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幼女エルフと始める異世界生活  作者: 朝倉翔
第1章
12/199

旭VSダマスク[前編]

おかしい……この話でダマスク編終わるはずだったのに……。

キリが悪かったのでかなり長めになっています。


※2019/7/16 修正

読者様よりご指摘を頂きましたので、魔物との距離を


テントの周囲半径1m以内→5km以内


人間は5km先→8km先

に編集しました。

時刻は夜。

俺とレーナがテントの中でのんびりと過ごしていたら、ハイエンジェルの一体からテレパシーが入った。


(主、索敵をしていたところ、10km先にてダマスクの手下と思われる集団を発見しました。いかがなさいますか?)


(やはりきたか……。襲ってくるまでは泳がせておこう。敵の戦力はどれほどだ?)


(かしこまりました。敵の戦力ですが、召喚魔法師が20人ほど、それを護衛しているであろう男たちが30人ほどです。おそらく連絡要員も近くにいると思われます。それと……テント付近に偵察と思われる人物が数人おります)


召喚魔法師20人か……一体何体もの魔物を送り込むつもりなのだか。

魔物をけしかけた後にレーナを奪うつもりなのだろう。


俺はハイエンジェルに指示を出す。


(ハイエンジェル隊はテント回りを重点的に警戒。空中適性のある魔物からの襲撃もあるかもしれないから、50体ほどは空中も警戒してくれ。偵察の人間は放置でいい。襲いかかってくれないと色々と手が出せないからな。ただし、偵察の人間に関してはすぐに確保できるように備えておいてくれ)


(かしこまりました。主とお嬢様は私たちが守ります)


そう言って、ハイエンジェル達は自分に与えられた場所に移動を開始する。

俺はそのままデススネーク達にも指示を出す。


(デススネーク隊、聞こえるか?)


(聞こえております、主。いかがなされましたか?)


(ハイエンジェル隊がダマスクの配下を見つけた。デススネーク隊はその集団に接近。召喚魔法師が魔物を召喚して俺たちにけしかけたら、魔法師のみを拘束してほしい。護衛の男達は俺たちのテントに向かうように仕向けて欲しいんだが……できるか?)


俺の質問に対してデススネーク達は自信満々に答える。


(お任せください!我々の全力を持って任務を遂行します!)


(頼んだ。魔法師は最悪仕留めても構わない。人質は護衛の男がいれば問題ないしな。では、敵に見つからないように集団に接近してくれ)


(了解しました!お任せを!)


デススネークに指示も出した。

後はレーナにも情報共有をしないとな。


「レーナ、ダマスクの配下達が動き出した。恐らく俺たちが寝た頃を見計らって魔物をけしかけてくると思う」


「眷属から情報が来たんだね?それでパパ、私たちはどうするの?」


「うーん……。向こうが襲ってくるまでは何もできないから、テントで待機かなぁ」


「えぇ……。パパそれ大丈夫なの……?まぁ、眷属が400もいるから問題はないんだろうけど……」


「まぁ、大丈夫だろう。レーナにも協力してもらうしさ」


「わたしも協力?パパ、わたしに何かできることあるの?」


レーナは自分にできることがあるのかとこてんと首を倒して質問してくる。

俺が全部やってしまってもいいんだが、レーナとの共同作業もしてみたいのだ。

共同作業がしたいというのは恥ずかしくて言えないので、もっともらしい理由を話す。


「レーナには結界みたいな魔法を使って欲しいんだ。光魔法でそういう魔法あったりする?」


「んぅ……。結界となると上級魔法の【聖なる盾(ホーリーシールド)】があるよ?でも、展開できる範囲は狭いけど……」


「このテント周辺に展開できれば大丈夫。それならできそう?」


「うん!このテント周辺くらいなら大丈夫!パパ、【聖なる盾】を使ってどうするの?」


「俺も同じ魔法を展開して、結界の中から近くに寄って来た魔物を俺の禁忌魔法で一掃しようと思ってね」


俺の説明を聞いたレーナは思案顔で何かを考え始める。

【聖なる盾】2枚分で俺の禁忌魔法が防げるか計算しているのだろう。

……レーナって9歳の割には賢いよなぁ。

しかし、俺に甘えてくるときは年齢以下に見えるという……。

そういうギャップもいいよね……。賢い子が甘えるときは全力で甘えてくる……ありだと思います。


「そうだなぁ……。パパは魔法攻撃が高いから【聖なる盾】二枚でも厳しいかも……。【叡智のサポート】さんにそれより上位の魔法がないか聞いてみてもらってもいーい?」


「わかった。えーっと、光魔法の上級魔法d」ーーーー[疑問を確認しました]


