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幼女エルフと始める異世界生活  作者: 朝倉翔
第7章
129/199

『強羅居組』防衛戦

過去の自分よ……もう少し頑張ろうぜ……。

ーーーー(第三者視点)ーーーー


「えぇい、どうなっている!?なんなのだあいつらは!!!」


 響谷旭の家から数十キロ離れた場所に設営された拠点の中央で『強羅居組』のゴーンは叫んだ。

 その表情には冷や汗がドバドバと流れている。

 ゴーンは高い金をだしてダスクから例のブツを買い取ったのになぜだ!!と言わんばかりに、モニター付きの机をバンバンと叩いていた。


「【高位主天使】に【ロッカ・ゴーレム】、【ジャイアントデススコーピオ】と言った禁忌級の召喚獣を召喚したんだぞ!?旭が使役しているハイエンジェル如きなら簡単に倒せるはずじゃなかったのか!!」


 ゴーンが言っている召喚獣は、ダスクが女神から賜った【魔力に応じて低階級の召喚獣を呼び出す巻物】から召喚されたものだ。

 低階級しか召喚されないはずの巻物からは、禁忌級の存在が召喚されていて戦場を駆け回っている。

 ゴーンの内に秘める魔力が通常の人間よりも多いのが影響しており、上級召喚獣の上位版が呼び出されているのだった。


 ちなみに旭が使役しているハイエンジェルとデススネークは、本来上級に属する召喚獣である。

 ルミアを仲間にする前の旭だったら、ゼウスやナーガ以外には太刀打ちできないにしてもハイエンジェルはまだ倒すことができただろう。

 しかし、今の旭は【眷属強化】でハイエンジェルやゼウスを強化できるばかりか、【眷属躍進化】で一時的に上位の存在に進化させることができる。

 レーナとリーアが仲間になった時点での情報しか持っていない『強羅居組』が驚くのは無理のないことだった。


「おい!あれはなんなんだ!?」


 ゴーンは近くにいる部下に叫ぶ。

 モニターには【高位主天使】2体が旭が召喚したと思われる天使1体に苦戦しているところが映し出されていた。

 それだけではなく、ユニコーンと思われる召喚獣も強化されているのか姿形が変わっている。

 あんなのを相手にどう戦えばいいというのか。


「書物にもあんな召喚獣の記載はありません!!ですが、旭は神話に出てくる神霊魔法を使えるという情報が入ってきています。……恐らくはそれに関連するものではないかと……」


「なんだと!?あれは眉唾物の魔法じゃないのか!?もしそうだとしたら……あいつには絶対に勝てないじことになるぞ!!」


 部下の言葉を聞いたゴーンはガンっと机を叩く。

 かなりの力が入っていたはずなのだが、机は傷一つ付いていない。

 このモニター付きの机も女神がダスクに送った魔道具だから当然といえば当然なのだが。


「組長……どうするのですか?今から降伏でもしますか?」


 部下はおそらく無駄だろうと思いながらも、上司に一つの手を進言してみる。

 ゴーンはグリンと顔をうごがして部下を睨みつけた。

 部下の提案は最終手段にもならないと言わんばかりに机を再び叩く。

 叩いた本人にはそれ以上のダメージがいっているはずなのだが……頭に血が上っているゴーンはそれに気がつかない。


「降伏……!?何をバカなことを言っている!!『強羅居組』の組長たる俺がそんな弱者の真似事なんざできるか!!……待てよ?確か前線には旭の嫁であるエルフ共がでていたな……」


 ゴーンはそう言うとモニターに顔を擦り付ける勢いで画面を眺める。

 ちょうどモニターの画面が切り替わったらしい。

 画面にはゼウスの肩に乗って天使達を支援しながら攻撃をしているレーナと、地面を駆け回るリーアの姿があった。

 レーナとリーアの2人の姿を確認したゴーンは、ニヤリと厭らしい表情を浮かべる。


「やはり前線に出ているじゃねぇか……!旭も自分の嫁を前線に出すなど……バカなことをしたもんだ!おい、俺は今から捕縛用の召喚獣を用意する!魔力回復薬をしこたま持ってこい!!!」


