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ゼノスフィード・オンライン  作者: 光喜
第1章 災厄の魔女
23/85

第21話 ユマ

 ――― オウリ ―――


「因縁が無い、だって? あるさ。あるんだよ」


 ユマは身体を折り曲げ、くくく、と笑う。人の不安を煽る悪役の笑い方である。五百年で勇者は廃業し、魔王に就任したのか。ユマは顔を上げると晴々しい笑顔を見せた。


「君の妹を神敵に認定したのは僕だ」


 ………………は? 今、なんて?


 ぶわ、と俺の周りで風が吹き荒れる。髪は逆立ち、外套が翻る。

 ここは風の《魔力》が濃い。俺の感情に呼応したのだ。颶風は全身に裂傷を生む。

 だが、制御する気は起きなかった。


「そうか、てめぇが」

「ははは! ようやく僕を見たな、オウリ」


 まぶたの裏にセティの姿が浮かぶ。地面に突っ伏し、血溜まりが出来ていた。

 傍らに佇むのは抜き身の剣を持つユマ。つまらなそうな顔をしていた。だが、次の瞬間には快哉を叫ぶオーファンに変わり、また、見知らぬ騎士となった。立つ人物は次々と変わるのに、倒れるセティだけは変わらなかった。


「なんでセティを、ってのは愚問か」

「君がいなかったからだよ」

 

 デスゲームでは数多のプレイヤーを斬った。だが、私怨で斬った事は一度もない。

 一度も無かった。


「お前は――」


 ユマに殺気を放つ。分かっている。この程度で怯まない。ただの意思表示だ。


「――俺が殺す」


 まどろっこしい駆け引きは抜きだ。その薄ら寒い笑み、今すぐ消してやるよ。


「来い、オウリ! 五百年に渡る因縁に決着を付けよう!」


 駆け寄る俺に対し、ユマが《震脚》を放つ。俺は軽く飛んでかわす。ユマは意表を衝かれた顔。《震脚》を飛んでかわすなら、後方へ向かってがセオリー。だが、俺はユマに向かって飛んだ。影踏みに付き合ってる暇は無い。

 ユマの顔面目掛け右足で《烈風脚》。身体が反転しユマの姿が消えた。が、構わず左足で《御霊刈り》。俺には《制空圏》がある。至近距離なら視覚は不要。だが、それはユマにも言える事。死角からの一撃をユマは腕を上げて防ぐ。俺は抜刀術を――チッ。ご機嫌ナナメか。刀を抜くと自分の背中に《エアハンマー》。強烈な勢いで身体が回転。その勢いを乗せて《バニッシュメント》。

 ユマは剣を掲げ持ち、これを防いでいた。

 

「曲芸じゃ僕は殺せないよ」

「曲芸? この程度で?」


 ユマの剣を蹴り、高く舞い上がる。ユマは目を細め、俺の様子を窺っていた。

 避けることも出来たのに、防御を選んだことからも、ユマの狙いが透けて見える。大方、空中で俺を仕留める気でいるのだろう。俺が《空歩》を使えば喜んでアーツを撃って来るはずだ。

