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幼女エルフと始める異世界生活  作者: 朝倉翔
第7章
130/199

その男、魔神王として降臨する

ーーーー(第三者視点)ーーーー


「お、おい……!なんか様子がおかしくないか……!?」


 1人の男がそう呟いた。面倒だからこの男をAとしよう。

 男Aがいる場所はゴーンが拠点においている場所から10kmほど離れた場所だった。

 目の前では【ロッカ・ゴーレム】と【キマイラ】が敵地に向かって行進を続けている。


「何がおかしいんだ?まだ敵地は見えていないだろう?」


「いや、そうなんだけどさ……。上空にいる天使の数が減っている気がするんだよ」


「はぁ……?あんなにたくさんいた奴らが少なくなってる?目がおかしいんじゃないのか?」


「だったらお前も見てみろ!俺が言ったことが理解できるから!!」


 男Aが近くにいた男Bに双眼鏡を手渡す。

 正直に言ったのに信じてもらえなかったことがよほど悔しかったようだ。

 双眼鏡を受け取った男Bは苦笑しながら男Aに言われた場所を見る。


「……本当に少なくなってるな……。というか、なんか慌てていないか?」


「だろ!?俺の目がおかしいわけではないということがここに今証明された!!」


「ごめんごめん。しかし……どういうことなんだ?向こうの戦力の方が明らかに強いはず……。俺が向こうの立場なら優位な状況を放置してまで引くことはしない。何か策でもあるのか……?」


 男Bは男Aを馬鹿にしたことを軽く謝りながら、目の前の状況を考察する。

 戦力は相手の方が確実に上だ。

 本来ならば格下の相手に背中を見せることなんぞしないだろう。


「……ちょっと聞いてみるか。【高位主天使】、奴らが急に撤退し始めた理由はわかるか?」


『我らにも理由はわからん。いきなり撤退を始めたのだ。……そういえば、何か言っていたな。たしか……[早く撤退しろ!あの方が動かれた!!死にたくない奴は今すぐに拠点の守りを固めろ!!]だったか』


 高圧的な【高位主天使】の言葉を聞いて、男達は首をかしげる。

 そんな危険な存在が近づいてきているのか?と。

 その割には召喚獣達はその数を減らしていないのがきになる。


「ゼウスと旭のエルフ2人はまだ前線で戦っているな。……あの連中はこの状況に気がついていないのか?」


「何が起こっているのかはわからないが、制空権をこちらが確保できるのはいいことじゃないか?【高位主天使】、この好機を逃すな!今ここで攻めれば組長に褒められるぞ!」


『我らを召喚したのはお主ではないだろうに……。なんでそんなに偉そうに命令できるんだか……。まぁ、ゴーン様に召喚された恩は返すがな』


 男Bは未だに首を傾げていたが、男Aは今がチャンスだと言わんばかりに【高位主天使】に命令を下した。

 天使達は男Aに文句を言いながらも、その翼を大きく広げて空中に飛び上がる。

 召喚獣にとって主人の命令は絶対。

 どんな下衆な男であっても、それは揺るがないのである。


「……今が好機なのはわかるんだが、流石に短絡的すぎないか?敵が言っていた『あの方』というのも気になる。もし、あの方というのが……旭なのだとしたらやばいだろ」


「お前は心配性だな……。旭は自分で戦わずに嫁であるエルフを戦わせるような人間だぞ?こんな前線に出てくるわけがないだろ。それに1人で何ができる?こちらには組長が呼び出した召喚獣がたくさんいる。1人でどうにかできる数じゃないさ」


 男Bの言葉を聞いた男Aは馬鹿馬鹿しいと肩をすくめる。

 状況だけ見たら確かにそうだろう。

 だが、データになかった天使やユニコーンよりも大きな獣がいることから旭達も強くなっているはずだ……。

 男Bはそう考えて、一度組長であるゴーンに指示を仰ぎに行こうと立ち上がる。

 その時、近くから声が聞こえてきた。


『ぬ……?【熾天使】達が拠点に戻っていきますな。レーナ嬢、なにがあったか知っておりますか?』


「ん〜?あ、本当だ。わたしは特になにも聞いていないんだよねぇ……。リーアは何か聞いてる?」


「いや、私も聞いてないよ?熾天使とモノケロースが家に戻るってことは何かあったってことなんだろうけど……」


 男Bが振り返ると、5km先に巨大なゼウスとその両肩に乗っかっている幼女のエルフとダークエルフが佇んでいた。

 どうやら向こうも状況を把握できていなかったようだ。

 ゼウスと幼女エルフ2人はこちらの方を見て首を傾げている。


『おい!なにをぼんやりしている!獲物がこちらからやってきてくれたのだぞ!?今すぐに金髪のエルフを捕らえろ!そいつは……旭から奪って俺の愛玩奴隷にするんだからな!』