おぉう、レーナの話を聞いていたからなのか食い気味に語りかけて来た。

前から思ってたけど、【叡智のサポート】って自我があるのか?固有スキルって書いてあったが……。


ーーーー[解、私に自我はあります。【聖なる盾】よりも上位の魔法として【聖域(サンクトゥアーリウム)】があります。光魔法の中で禁忌魔法に分類されます。禁忌魔法の魔法を一回限り完全防御する効果があります。禁忌魔法以下の魔法は半永久的に防御可能です]


……自我あるんかい。となると、呼び方を変えないといけないかなぁ。

まぁ、それは追い追い考えることにして。

レーナに今得た情報を伝えないと。


「確認して来たよ。【聖域】っていう魔法があるらしい。光の禁忌魔法で、禁忌魔法は一回は完全に防いでくれるらしいぞ」


「聞いたことがない魔法だなぁと思ったら、案の定禁忌魔法なんだねぇ……。パパの基本魔法は禁忌魔法な気がしてきたよぉ」


まぁ、それは仕方ないよね。

全魔法適正あるし、威力高い魔法を使いたくなるのは男のサガじゃないかな。


「それでパパ、結界二枚はどうやって展開する?」


「そうだなぁ……俺の禁忌魔法を防げる【聖域】を外側に展開して、内側にレーナの【聖なる盾】を発動させよう。俺のを内側にしたら結界が無駄になるからね」


「わかった!結界を張る前にこの場所を見えなくしたほうがいいんじゃないかな?結界があると分かったら攻撃してきにくいと思うし」


「よし、ならハイエンジェル達に頼んで目くらましをしてもらうか」


そう言って、俺はハイエンジェル達にテレパシーを送る。


(ハイエンジェル隊、聞こえるか?今から魔法をかけるまでの間、偵察の目を欺いて欲しい。できるか?)


(聞こえております、主。偵察の目をテントから離すのですね。お任せください、ダミーの囮を使います)


ハイエンジェルはそう言うと、偵察の近くに偽物の旭を出現させる。

偵察の男は偽物の旭を追いかけ始める。


(主、うまくいきました。今なら魔法を行使しても問題ないかと思われます)


「よし、レーナ。偵察の目は離れた。一緒に結界を展開するぞ!」


「わかった!」


俺とレーナは2人で光魔法の結界を展開すべく、詠唱を行う。


「ーーーー【聖域(サンクトゥアーリウム)】!」


「ーーーー聖なる神よ、我々のいる場所にその慈悲深き守りの力を授けたまえ……【聖なる盾(ホーリーシールド)】!」


俺は詠唱が必要ないが、レーナは簡単な詠唱を必要とする。

時間差で発動した2つの結界はテントの周辺を覆った。

無色透明なため、側から見たら結界は発動していないように見える。


(ハイエンジェル隊、欺きはもう大丈夫だ。囮をテントの中に入れてから消してくれ)


(かしこまりました。直ちにそちらに戻ります)


数分もしないうちにハイエンジェルが出した偽物の俺がテントの中に入ってくる。

……偽物とはいえ自分の姿を見るのは少しきついな。

すぐ消えた偽物の俺をレーナは悲しげな表情で見ている。

本物がそばにいるんだから、そんな目はしないで欲しい。

偽物が消えた後、寝ていると思わせるためにテントの照明を消す。


(主、偵察の男が照明が消えたことを後方にいる仲間に知らせました。直に魔物の軍勢がやってくると思われます)


(承知した。魔物がテント付近まできたら、ハイエンジェル隊も円錐状になるように結界を展開してくれ。俺の魔法で一掃したいから一匹も逃さないように。俺の魔法は眷属には喰らわないよな?)


