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幼女エルフと始める異世界生活  作者: 朝倉翔
第8章
168/199

–????の会合―

なんとか当日中に仕上がりました…。

 ーーーー(第三者視点)ーーーー


 とある場所にある大きな部屋、電気の類は付いていないのか部屋は暗黒に満ちている。

 机に置かれているのは少し大きめのロウソクのみで、椅子の数だけロウソクが机に置かれていた。その数は……10個ほどだろうか。

 そのロウソクが灯す光の前は黒いローブを被った者を映し出している。


「……王都マスラオ付近にてウルガルムの繁殖を任せていたヘルハウンドが、何者かに倒されたという報告が入った」


 円形の机の上座に位置する椅子に座っている人物がそう話を切り出した。

 黒いローブのせいでその表情は窺い知れないが、発する声は怒りに震えているようにも思える。

 声色からして男の声だろう。その男と思われる声に周りに座っている者達も騒ぎ始める。


「ヘルハウンドが倒されただと!? あれは我らが大儀式を用いてようやく召喚できた魔物だぞ! 貧弱な人間風情があの魔物を倒せるはずがないだろう!!」


「王都の冒険者ギルドに派遣している偵察役からは、冒険者ギルドも匙を投げているとの報告だったぞ!? その情報は信憑性の高い代物なのか!?」


 声を大にして叫んだ者以外の席からもありえない!! といった声が響き渡っている。

 周りの者の口から出た言葉からお察しかもしれないが、ここは魔人族の領域だ。外は薄暗く、禍々しい色をした植物が周囲に生えていることからも人間が住む世界とは全く違う世界だというのがわかる。

 響谷旭が倒したヘルハウンド率いるウルガルムの群れが討伐された報告を受けた男が、このままではヤバイと緊急会議を開いたのだ。

 旭の情報はいつの間に魔人族のところまで届いたのだろうか……。


「まぁ、まて。一旦落ち着いてほしい。たしかに一番新しい報告ではその情報が正しかった。……だが、1人の冒険者が1日も経たずに殲滅したということらしいのだ。その情報は隠密行動に長けた堕天使から得たもの……。俺としても信じたくはないが……信憑性はかなり高いとみていいだろう」


「堕天使からの情報なら本当なのだろうな……。まさかあのヘルハウンドを倒せる輩が人間側にいるとは思いもせんかったが……」


「だが、人間ならヘルハウンドの【淫夢】を無効化することは不可能なはず。それに加えて、ヘルハウンドは【悪魔のとり憑き】も持っている。その状態で完全に殲滅することはできないと思うのだが」


 堕天使の情報はよほど信憑性が高いのか、男達はどうやってヘルハウンドを倒したのかという話題に切り替わっていく。

 魔人族の男達が気になっているのは、ヘルハウンドの固有特性とスキルをどうやって突破したのかということ。

 人間ならこの2つに対処できないと考えていたからこそ、ヘルハウンドを王都近郊に送り出してウルガルムの繁殖任務を与えた。

 しかし、その2つすら突破した人間がいるというのだ。気にならない方がおかしいというものだろう。


「詳しいことはわからん。……堕天使に詳細を聞こうにもトラウマを抱えているようでな……。人間の冒険者がヘルハウンドとウルガルムを跡形もなく殲滅したということしか情報収集ができないのだ」


「……人間……怖い……。やめろ……くるな……くるなぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「「「「「あの暗殺に長けた堕天使がこんなに怯えているとは!?」」」」」