 だが、何度言えば理解するのか。


「曲芸ってのは――」


 俺は魔法使いだと言ったはず。


「――こういう事を言うんだろ」


 俺は空中に降り立つ。

 一向に落ちてこない俺を見て、ユマの顔から笑みが消えた。

 《エアライド》――風の足場を作る魔法。地味な魔法に思えるが、風魔法の極致である。

 シルフを例にとって考えると分かりやすい。自由気侭な彼女を一所に留めるようなもの。

 ユマを見下ろしながら言う。


「お前の目論見は崩れたワケだが。次の手は考えてあるんだろうな? ん?」

「くっ、あるに決まっている! この日を五百年待ったんだ!」


 明らかに嘘臭い。が、いいだろう。


「お前の土俵で戦ってやるよ」


 地面に下りる。

 上から目線で語ったものの、他に選択肢がないだけだ。

 空中から攻撃すれば俺は安全だろう。だが、キレたユマがセティに向かうかも知れない。

 いや、もうキレてるのか。ユマが愚直に突っ込んで来る。

 俺はユマの《制空圏》手前で飛ぶ。ふわり、という浮遊感。跳躍から落下へと変じる刹那。逆さまになった世界で光を帯びるユマの剣を見た。


「言ったそばから逃げるのか、オウリ!」

「飛び跳ねるのもナシってか。どんな縛りプレイだよ、ええ? 手加減して欲しいならそう言え」

「黙れ――《ムーンライト》!」

「黙らせてみろ――《エアライド》」


 俺は空を踏みつけ、《瞬動》。

 ユマの放った光の刃とすれ違う。

 更に三度、《瞬動》を発動。

 さながら落雷。

 ユマも《瞬動》で迫って来る敵を相手にした事はあっただろう。だが、《瞬動》で落ちてくる敵はいなかったに違いない。

 ユマの背後に着地。《スラッシュ》を放つ。


「ぐぅぅぅ……」


 ユマの背中に刀が吸い込まれる。白銀の外套が赤い染みを作る。肩越しにユマは俺を――いや、光る俺の刀を見ていた。

 ユマは斬られるに任せ、《周撃》を放つ。

 チッ。良く分かってる。自分の強みが。

 魔法使いは《頑強》が低い。加えて装備は《敏捷》重視。

 と、なれば威力の低い《周撃》でも十分お釣りが来る。

 ユマはそう判断したのだ。

 思考に許された時間はごく僅か。

 普通なら前に出て傷を浅くする場面。

 流石は救世の英雄という事か。

 アーツを止められない以上、これは甘んじて受けるしかない。

 ユマの足払いに足を刈られ、俺の身体がコマのように回転する。


「《トライエッジ》」


 ユマはアーツが終了するなり、立て続けにアーツを宣言。

 へぇ。わざわざ宣言するか。確実に当てられると?

 火花が散った。

 三度。

 俺も《トライエッジ》で迎撃したのだ。

 ユマが目を剥く。が、すぐに獰猛に笑う。

 土台、無茶な体勢だった。俺の刀は弾き飛ばされていた。


「まったく器用な男だっ。だが、武器を手放したな!」

「はしゃぐなよ。弱く見えるぜ」


 ユマの剣には未だ一滴の血も付いていないのだ。

 こんなことで勝ち誇ってしまうのは、今まで苦境に立たされていたという証。


「減らず口を叩けないようにしてやるさ!」


 煽り耐性低いな、と思いながら、ユマの突きを見詰める。性格が出た正確無比な一撃だ。回転を考慮した上で、俺の口の中を狙っている。だが、大事な事を見落としている。


「回転は止められたんだぜ。いつでも」


 《エアライド》。

 宙に浮かされた? なるほど、絶体絶命だ。ただし、俺以外であれば。

 地に足がついていないだけで、死に体と判断するのは早計だ。

 突きで伸びきったユマの腕を掴む。


「んなッ」


 ユマが裏切られたような声を出す。

 実際、彼は自分の身体に裏切られた。意思に反して飛び上がったのだから。

 《呼応投げ》だ。

 このアーツは空中では使えない。発動には両足が地に付いている必要がある。

 だが、風魔法使いたる俺には大気ある場所全てが地面。

 

「手を、放せ!」


 ユマの《砲天響》。

 強烈な前蹴りが俺の腹部を抉る。剣を握る手は俺が封じている。ユマが拳闘士スキルに頼るのは分かっていた。《チャクラ》を練り備えていたのだが想像以上の威力だ。

 だが、好都合と言えなくもない。


「てめぇの蹴りで――」


 俺は《鳴叉》を発動。

 

「――大人しく寝とけ!」

 

 光る拳がユマを地面に叩きつける。

 身体をくの字に折ったユマが吐血する。

 まるで矛盾だ。

 ユマは世界屈指の攻撃力と防御力を誇る。

 どんな盾も突き通す矛。どんな矛も防ぐ盾。ユマの盾は様々な攻撃を防いで来たはず。だが、俺に矛を握らせてしまえば、盾を貫くのは当然の事だった。

 畳みかける。

 ユマの頭を踏みつける。寸前でかわされた。だが、それこそ俺の狙い。

 身をよじった直後にこれはかわせまい。


「《雷脚》」

「ぐぁぁァッ」


 ユマが《スタン》する。

 俺は手を挙げる。八咫姫が手に収まる。風で招き寄せたのだ。

 

「《鎧通し》」


 侍のアーツで防具を無視する突き。するり、と刀がユマの腹に埋まる。ただ、半分しか埋まらなかった。防具の補正がなくとも、ユマ自身の防御力が高いからだ。

 

「《砲天響》」


 前蹴りで刀を押しこむ。ユマが呻き声を上げる。その声は八咫姫の抗議に思えた。私を足蹴にするな、と。足を退かすと刀が消えていた。貫通して地面に埋まったのだ。


「《アーススパイク》」

「…………ぐぅぅぅ」

 