(主の魔法であれば、私たちはダメージを受けませんので安心して放ってください)


よかった。自分の眷属に魔法のダメージは無いようだ。

これで心置きなく禁忌魔法を放つことができる。


「レーナ、これから凄惨な状況になると思う。準備はいいか……?」


「パパと一緒だもん!わたしはいつでも大丈夫だよ!」


「よし、作戦開始だ!」




ーーーー第三者視点ーーーー

旭達のテントから照明が消えたことを確認した偵察の男は、召喚魔法師達に連絡を送る。


『こちら偵察班、対象のテントの照明が消えた。睡眠をとっているものと思われる。作戦遂行可能だ』


『了解した。これより魔物の召喚を行う。ダマスク様にも報告を行うように』


『了解した』


偵察の男の報告を受けて、20人もの召喚魔法師が一斉に詠唱を始める。


「「「「我が契約し魔物共よ……今ここに敵対対象を殲滅し、我らにその力の一片を示せ。召喚【ゴブリンキング】!」【オーガ】!」【サイクロプス】!」」


男達の周りに魔物が召喚される。

その数およそ100体ほど。

召喚した魔法師達は魔力の底が尽きたのか、肩で息をしている。

呼び出された魔物はどれも力自慢の魔物ばかりである。

ゴブリンキングとオーガは女に対して陵辱の限りを尽くすのだが、召喚された彼らはレーナに対しての陵辱を禁止されている。

どの魔物も敵として植えつけられた旭に対して、強い殺意を向けている。

召喚魔法師は息も絶え絶えながらも、魔物達に指示を出す。


「「「行け、魔物共よ!響谷旭を殲滅せよ!!!」」」


「「「「ぐぉぉぉぉぉぉ!」」」」


魔物達は一斉にテントに向かって走りだす。

護衛の男達もレーナをダマスクの元へ連れていくために、遅れて走りだす。

召喚魔法師達の近くにも10人ほどの男達が残っている。


魔物と男達が走り出して、姿が見えなくなった途端……。


「……グッ!?か、体が動かん……!?」


「なんだ!?何が起こっている!?」


男達の体は何者かに縛られてかのように動かなくなる。

旭の眷属であるデススネークが命令に従い、男達を拘束したのだ。


(主、召喚魔法師とその他の男を拘束しました)


(よし、拘束したデススネークは保護色を解除。抵抗を見せたら即座に……息の根を止めろ)


主である旭の言葉を受け、保護色を解除するデススネーク達。

いきなり自分の体が巨大な蛇に捕らえられていることを知った男達は、途端にパニックになる。


「なんだ、こいつは!?」


「蛇!?俺たちがこんな巨大な蛇に気づかないなんて!?……ガハッ!?」


1人の男が蛇から脱出しようとした瞬間、デススネークの牙が男に突き刺さり、男は絶命する。


「……こいつ……劇毒を所持していやがる……!」


デススネークが使ったのは、旭達にも見せた【筋肉毒】である。

人間には致死量だったらしく、男は一瞬で絶命してしまった。


自分たちを一瞬で絶命させるほどの毒を持っていることを理解した男達は、大人しく拘束されることにした。

ダマスクの配下とはいえ、自分の命は惜しいのである。

デススネーク達は抵抗されたら息の音を止めろと命令されているので、拘束するのみに留める。

しかし、拘束したまま旭達のテントに向かい始めるデススネーク達。


「こいつら……テントに向かっていやがる!」


「俺たちは人質っていうわけか……。くそっ、まさか旭がこんな眷属を所持しているなんて!」


男達は悔しそうに文句を言うが、姿を見せているデススネークは200体のうち30だけである。

よもやデススネークだけで200体いるとは予想もできないだろう。


そうして、拘束された男達と200体のデススネーク達は旭のいるテントに向かって動き出したのだった。




ーーーー旭視点ーーーー

デススネークから召喚魔法師達の拘束の報告を受けた旭達は、テントの中から外にいる魔物達を見ていた。


「「「「グガァァァァァァ!」」」」


魔物達は力一杯に結界を殴りつけてくるが、禁忌魔法を一度だけとはいえ完全に防ぐ【聖域】にはダメージすら与えることは叶わない。


護衛の男達はテントからだいぶ離れたところからその様子を伺っている。

その後ろにハイエンジェルが控えていることには気づいていないようだ。


(ハイエンジェル、男達の様子はどうだ?)


(なんで攻撃が通らないんだとか、様々なことを抜かしております。聴覚共有を行いますか?)


(頼む。どういう反応をしているのか気になるんでな)


(かしこまりました。音量に注意してください)


男達の背後にいるハイエンジェルと聴覚の共有を行う。

そうすると男達の殺意のこもった声が聞こえてきた。


「くそっ、なんなんだよあの結界は!偵察のやつらからはあんな情報なかったぞ!」


「というより、B〜Aランク級の魔物の攻撃すら通らないってどんな魔法だよ!!」


「どうする!?俺たちも切り込むか!?」


「いや、それはまだ早いだろう。もう少し魔物に結界の耐久値を減らさせたほうがいい!」


いやぁ、慌ててますなぁ。

どんなに攻撃したところで、禁忌魔法じゃないと破れないんだけど。

ハイエンジェルの聴覚共有を切って、新たな指示を出す。


(ハイエンジェル、魔物はテント周辺に集まったか?)


