序章 始まり
人間性とは愚かで醜悪な生き物だ。言葉では綺麗なことが大好きであるが本性は常に誰かを貶め、蔑んでいる。自分もそんな人間だと思うと吐き気がしてくる。人間は生まれた。そのことが最も重い罪であると俺は思う。なのに人間は罪を重ねた同族を犯罪者などと蔑み、同じ罪をもってうまれた同族がこれを裁く、俺はこのシステムに疑問をもっていた。同じ罪人であるくせに人を裁くなどあっていいわけがない・・・・と だから俺も罪を重ねるのだ。人々が気付かずにいる己の罪に気付くまで・・・・。
幼い頃は真面目な子だと言われた。ただ期待に答えるために努力し、研鑽する日々しかし辛くはなかった結果が報われた時は嬉しかったし、誉められた時はもっと頑張ろうと思っていた。
誰のいない山奥に彼、月城大和はいた。大きなバッグを抱え額に汗を滴らせながら彼は自分が目的とする場所へ歩いていく。
「このへんまで来れば人はいないか・・・・」
周りを見渡しても人影はないことを確認した彼は静かに自分が背負っていた大きなバッグを地面に置いた。
「ほんと人って落ちれば落ちるところまで落ちる生き物だよな。」
彼はまるで誰かに語りかけているように独り言をつづける
「二年前までは学年でもトップの成績で将来が有望だと周りから称賛されてた俺が今や誰もが蔑む性犯罪者だ。はははは・・・・思い出すだけでも笑いが込み上げてくるわ。」
彼の乾いた笑みと笑い声だけが静な山奥のこの場所に響き渡っていた。
「お前も今の俺を内心で見下してるだろう?」
そういうと彼は先程地面に置いたバッグのチャックを下ろして中身を確認する。
「⚪⚪小学校五年三組の、えっーと・・・・」
「成瀬紫帆ちゃん。」
バッグの中には手足を拘束され口を塞がれた幼い少女の姿がそこにはあった。
この小説を書き始めたきっかけは本当にダメな主人公の物語を書きたいと思ったのがきっかけです。こういう犯罪を犯した人物でも人間としてやり直せるんだというのを伝えらたら幸いです。