「は、はい!わかりやした!!」


 ゴーンは部下を怒鳴りつけ、その命令を受けた部下は携帯魔道具で他の人員に指示を出しながら慌ただしく場を後にした。

 その姿を見送ったゴーンは、机の上に巻き物を広げながらどんな召喚獣を呼び出すか考え始める。


「捕縛するなら麻痺や睡眠……あぁ、催眠が使えるやつを呼んで旭の目の前で犯すという手もあるか……レーナが乗っているゼウスは……あれはとてもじゃないが勝てないな。あの鎌に触れた途端に召喚獣が消えちまった……。あんなのにどうやって勝てばいいんだよ……」


 ゼウスが振るっている鎌は別名【アダマンティスの鎌】。

 旭が施した【眷属躍進化】で装備されたゼウスの主武器である。

 他にも世界を崩壊させるほどの雷撃を放つ【ケラウノス】も装備していたりするのだが……それをゴーンが知ることはない。


「となると……狙うならリーアの方か。あのダークエルフは前衛に特化した能力を持っていたな。まさかあの奴隷がここまで成り上がるとは思っていなかったが……。こんなことならダマスクに売らないで俺が処女を貰っておけばよかった」


 ゴーンはそんなことを呟きながら、画面上のリーアを舐め回すように眺めた。

 そんなリーアも旭の嫁になったことで、普通のダークエルフとは思えないほどの能力を所有しているのだが……。

 まさか奴隷だった幼女がフルアーマーのゼウスよりも強くなっているなんて誰もが思わないだろう。


「グフフ……。リーアを旭から寝取るのが楽しみでならんな……!おっと、こうしている場合ではない。リーアを俺のものにするための召喚獣を選ばなければ……!」


 グフグフと厭らしい表情を浮かべたまま、ゴーンは巻き物から呼び出す召喚獣の選別を再開した。

 ゴーンの中ではすでにリーアは旭から寝取るのが確定しているようだ。

 催眠術や拘束に特化した召喚獣を選んでは召喚していく。


『…………この下衆が』


 ゴーンの近くでそんな呟きが聞こえてきた。

 ……が、本人はリーアを捉えるための召喚獣を熱心に選んでいるから気がつかない。

 そんなゴーンの姿に蔑む視線を送った姿が見えないソレはここにはいない仲間に連絡を送る。


『……こちら【エンペラーデススネーク】。【デススネーク】……今すぐにこの事を主に伝えろ。問題はないと思うが、今のままではリーア嬢があの腐った肉塊に奪われる。……それだけは確実に阻止するぞ!!』