(はい、100体近い魔物はテントの半径5km内に集結しております。人間は8km先で待機しております)


(よし、では作戦の二段階に移行する。100体のハイエンジェルはテントの周囲半径5kmを囲み、男達の侵入を阻む結界を使用してくれ。禁忌魔法が男達に飛び火しないように、俺が強化魔法を付与するから全力で結界を張ってほしい。魔法で魔物を殲滅後、残ったハイエンジェル達は男達を拘束!)


(((かしこまりました。ーーーー天使結界、発動します)))


ハイエンジェルが魔物以外の侵入を阻むように結界を展開する。

展開する前にハイエンジェル達に強化魔法を付与する。

強化魔法の詳細?詳しくはわかりません!

今は【叡智のサポート】に聞く時間もないため、結界の威力を高められるように強化魔法を使用する。


「なんだ今の光は!?」


「おい、なんかテントの近くにも結界が展開されているぞ!?」


「旭のやつ……何しようって言うんだよ!」


「ダマスク様に報告しろ!早く!」


……どうやら今の結界は気づいたみたいだな。

今更ダマスクに報告したところで遅いが。


さて、俺は俺の仕事をしよう。


「パパ、殲滅するって言ってたけど、どんな魔法を使うの?」


「そうだなぁ。結界も張ってあるし、ここは炎魔法の禁忌魔法を試したいところだよね」


「……森全焼しちゃわない?それ……」


「まぁ、結界あるし、結界の中しか燃えないと思うよ。オーガとか再生能力ありそうだし、骨ごと焼却処分しないとね」


「パパ……慈悲のないパパもカッコいい……」


レーナは俺のことはなんでも肯定的に捉えてくれるようだ。

普通ならおかしいと突っ込むところだが……今は好都合だろう。

さて、【叡智のサポート】さんや。炎の禁忌魔法で殲滅できるものはあるかい?


ーーーー[疑問を確認。殲滅魔法となると【地獄の業火(ヘルファイア)】などはどうでしょう?禁忌魔法の殲滅系ではかなりの上位に値します]


お、さすがだな。即答で適している魔法を提示してくれた。

じゃあ、その魔法を使うとしますかね。


(ハイエンジェル隊に告ぐ。これより禁忌魔法【地獄の業火】を発動する。発動後男達を拘束し、俺の前に連れてくるように!)


(((了解しました、主!)))


「レーナ、魔法を行使するよ。多分音がすごいことになるから耳を塞いで、目を閉じておいてな」


「わかった!パパに抱きついてる!」


「抱きつくのは構わないが、そこは抱きつく場所じゃないからな?興奮したように匂いを嗅がないの」


レーナは目を閉じるために俺の体に抱きついてきたが、抱きついた場所はなんと俺の股間だった。

こんな状況なのに男の股間に抱きついて、さらにはスーハースーハーしているレーナ。

大事な場面なのに俺の息子が大きくなってしまうではないか。

……いかんいかん、今は魔法に集中しないと。


「ーーーーさぁ、魔物を殲滅しよう。【地獄の業火(ヘルファイア)】!!」


魔法発動の言葉を紡いだ瞬間、ハイエンジェルが張った結界内全域に紅蓮の炎が辺りを覆い尽くす。

その熱量は太陽のプロミネンスをイメージさせるほどの熱量を放っている。

俺とレーナは魔法で守られているために熱くはないが、結界の外にいる男達の方にはその熱さが伝わっているようだ。


「なんだ……なんなんだよ!!あの馬鹿げた威力の魔法は!!」


「というか、ここにいてもこんなに熱いってありえないだろ!!」


「結界の中に入り込んでいたら俺たちもあんな風に……!?」


まぁ、驚くのも無理はない。

Fランクの冒険者がこんな高威力の魔法を使うこと自体、ありえないことなのだから。

灼熱の業火は魔物達を完全に灰にするまで発動し続けた。

炎が収まった後、俺たちの眼前に広がっていたのは……。


「パパ……結界の中だけ荒野になっているんだけど……。威力高すぎたんじゃないかなあ……」


そうレーナが言うように、森があった場所は結界の範囲内だけ荒野になっていた。

緑なんて全くない。肉の焦げた匂いと魔物の灰と思われる物質だけが空に浮かんでいる。

魔物は全滅していた。……が、その威力は俺も予想外のものだった。

まぁ、禁忌魔法なのだからこれくらいで済んだと思うべきなのか……?