 突如、近くにやってきた【ジャイアントデススコーピオ】からゴーンの声が響き渡った。

 それと同時に拠点の方からおびただしい数の召喚獣が押し寄せてくる。

 どうやらレーナを捉えるための準備が整ったようだ。


 その数およそ10万弱。

 ゴーンは短い時間でかなりの数を召喚したようだ。

 金髪の幼女エルフ1人に対して、慎重すぎだろうと思わなくもないが……。

 だが、ゼウスの戦闘能力を考えると数が大いに越したことはないのだろう。

 ゼウスの周りと上空を召喚獣が囲んで行く。


「あー……。そういうことか。だから熾天使達が逃げていったんだね」


「ね。でも、わたしをパパから奪うとか……。勇気と無謀は違うと思うんだけどなぁ……」


『レーナ嬢の言う通りですなぁ……。しかしどうされますかな?今のままだと……明らかにやばい状況になると思うのですが』


「……なんであの数の召喚獣に囲まれているのに落ち着いているんだ……?」


 ゴーンの言葉を聞いたレーナとリーア、ゼウスは召喚獣に囲まれながらのんびりと話をしていた。

 その光景をみた男Bは意味がわからない!と首を激しく横に振る。

 普通なら慌てるところだろう!?と叫びたいのかもしれない。


 しかし、レーナとリーアも幼いとはいえ、ダスクの軍勢と戦えるほどの能力を持ち合わせている。

 それに加えて旭と模擬戦をしていることもあり、これくらいでは不利な状況と思っていなかった。

 ……これからくる人物を信用していると言うのもあるかもしれないが。


「……とりあえず、ここにいたらパパの邪魔になるかなぁ。リーアとゼウスさんは先に戻ってて。狙いはわたしみたいだし、わたしは残っていたほうがいいと思うんだ」


「それは流石に頷けないよ?周りにいる召喚獣の詳細わかってる?明らかに催眠術に長けているものがいる。不意打ちで催眠術をかけられたらそれで終わりなんだよ?」


 レーナの言葉にリーアが強い口調でとある召喚獣を指差した。

 リーアが指差した先にいたのは黄色い二足歩行の物体。

 その手には紐にくくりつけられた五円玉がぶら下がっている。

 見たからにロリコンだと感じられる存在だった。

 ムフームフーと危ない吐息をしているところからすでに興奮していることがわかる。


「……うわぁ、あからさまなのがきたね……。というか、あれってパパが持ってるゲームに出てくるスr「レーナ、それ以上言ったらとある所から怒られるわ」……むぅ」


 レーナが黄色い物体を見た感想を言おうとしたが、リーアがセリフを遮って止める。

 それだけその物体が〇〇に似ていたのだろう。


『レーナ嬢、リーア嬢。おふざけはそこまでに。主のオーラが近づいてきています』


 そんな中、ゼウスがレーナとリーアに注意を促した。

 ゼウスとしてはこのまま突っ立ていたら旭に怒られると思ったのだろう。

 近づいてくる旭のオーラには殺意が漏れ出している。

 そんな主人に怒られたくないと言うのがゼウスの本音だった。


「ん〜……。たしかにここで言い争っていても仕方ないか。リーア、パパからの【神絢解放】はまだ大丈夫?」


「うん、まだ効果は残ってるよ。私の場合は分身に戦闘を任せていたからね。どうするの?」


「それはね……ゴニョゴニョ」


「あぁ……なるほど。そういうことね。それならお兄ちゃんも安心かな?」


 レーナはリーアの近くに移動して何事かを耳打ちする。

 それを聞いたリーアは呆れた表情を浮かべながらもレーナの意見に賛同した。


「なんだ……?何を話しているんだ……?」


『動かない今がチャンスだ!本来ならダークエルフは捕縛対象外だったが……今なら2人まとめて捉えることができる!すぐに確保するんだ!!』


 ーーーーウォォォォォォォォォ!!!

