1・出逢う前の私
ある1つの『愛』の形です。
きれいな表現で書いています。
エロさはほとんどありません。
今日もお決まりのデートコース。
彼と海で泳いでそのままいつものホテルへ向かう。
車で30分かかるけど、入り組んだ道を何度も曲がっていきつくこのラブホは穴場。
このシーズンのみくる観光客にはわかりずらい場所にある。
だから、私達はいつもここに来る。
シャワーで簡単に砂を落としてきたとはいえ、脱いだ水着には砂が溜まっていた。
海辺で着替えることなくワンピースをはおってきただけの私はなおさら。
よく、水着をひろげてシャワーを浴びてる人がいるけど、そういうのは見ていてかっこ悪い。
所詮着たまま浴びてるのだから完全に落とすことなんて無理。
それなら潔くあきらめてしまった方が気分がいい。
水着のトップスを外すと、ばらばらと灰色の粒が舞い降りてくる。
そのまま家に帰ると家が砂だらけになるから、やっぱりここにくるのが一番。
ふいに私の背中に体温を感じ、大きな手が私の腰を抱いた。
「アキ。」
私を呼ぶ声。
顔を横に向ける私にすばやく唇を重ねてゆく。
腰にあった手はゆっくりと私の体をのぼり、水着で隠れていたふくらみにくる。
私達はお互いの口の中の砂利ごと味わった後、シャワーを浴びる。
今年の夏、地元のコンビニで彼に声を掛けられた。
頭は金色に染めて焼けた肌。
耳ピアスが何個もついたいかにも軽そうな男。
だけど、声がよかった。
心地よい低音で耳触りがよかった。
だから、ついつい話こんでしまい、メルアドを交換した。
そいつは巧みな文術だった。
一晩のやりとりで番号も教えてしまった。
その二日後には逢って、ホテルに行った。
こうして付き合いが始まって一か月がたち、週に2・3度こうしてラブホへ直行する。
彼を好きかどうかはわからない。
彼が私を愛しているとも思えない。
でも、楽しませてくれる。
メールをマメにくれる。
春に別れた公務員の彼よりもバリエーションとテクニックが豊富。
夏を楽しむにはちょうどいい相手だった。
ベットの上でだけは「かわいいよ、アキ」「あいしてるよ」という彼。
私もそのたびに返してあげる。
「私もあいしてるよ」と。
相手の家さえ知らない。
ナンパしてきたコンビニで待ち合わせて、コンビニでさよならする。
今の世の中、コンビニで男も買えるのだ。
夏が終わりを告げ始めるころ、彼との距離が変わってきた。
メールをしても返事が返ってこないことが増えた。
電話をしても出るのは数回に一度。
別に好きだったわけではない。
でも、いままで相手をしてくれた人にそっぽを向かれると悲しくなる。
週に何度も逢って気持ち良くさせてくれた人がいなくなるのは体の芯からせつなくなるものだ。
私は少しだけ執着して彼に何度も催促のメールをした。
そうしたら、メルアドが届かなくなり、電話もつながらなくなった。
どうでもいい相手だったのに、どうしようもない寂しさが襲ってきた。
だから、私はまた始めた。
出会い系サイトを。