「主、先ほどの攻撃は結界が壊れないかとても焦りました……。次からは私よりも高位の眷属を呼んだほうがよろしいかと……」


眷属であるハイエンジェルにはダメージはないはずだが、結界はそうではなかったらしい。

俺の強化魔法が付与されていなかったら、外にいる人質予定の男達もただでは済まなかっただろう。


「それはすまない。ところで、男達の拘束は済んでいるのか?」


「それはもちろんです。魔法が終わった瞬間に透明化を解除。拘束をしております。連れてきますか?」


「流石ゼウスの眷属だな。じゃあ、男達を連れてきてくれ」


(デススネーク隊も生きている奴らをこちらに連れてきてくれ)


(かしこまりました、主)


デススネークとハイエンジェルにそう指示を出して、俺とレーナはテントの入り口付近にいく。

まだ【聖なる盾】が残っているので、万が一に備えてのことだ。


数分もしないうちに眷属達が男達を連れてきた。

召喚魔法師18人、その護衛と思われる男達が30人、偵察の男と連絡要員の男がそれぞれ2人。

……召喚魔法師の数が減っているな。

デススネークに抵抗して、息の根を止められたか。


「くそっ、まさかお前がこんなデタラメな威力の魔法を使えるなんてよ……!」


「というか、この蛇も天使っぽいやつもお前の魔法かよ!」


反則(チート)すぎるだろうが……!」


俺たちの前に来た途端に文句を言いはじめる男ども。


「ひ……っ!」


あーあー……。レーナが怖がって涙目になってるじゃないか。

俺の娘を泣かせる奴は許さん。

俺は底の冷えた声でハイエンジェルに告げる。


「ハイエンジェル隊、今文句を言った奴の血しぶきを飛ばさないように殺してくれ」


「了解しました、主。……【断罪の聖剣】!」


ハイエンジェルが繰り出した【断罪の聖剣】によって、文句を言い始めた男達は塵も残さず消滅した。


「「「…………ッ!!」」」


その光景を見ていた男達は、一斉に口を閉じる。

一瞬で消えた仲間を見て、口出ししたら自分もこうなるのだと理解した。

中には失禁している男もいる。


さて、ダマスクの屋敷に一緒に向かう人質を確保しようか。

俺はデススネークが捉えている1人の男に近づき、問いただす。


「依頼を受けた俺たちに奇襲をかけるなど、依頼者としてあるまじき行為だなぁ……おい」


「……なんの話だ?俺たちにはわからない話だな」


「俺が何も知らないと思っているのか?お前達が森にやって来た時点で、俺の眷属に見張られていたんだよ」


「なんだと……!?眷属なんて全然数が少ないだろうが!嘘をいうのも大概にしろよ!このクソ野郎!」


「いや?嘘じゃないんだけどさ。証拠を見せてやろうk「……ねぇ。今の言葉……もしかしてパパに言ったの……?」」


おや?先ほどまで怯えていたレーナが俺の前に出て来たぞ。

というか、先ほどの俺への暴言で理性を失ってるまである。

だってさ……レーナの体全身から殺意のオーラが漏れ出しているもの。

男を拘束していないデススネークとハイエンジェルがガタガタ震えているもの。


暴言を吐いた男は、そんなレーナに怖気つきながらも必死に叫ぶ。


「あ……あぁ!?実際にクソ野郎だろうが!どこがFランクだ!こんなデタラメな初心者冒険者がいてたまるか!大人しく魔物に殺されていれば、ダマスクのやつから臨時ボーナスがもらえていたっていうのによ!」


周りにいた男達が、何バラしていやがる!という視線で暴言を吐いてる男を睨むが、男はそれに気づく様子はない。


あーあ……。これは……違う男を人質にしたほうがいいかもしれないなぁ。

お前は俺の娘の逆鱗に触れてしまった。

こうなったレーナは俺でしか止められない。……が、今は止めるつもりもない。


「……一度までならず二度もパパに対してクソ野郎……?もう許さない……パパを悪くいう人間は……()が消す……!」


レーナの周りに魔力が充満していく。

なんかこれ俺がゼウスにはなった時と同じじゃないか?