 ーーーーデュフフフフフフ!!


 ゴーンの命令を受けた召喚獣達は、雄叫びと気持ち悪い笑い声を上げてゼウスに近づいていく。

 しかし、その歩みは巨大な光によって止まった。

 突如ゼウスに降り注いだ光に眩しそうに後ずさる召喚獣達。


「じゃあ、私達はこれで家に帰るとするわ。でも……私達をお兄ちゃんから奪おうとしたのは失敗だったわね。誰を敵に回したのか……後悔しても……もう遅いか。妖怪にならないように気をつけなさいね」


 光の中からリーアの声が響き渡る。

 その声を聞いたゴーンは慌てて黄色い物体に指示を飛ばした。


『あいつらこの状況から逃げるつもりか!?おい、【ロリーパー】!!あの光の柱に飛びつけ!幼女を確実に捕らえろ!少しくらいなら身体を触っても構わん!』


『『デュフフ!!それは僥倖!!!ちっちゃい女の子バンザーーーーイ!!……グフ!?』』


 ロリーパーと呼ばれた黄色い物体は恐れを抱くこともなく光の柱に飛びついた。

 しかし、その光の柱にはゼウスの姿はなかったらしく、地面に何体も激突していく。


『……あの短期間で逃げただと!?【高位主天使】!上空の包囲はどうした!!』


『主人よ、我らの包囲は完璧だった。あやつらは地下からこの場を脱出したらしい』


『…………ッ!?』


 ゴーンは【高位主天使】の言葉を聞いて絶句する。

 あの光の柱は上空から逃げるためではなく、地面から逃げるためのブラフだったのだ。

 しかし、地面から逃げたのなら【ロリーパー】が地面にぶつかった理由が思いつかないとゴーンは考えているようだ。

 ……正確にはリーアの【影縫い】でゼウスもろとも家に転移しただけなのだが。


『えぇい!すぐに旭の家に向かわせろ!この距離ならすぐに追いつくだろうが!』


 ゴーンがそう命令したと同時に【高位主天使】達が地面に落下してきた。

 男Bは何事だ!?と上空を睨みつける。

 だが、上空には何も見えない。上空から熾天使を落としたと思っていた男達は必死にその姿を探す。


 ーーーーコツコツコツ。


 男AとBが上空に敵を探していると、遠くから足音が聞こえてきた。

 その足音は遠いはずなのにやけにはっきりと聞こえてくる。

 それと同時にとてつもない悪寒を覚えた。


「なんだ……なんなんだよ!この殺気は……!?」


 男Aは得体の知れない殺気に恐怖の声を上げている。

 まだ距離は遠いはずなのに全身から冷や汗が出るほどの殺気を感じ取っていた。

 そんな中、ゆっくりと男の姿が見えてきた。


「……レーナ達は無事に逃げたか。……お前らは……俺の敵か……?敵対する者は……殺すぞ?」


 その男は男Bが予想した旭本人だった。

 旭はゆっくりと歩いてきているが、その手には高位主天使が掴まれている。

 どうやら攻撃しようとしてきた高位主天使の首根っこを掴んでここまで引きずってきたようだ。


 足取りはゆっくりだが、その表情は怒りに満ちている。

 ーーーー鬼神。

 地球にいる旭のリア友がその表情を見たならそう言っただろう。


「……ん?なんか見たことがあるやつがいるな。あぁ、あれがエンペラーデススネークが言っていた催眠術に長けた召喚獣か。……死ね」


 旭が手につかんだ高位主天使を剣としてロリーパーに振るう。

 一瞬の動きに反応ができなかったロリーパーの首は空中に飛び、強制的に送還されていった。

 あまりの出来事に『強羅居組』の面々は空いた口が塞がらないようだ。


 そんな男達をみて旭はもう一度静かに呟いた。


「……で?お前達は俺の敵なのか……?あぁ、名乗るのを忘れていたな。俺は響谷旭【魔神王】としてお前らを冥府に送る者だ」


(((魔神王じゃなくて鬼神だろうが……!!!)))


旭の言葉にゴーンと男達が心の中でそう叫ぶのだった。

魔神王ってなんなんでしょうね?

旭はとてつもなく怒っていますが、恐怖を与えるためにわざとゆっくり歩いています。


さて、次回の更新ですが……。

執筆が間に合ったら8/6。

間に合わなかったら8/8or8/9となります。

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