 土の杭がユマを打ち上げる。《スタン》が切れていたか。咄嗟に直撃を避けていた。

 ユマが地上に向かって飛ぶ。《空歩》だ。シルフが作った風の道はすでに消えている。青いキャンバスに点々と赤が滲む。ユマの腹から流れる血だ。

 俺はユマに背を向け、土の杭に向きなおる。

 溜息を一つ吐き、土の杭に手を突っ込む。指先にそっぽを向く感覚。構わず引き抜くと――八咫姫が俺の手の中にあった。八咫姫の刀身を土が覆っていた。

 顔も見たくない――そう言われた気がして苦笑する。


「拗ねるな、八咫姫。俺の相棒はお前しかいねぇんだ」


 俺がそう声をかけると、パラパラと土が剥離し、真黒な刀身が露わになる。

 無数の死線を共に越えて来たからか。

 八咫姫に意思を感じる瞬間があった。

 本当に意思があるのかは分からない。

 終わりの見えないデスゲームに、(よすが)を求めただけなのかも知れない。

 だが、この反応を見て、意思がないと思える人間がいるのか。


「……なぜ、追撃をしなかった。君ならそれが出来たはずだ」


 ユマが地上に戻って来ていた。仏頂面だった。

 素直に助かったと喜べばいいものを。


「や、お前をナメてるつもりはないぜ。相棒のご機嫌を取るのに忙しかっただけ」

「それをナメてるというんだ!」

「理由を言ったっていいが……お前にゃ絶対理解出来ねぇよ」


 NPCにすら魂を認めなかったのだ。刀になんて認めるはずがない。

 思えば最初から八咫姫は機嫌が悪かった。デスゲーム時代は八咫姫ばかり使っていた。それが最近は救済の剣を贔屓にしていた。ペナルティのせいなのだが、浮気していると思われたのか。

 だが、和解は済んだ。

 ユマを手招きする。


「来いよ。ウチの姫様が力を貸してくれるそうだ。本当の八咫姫を見せてやる」

「是非とも見せて貰おうか!」


 ユマが突っ込んで来る。俺は刀を――鞘に納める。


「チィィィ!」


 抜刀術の構えを見て、ユマが更に加速する。《瞬動》を使い一目散に迫って来る。

 俺が何をやろうとしているのか察したらしい。

 ユマは俺が抜刀術を隠していると思っていたのだろう。抜刀術は威力に優れる半面、クールタイムが長い。だが、隠していたのではなく、使えなかったのである。

 抜刀術は八咫姫の機嫌がいい時にしか使えないのだ。

 上空に打ち上げたユマを追撃すれば、彼を倒す事は出来たかも知れない。

 しかし、代わりに八咫姫は臍を曲げていただろう。そうなってしまうと世界最強の刀は鈍らと化す。万が一、ユマを討ち損ねた場合、八咫姫の助力が無いとキツい。

 面倒な刀である。

 だが、面倒でない女がどこにいるというのか。

 全能感が俺を包む。

 ようやく俺の戦いが出来る。


「――《絶夢》」


 ユマがもんどりを打って倒れる。彼の足が深々と斬れていた。

 想像以上の成果に俺は目を見張る。

 《絶夢》は斬るという概念を具現化する。避ける事は不可能という凶悪なアーツ。だが、対象がランダムなら、狙いもまたランダムであり、狙い通り斬れる事は滅多にない。

 八咫姫が張り切ったのか。

 転がって来たユマの顎を爪先で持ち上げる。ユマは痛みを堪え、俺を睨みつけていた。

 俺は笑って言う。

 

「地面との別れは済んだか?」


 《虎影脚》でユマを蹴り上げる。

 地面に刺さったフェルニゲシュを掴むと、自分の足元に《アーススパイク》を発動。即席のカタパルトである。土の杭が伸びきる瞬間、《瞬動》で飛ぶ。

 《空歩》で逃れようとするユマを《風精の暴虐》で閉じ込める。

 フェルニゲシュを《エアシュート》で上空に飛ばす。


 インベントリから弓を取り出す。

 ショートボウ――狩人の初期装備である。

 攻撃力は無いに等しいが、全ての弓に《耐久度》で勝る。ゲーム開始直後は試行錯誤の連続だ。金を稼ぐ事も出来ず、武器が壊れたらどうなるか。詰む。それを防ぐ為だろう。概ね、初期装備というのは《耐久度》に優れている。