 男の言葉に周りの者達が別の意味で叫び声をあげた。

 魔人族の中での堕天使は諜報と暗殺に長けた種族だ。その堕天使からの情報ということで敵の認識を改めたのに、まさかの堕天使が人間にトラウマを抱えているという。

 実際に連れてこられた堕天使は顔を真っ青にして小さくなっていた。

 その姿は冒険者が魔人族よりも強大な敵になりかねないことを示している。


「そうなるとますます不可解だ。堕天使は魔人様に使える者。魔人様の恩恵を受けた堕天使の【隠蔽】すら看破するなど……人間に可能なのか?」


「それだけではないぞ。堕天使はステータスもヘルハウンド並みにあったはずだ。そんな存在が手も足も出ないとなると……今の我らで対応できるかどうか……」


 魔人族よりも強いらしい堕天使が手も足も出ず、トラウマを植え付けられた……。

 このことは魔人族にとって大きな衝撃だった。どうすればいいのだ!? といったざわめきが徐々に大きくなっていく。

 もはや魔人族は1人の男を除いて未知なる敵に怯えきっていた。


「えぇい!! 落ち着け、貴様ら!! たしかに人間側の冒険者は……俺らにとって最大の脅威になり得るだろう。だからこそ、この会議を開いたのだ。今後の方針をしっかり話し合う必要がある。今回の事態に先手を打つためにはそうするしかあるまい」


 男の言葉にざわついていた声が静かになった。今更慌てても遅い……だからこそ先手を打てるような対応を考える必要があると思ったようだ。

 そんな中、1人の魔人族がスッと立ち上がった。その人物は筋肉が盛り上がっており、ボディービル顔負けの立派なガタイをしている。


「それでぇ? その冒険者にどう立ち向かうっていうのぉ? ヘルハウンドちゃんや堕天使ちゃんですら手も足も出なかったのよぉ? 並大抵な策じゃ意味がないと思うわぁ」


 バサッとフードを翻した魔人族。その立派なガタイをした姿からは想定できない裏声が響き渡った。

 翻ったフードからはゴスロリ服がチラチラと見えている。

 この男……漢? はそういう人種のようだ。


「それについてはこちらも考えている。魔王様の許諾が降りれば……だがな」


「魔王様の許諾か……。状況をしっかり報告すれば了承してくれるのではないか? オカマなお前m「誰がオカマだゴルァ!? お姉様と呼べと言っているだろうが!! 壁のシミにしてやろうか、あ゛ぁ゛!?」……す、すまなかった、お……お姉様」


 男の言葉に1人の魔人族が反応したが、ものすごい勢いで漢に胸倉を掴まれてしまった。

 どうやらオカマという単語は禁止ワードのようだ。人の性別を差別するのは許さないということなのかもしれない。

 お姉様と呼ばれ直した魔人族は空中でその拘束を解除される。

 ドサっと尻餅をついたが、漢は特に気にしないようだ。


「よろしい。……で? その方法とやらを教えてもらってもいいかしらぁ? 魔王様に許可を取らなければならないほどの案なのでしょぉ?」


「そう話を急かすな……。まず、暗黒勇者という言葉を知っているか?」


「…………」


 漢の問いかけに仕切っている魔人族は肩をすくめる。まるでこれから説明するから待っていろと言わんばかりの対応だ。

 問い詰めた漢もその人物には頭が上がらないのか、何かをいうことなくジッと次の言葉を待っている。


「……流石のお前でも知らなかったか。俺も魔王様から聞いただけなのだが、人間側に勇者召喚という儀式があるように、魔人族にも暗黒勇者を召喚できる儀式があるらしいのだ。勇者と呼ばれる存在であれば、かの冒険者に勝つこともできよう」


「暗黒勇者ねぇ……。そんな存在、歴史の中でも見たことがないのだけれど。……でも、魔王様が仰るならいるのでしょうねぇ。それで……? その儀式とやらは大変なのかしらぁ?」


 漢は腕を組みながら視線で答えを促した。無駄に発達した大胸筋をアピールしているのは……無意識なのだろうか。

 そんな漢の熱い視線をスルーした魔人族は深呼吸をした。


「正直言ってヘルハウンド召喚よりも大掛かりなものになるだろう。なにしろ異世界から勇者となる存在を呼び出すのだ。生半可な魔力で対応できるとは到底思わん。……参謀。現在、召喚の儀式に参加できるほどの魔力を持ったものはどれくらいいる?」