レーナは上級魔法しか使えなかったはずだけど……。

そんな俺の内心を知ることがないレーナは詠唱を開始する。


「ーーーー我の前に現れし不徳の者に浄化の光を。我が望むのは完全なる消滅。我が魔力を糧にあの不届きものに鉄槌を下せ……!【太陽光照射(プロミネンス)】!!!」


レーナの放った魔法は予想通りと言うべきか、ゼウスに絶大なダメージを与えた【太陽光照射】だった。

俺が使った時よりかは威力が低そうだが、そこは魔法攻撃の値の差とかもあるのだろう。

そうだとしても禁忌魔法のため、威力はえげつない。

男がいた場所にはクレーターができあがってた。


「パパのことを悪くいう人間とその仲間は……絶対に許さない……!」


そう言ったレーナは他の男達にも【太陽光照射】の魔法を使っていく。

魔力が足りなくなるのではと思ったが、【狂愛】の効果で魔力が逐一回復しているらしい。

レーナのヤンデレは今日も絶好調だな。

重い愛情が感じられて俺は大変嬉しいです。

ただな?その調子で消滅させていたら人質がいなくなってしまう。

護衛の男達を10人ほど消滅させたところで、俺はレーナに近づき、その小さな身体を抱き上げた。


「レーナ、俺のために怒ってくれてありがとう。でもな?ダマスクに対する人質がいなくなってしまうから、その辺で抑えておこうね。ダマスクの館に行ったら派手にやっていいから」


「むぅぅぅ……なんか納得いかないけど……パパに抱っこされてるから我慢する……」


レーナからの魔法が止まったことで、生き延びた男達は力なくうなだれる。

俺の時よりも死の恐怖を間近に感じたらしい。

デススネークとハイエンジェルも戦意喪失しそうになっているのは……どうかと思うが。


俺は男達に向かって宣言する。


「では、俺たちの力が分かったところで大人しくダマスクの屋敷までご同行願おうか。悪徳なダマスクはこれを機に成敗しないといけないからな」


男達はブンブンコクコクと激しく首を縦に振っている。

大の大人が涙目で必死に生に縋り付いているのは見るからに哀れだが、先に襲って来たのはそっちだし、自業自得だよね。


俺はデススネーク隊とハイエンジェル隊全員に保護色と透明化解除の指示を出して、男達を連行する準備を始める。


「……まさか、眷属がこんなにいるなんて……どうあがいても俺たちに勝ち目はないじゃねぇかよ……」


「 こんなにって……魔力を5分の1しか使ってないんだから、400体いても問題はないだろ」


「「「「普通はそんなに呼び出せない!!!」」」」


男達は声を揃えて反論するが、レーナが睨むとすぐに口を閉ざす。

レーナがキレたらどうなるか怖いほど分かっているからだろう。


「あ、連絡要員のやついたよな?ダマスクに、強襲は失敗した。旭達が向かう可能性があるので気をつけるようにとの旨の連絡をしてくれ」


「な……!?なぜそんなことを!?」


「ん?もうレーナに手出しできないように完全に息の根を止めるためだからだよ。それ以外に何の理由がある」


本当はリーアをダマスクから救いたいっていうのもあるんだけどな。

まぁ、人質も更生する意思が見られなかったら全員ダマスクの道連れなんだが、それは言わないでおく。

人質としての役割もまだ残っているしな。


「……断るって言ったら?」


「ダマスクの組織をシラミ潰しに破壊する。もちろん、ダマスクに属する人間に容赦はしない」


「……わかった。ダマスクのお頭にその連絡を行うとしよう」


連絡役の男は嫌そうにそう呟いた。

ただなー本当に連絡するか信用ならないんだよなぁ。


「あー、なら今すぐやってもらおうか。信用できないからな」


「……チッ、分かったよ……」


男はそう言ってダマスクに連絡をする。


ダマスクに連絡した後、俺とレーナは男達をひきつれて街に戻ることにした。

眷属召喚で呼び出した400体の保護色と透明化は解除している。

俺とレーナを先頭に、巨大な蛇と天使がダマスクの部下を引き連れている構図だ。


多少目立つが……これでダマスクの一味が一箇所にまとまってくれることを祈ろう。

そう思いながら、街に向けて歩き出した。

ついにレーナも禁忌魔法を使えるようになりました。

ステータスは後ほど判明する予定です。

長くなりそうだったので前編後編に分けました。

多分次も長くなります。

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