『『『『任務……了解!!!』』』』


 連絡を受けたデススネークは自らの主人にこの事を伝えるためにゴーンがいる拠点から遠ざかっていった。

 念話を使用してもよかったが、ここには女神が人間に贈った魔道具がたくさん置いてある。

 もしかすると念話を傍受する物が展開されていてもおかしくはない。

 そう考えた上での行動だった。


 仲間に指示を送った【エンペラーデススネーク】なる存在は、再びゴーンを見張る任務に戻る。

 その視線は殺気に満ち溢れていたが、隠蔽魔法でどうにか殺気を押し殺したようだ。

 まさか旭に情報が筒抜けになっているとは思っていないゴーンはひたすら召喚獣を呼び出し続けるのだった。


 ▼


『主……!!』


「……ん?デススネーク達か。神経毒の罠ありがとな。召喚獣が予想以上の強さだったからあまり効果はなかったが、足止めにはなったよ」


 俺はデススネークに感謝の言葉を述べる。

 現在も戦闘は続いているが、前線に来ているのは『強羅居組』が召喚した召喚獣のみだ。

 デススネークの神経毒を恐れて人間達は後ろの方で踏み止まっていたのでお礼を伝えたのだが……。

 どうやらそれどころではないようだ。


「……どうした?そんなに息を切らせるなんてよほどのことがあったのか?」


『え、えぇ……!【エンペラーデススネーク】からの状況報告がありまして……!』


 俺の問いにデススネークは途切れ途切れにそう告げる。

 ちなみに【エンペラーデススネーク】はデススネークの進化個体だ。

 戦闘能力も高いが、「偵察としての役割が大きいので一体だけを対象にしたほうがいい」とソフィアに言われ、【眷属躍進化】の効果が現れているのは一体だけに絞ってある。


「たしかエンペラーデススネークは『強羅居組』の組長を見張らせていましたね。何か動きがあったのですか?」


「熾天使とモノケロースがいる上に、レーナお姉様とリーアお姉様が前線に出ているので何かできるとは思えないのですが……」


 デススネークの言葉にルミアとユミが首を傾げた。

 2人の言う通り、前線には進化した【熾天使】と【モノケロース】は空中からの襲撃に備えている。

 レーナとリーア、ゼウスは地上の敵を殲滅しているから向こうは攻略の仕様がないと思っているんだが。


『えぇ、それについては問題はありません。ですが、『強羅居組』の組長は戦術を変えてきました!捕縛に特化した召喚獣を呼び出して、リーア嬢を誘拐。その後に催眠で主からリーア嬢を寝取る算段をしているのです!!』


 ーーーーピシッ。


 デススネークが俺達に報告した途端、空間にヒビが入った。

 原因は俺なんだけどな。

 ……ヤクザの組長は俺からリーアを寝取るつもりらしい。

 それを聞いた瞬間、どす黒い感情が心の内から溢れ出してきた。


『……ヒッ!』


 無言の俺にデススネークが悲鳴をあげる。

 その巨体を小さくしてガタガタと震えていた。


「なぁ……?『強羅居組』の連中はリーアを狙うつもりなんだな?そして、俺からリーアを寝取る……と」


『は、はい……!た、たしかにそのように聞きました!すでに催眠術に長けた召喚獣を呼び出し始めているみたいです……!!』


 俺は務めて静かにデススネークに確認する。

 デススネークは声を震わせながらもエンペラーデススネークから聞いた情報を旭に報告する。

 その報告を聞いた俺は静かに立ち上がった。


「……旭さん、行くのですね?」


「……あぁ」


「お兄様、私とルミアお姉様も行きますか?向こうの召喚獣は強くても禁忌魔法級でしょうけれども、その数は膨大でしょうし……」


「……いや、俺が1人で行く」


 ルミアとユミが自分も一緒に……!と名乗り上げたが、俺はそれを抱きしめて制止した。

 リーアが狙われている。

 ゼウスに乗っているレーナは大丈夫だろうが、ユミとルミアが前線にでたらターゲットを分散してくるかもしれない。

 これ以上誘拐されるリスクを高くしたくはない。


 俺に抱きしめられたルミアとユミは、俺の考えを理解したのか寂しげな表情を浮かべた。

 2人は俺を強く抱きしめると、惜しむようにその体を離した。

 まるでどんな判断を下しても付いていくと言わんばかりに。

 今の俺にはその気遣いがとても嬉しかった。


「……ソフィア」


[はい、なんですか?]


「今のことはまだリーアとレーナには伝えないでくれ。あの2人には余計な心配をかけたくない」


[それがマスターの命ならば。ですが……無理はしないでくださいよ?]


「わかっているさ。無理だけはしない」


 俺は『大和』にいるソフィアにそう伝えると、モニターの画面を睨みつけた。

 モニターにはエンペラーデススネークが見ている光景が映し出されている。

 そこには『強羅居組』の組長とおびただしい数の召喚獣が溢れていた。


「チッ……。マジで俺からリーアを寝取るつもりでいやがる……。……お前は俺を怒らせた。絶対に許さんからな……」


 俺はそう言って【神威解放】を発動する。

 殺意によって俺の体から溢れるオーラはとても禍々しい。

 今なら全世界の人間を滅ぼせそうな気がするが……対象は『強羅居組』だけだ。


 ーーーー道を誤るな響谷旭。

 この力は関係のない人間の命を奪うものではない。

 無差別に殺したらそれはただの殺人鬼だ。

 俺が手を下すのはただ1人とそれに追随する連中だけだ……。


「敵対してくる『強羅居組』の連中は……潰す」


 ボソリと誰に向けて言うでもなく呟き、【短距離転移】を発動した。

 これから始まるのは防衛戦ではない。

 魔王に喧嘩を売ったものに対する……蹂躙だ。

デススネーク系統が偵察役として適任すぎる件について。

情報を収集するのは戦闘の基本だと考えているので、これからも偵察役として頑張ってもらうことになると思います。


さて、次回の更新ですが……。

8/5or8/6を予定しています。


そろそろ夏コミが近づいてきましたね。

皆さん、回るブースはしっかり網羅しましたか?

私は予算が少ないのであまり回れません……

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