「……ヘルハウンドの召喚時の回復が済んでいないものが多いので、多く見積もっても20人と言ったところでしょうな。20人では足りないのでしょう?」


 参謀と呼ばれた魔人族は眼鏡の汚れを拭きながらそう答えた。

 ヘルハウンドの召喚時に用いた人員は約100名。その時よりも大掛かりな儀式となるとその倍は欲しいところだと思うのだが、実際に動けるのは20名のみ。

 圧倒的に召喚に必要な人員が不足していた。


「そうだな……。どのくらいの魔力が必要かわからない以上、200人以上は欲しいところだ。200人もの人員を集めること自体は可能か?」


「それでしたらなんとかなるかと。ただ、回復のことも考えると……」


「召喚儀式に取り掛かるのに時間がかかってしまうということか」


 男の言葉に参謀がゆっくりと頷いた。魔人族たちは魔力の回復に努めているようだが、回復速度はそれほど早くはない。

 魔力を使い切った状態だと完全回復するのにそれなりの時間を要するのである。


「では今後の予定として……。1つ、魔王様に暗黒勇者の召喚の儀に関する許諾をもらう。2つ、魔力の効率的な回復方法を模索し、一刻でも早く召喚の儀が行えるようにする。3つ、ヘルハウンドを倒した冒険者の素性を調査する。……この3つを主目的として動こうと思うが、何か意見がある者はいるか?」


「「「「「異議なし」」」」」


 男の提案は満場一致で可決された。……というよりも、それしか方法がないのかもしれないが。

 他の魔人族の答えに対し、真剣な面持ちで頷く男。

 魔人族側の今後の方針がスムーズに決まったことに内心ホッとしたようだ。


「俺はこれより魔王様に今回の件を報告してくる。調査に赴く任務にあたるものは追って連絡を行うので、今は魔力の回復に専念してくれ。……では、解散!」


 男はそう言ってどこかに消えてしまった。

 会議を仕切っていた男が消えたと同時に、他の魔人族もその場から忽然と消えていく。

 どうやら転移魔法を使用したようだ。だが、1人だけ残っている者がいた。……漢の魔人族である。


「ヘルハウンドちゃんだけじゃなく、堕天使ちゃんすら圧倒する冒険者……。どんな存在なのかしらね……? 私としては可愛い男の子だと嬉しいのだけどぉ……。あらやだ! 変な気分になってきたわ……! これは……発散しに行かなければならないわねぇ……!!」


 漢はそう言ってどこかに転移していった。

 誰もいなくなった会議室では……トラウマを植え付けられた堕天使だけが残っている。

 ……そんな堕天使の表情に笑みが浮かんでいたのを魔人族は誰も知らない。


 ▼


『ご主人、やはりヘルハウンドは魔人族が召喚したみたいです。それと……魔人族側の動きも判明しました。それについての報告はそちらに向かってから行います』


 俺が王城の会議を聞いていると、突如ハイエンジェルから連絡が入った。

 念のため、ハイエンジェルに【偽装】を施して魔人族の領地まで向かってもらった。

 魔人族達にヘルハウンドを倒したことについての報告を行い、反応を確かめるのが目的だ。

 やはりというかヘルハウンドを召喚したのは魔人族だったようだ。


 それにしても魔人族の動き……?

 なにやら面倒なことになりそうな予感が……。

 だが、魔人族側の動きを知れるのはいいことなのだ。あ、俺じゃなくて主に王都の面々がだぞ?


(そちらからこちらに戻るのはどれくらいの時間がかかる?)


『ご主人から呼び出しがあれば召喚という形ですぐに向かうことはできます。代わりの人材を送っていただければ引き続き偵察できますが……いかがなさいますか?』


 ハイエンジェルの報告を聞くためにはこちらに戻ってきてもらう必要がある。

 しかし、そうなると魔人族側の情報が手に入らなくなる可能性もある。

 なら、ハイエンジェルの案で通すしかないな……。


(わかった、代わりの人材をそちらに送る。お前は【偽装】の効果を維持したまま召喚されてくれ。いいことを思い付いたんだよ)


『ご主人がとても悪い笑みを浮かべているのが想像できます……。では、準備ができたら御呼びください』


 ハイエンジェルはそう言うと念話を終了させた。

 ふと横を見るとソフィアがこちらを見つめているのが見えた。

 どうやら他の者に今のやり取りを説明しろと言いたいようだ。

 俺はため息をつくと、不思議な顔でこちらを見ているセプテム含む使用人と貴族達に説明を開始するのだった。

ついに魔人族が現れました。

旭達に情報が筒抜けとは思ってもないようですが…。


さて、次回の更新ですが…。

帰宅して余力あったら11/10

無理そうなら11/11の更新となります。

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