花咲 刹那 と 聖 刹那
花咲「聖、貴女の生き方は刹那的過ぎない?」
聖 「遊び人は、黙ってなさいっ!」
花咲「黙れと言われて黙る口ではないわ。なんなら、貴女の唇で私の口を塞いでみたらどうかしら?」
聖 「この変態っ!」
バンッ、と勢い良くドアが開かれる。
聖「な、なってことしてくれるのよっ! 花咲っ!」
と、かなり怒っている少女の声が待合室に響く。
花咲「ノックぐらいしたらどうなの? 聖」
私は呆れ顔で読んでいた本をそっと閉じた。
聖「私が在学中に書いて提出した、《イノセント・フラワー》の資料を見たでしょっ! その上、それを和風アレンジして投稿したでしょっ!?」
聖は相当怒っているようだ、私たちの間柄だからいいが、本当だったら裁判沙汰になっていたようなことだから。
花咲「貴女が悪いのよ、無理に連載小説にしようとするからあんな出来の悪い作品になっているのよ?」
聖「そ、それは……」
花咲「今回は、私に任せなさい。大丈夫、それなりの作品にしてみせるから、その後で貴女の作品を出して見せなさい、私の作品よりもっと素晴らしいものを、ね?」
聖「わ、分かったわ……花咲。いづれ貴女を超えてみせるからっ!」
花咲「ええ、楽しみにしてるわ、聖」
そう言って彼女は待合室を早足で出て行く、その足取りに迷いは、ない。
私は、その背中を見て思う――随分、穏やかになったのね、と。
◆ ◆
彼女、聖 刹那は、聖なる一瞬、そう彼女の命は、喩え、どんなに善人のように生きようとも、その命、刹那に散らしてしまうほど危うい生き方をしていた。
初めて彼女と逢ったときは、私に向ける銀色の刃、怯えた獣のような眼、震える身体、その全てが彼女という人が獣のように強く、花のように脆く美しい存在だと語っていた。
私は、その刃を受け止め、「もう、怖がらないで、自分にも、私たちにも……」と告げた。
それを聞いた彼女は「ありがとう……」と呟いた。
今は、元気なお転婆娘になってしまって、みているこっちが、はらはらする。
だが、それでいいのだ。
私は、聖なる一瞬、でも輝いている彼女を見守り、花のようにその命散らすなら、その時は、私も一緒だ―――
花咲「ねぇ、ひっじり~ん」
聖 「変な名前で呼ばないで、花咲」
花咲「下腹部を撫で回していいかしら?」
聖 「いいわよ、貴女の下腹部を拳でクリティカルヒットさせていただけるなら」
花咲「私を腹パンで気絶させてナニをする気かしら? 楽しみだわ、ふふっ」
聖 「もう知らないっ!」