!……承知した』
白虎が納得したのを見た他の四神は、白い目を白虎に向けながらも結界を俺の要望通りに変化させていく。
結界の変化を確認した俺は魔法発動の準備に取り掛かる。
「ゼウスとの約束もあるからな……精々死なないように気をつけてくれや。【聖域】をイケメン達周辺に展開」
四神の試練で展開した強化した結界をイケメン達に使用する。
……まったく。
最強の盾と最強の魔法をぶつけるとか……どんな矛盾だよ。
【聖域】が展開されたので、次は攻撃魔法の準備だ。
叡智さん、頼んだよ。
ーーーー[Yes,My Master]
俺の言葉を受けた叡智さんの無機質な声が周囲に響き渡る。
……演出は大事だよね。
ーーーー[対象に【聖域】の展開を確認。これより攻撃シーケンスに移行します。……マスターの所持している各バフスキルの効果の適用開始……All clear。続けて魔法の効果範囲を調整……完了。【赤き鎧】の発動を確認。マスター、攻撃の手順が整いました。いつでも発動可能です]
叡智さんの言葉が終了し、空中からゴゴゴという音が響き渡る。
俺の体は【赤き鎧】の効果で真っ赤に光っている。
「了解した。……さぁ、自分達との力の差をしっかり見極めてくれ。……【災厄ノ流星群】!!」
魔法の発動と同時に前にも見たありえないサイズの隕石が降り注ぐ。
白虎の時とは違い、今回はイケメン達の方に向かっていくため、はたから見たら垂直に隕石が降ってきているというシュールな光景になっているが……。
【災厄ノ流星群】は5分ほど降り続けた。
最後の隕石が【聖域】に当たった瞬間……パキパキと音を立てて結界が消滅する。
最強の盾と最強の魔法の攻防は魔法が勝利を収めたようだ。
「……ゼウス!蘇生準備!」
『……承知ッ!』
俺は念のためにゼウスを近くに呼び寄せる。
煙が晴れた場所には……。
「う……うぅ……」
「くっ……力が……力が入らない……!」
呻き声を上げながらも立ち上がろうとしているイケメン達がいた。
どうやら【聖域】はダメージの吸収をしてから消滅したらしい。
隕石の衝撃で吹き飛ばされたみたいだったが。
俺はため息をつきながらゼウスに指示を出す。
「最悪の事態は避けられたか。ゼウス、【完全回復】をかけてやれ」
ゼウスは俺の指示を受けてイケメン達に回復魔法を使用していく。
戦闘後の後始末をしていると、レーナとリーアが近くに寄ってきた。
「パパ、敵は容赦しないって言ってたけど……なんであのイケメンみたいに殺さなかったの?」
「それは私も思った。どうして?」
レーナとリーアは俺が丹奈の男達を殺さなかったことに疑問を感じているようだった。
見た目は可愛らしい幼女から物騒な台詞が飛び出して、イケメン達は体を震わせている。
俺は苦笑いをして、レーナとリーアの質問に答える。
「あのイケメンは俺と無関係の人間だが……あいつらは丹奈の今の彼氏?だからな。……それにどっかの誰かが俺のことを魔王とか言っているみたいだし」
「「?????」」
俺の言葉に首を傾げるレーナとリーア。
後半の言葉の意味がわかっていないのだろう。
だが……とある人物には届いたんじゃないかな?
俺はそんなことを考えながら、イケメン達を介抱する丹奈の姿を眺め続けた。
イケメンしか出てこなくてゲシュタルト崩壊してきました。
vs丹奈編はこれで終了です。
短いですかね?
……旭が強すぎるのと戦闘描写が苦手なのが原因なのですが……。
作中で旭が言っていたどっかの誰かさんはどれでしょうね(遠い目
さて、次の更新ですが……3/2or3/3を予定しています。
のんびりライフに方向転換できて行ければなぁと思っています。
 