 弦を引き、宣言する。矢は番えない。

 

「《ソウルストーカー》」


 青白い矢が生まれた。弦から手を放す。矢はユマの背中に命中。だが、ユマに気付いた様子は無い。《ソウルストーカー》の矢はダメージが無いのである。

 新品だったショートボウがボロボロになっていた。

 《耐久度》をアーツに変え放つのが《ソウルストーカー》なのだ。

 武器を破壊するアーツの効果がこれだけのハズが無い。

 しかし、まだ仕込みだ。


 ショートボウを投げ捨て、今度は槍を取り出す。

 ユマとすれ違い様、《エアハンマー》。これは単なる目くらまし。

 矢が刺さった場所を槍で突く。突いた一点に薔薇の文様が浮かぶ。《ロサゼール》だ。

 鞘に納めた八咫姫が鳴動していた。舌の根の乾かぬうちに浮気を! と言いたいのか。

 やれやれ、オチオチ別の武器も使えない。

 一番の敵が自分の武器とは笑えない。

 

「安心しろよ。最後はお前に頼る。どうせな、そうなる」


 言いながら俺は手を振る。手の中に感触が生まれる。フェルニゲシュだった。

 このタイミングで落ちてくるように、計算して上空に放っていたのだ。

 インベントリから九十九本の槍を取り出す。手元の一本も含め、合計百本の槍を用意。

 

「さァて。今度のは一味違う。下手すりゃ終わるぜ。ウチの姫様の為にも頑張ってくれよ――《九十九噛み》」


 ドドドド、と槍が射出される。連なる槍は線を描き、一本の槍のようであった。

 ユマはいぶかしむように槍を見ていた。威力重視で射出した槍は、ユマから逸れていたのだ。だが、長大な槍の先端がくん、とユマ目掛け進路を変えた。

 ユマは目を見開くと言った。


「風で操っているのか!」


 ハズれ。

 俺は何もしていない。

 いや、何もしていない、というと語弊があるか。

 もう仕込みが済んでいるという事だ。


 ユマが《ゲイルセイル》を放つ。突風がユマの身体を急加速させる。槍はうねりながら追尾を続ける。槍の進路変更に一瞬の遅滞も無かった。

 それが大きなヒントとなったらしい。

 

「《ソウルストーカー》!」


 そう、それが正解だ、ユマ。


 ユマは慌てて全身を検める。

 青白い矢を抜けば《ソウルストーカー》の効果は切れる。

 しかし、名にストーカーと付くからか。《ソウルストーカー》は感知系スキルに引っ掛からない。確認するには目視しかないのである。

 ユマは背中に手を伸ばすが……残念。指一本分、矢に届かなかった。

 さあ、どうする? 槍はもう間近だぜ。


「オウリィィィ! 君は! 君はァァァァ!」


 ユマは剣を鞘に収め、盾を構える。盾はインベントリから出した。

 俺もユマも両手で武器を扱う。盾を使えば堅固さは増す。だが、自分の戦いが出来なくなる。差し引きで言えばマイナスか。形振り構わず防ぎに来たという事。

 槍の援護もある。ユマを叩く好機……ではあるんだがな。

 

「人をハメるんなら顔に出したらダメだぜ、ユマ」


 ユマは横目で俺を見た。

 虎視眈眈と何かを狙っていた。

 上手くいけば槍だけで決着だ。危ない橋を渡る事は無い。

 高みの見物をさせて貰うさ。

 取り出した魔力回復薬に口をつける。


 盾が光っているが……はて、何のアーツか。騎士の防御アーツは見分けづらい。盾を強化する《シールドガード》か、自身の《頑強》を上げる《ファランクス》か、全包囲に備える《オールレンジガード》か、或いは――


 ああ、《シールドガード》だったか。

 盾は苦もなく槍を弾き返した。だが、衝撃までは殺し切れない。宙に浮く槍が増えるにつれ、ユマの態勢が崩れていく。重心からズレた場所を突けば物体は回転する。それと同じ事がユマの身にも起きていた。ついに身体がぐるりと回り、ユマは槍に背を晒した。

 槍がユマの背中を――薔薇の紋様を貫く!


「グアアアアアアアアァァァ!」


 ユマが絶叫する。


 ――《ソウルストーカー》。


 対象に的となる矢をつけるアーツ。放たれた物体は的目掛け飛ぶようになる。狩人のアーツであり、通常は矢を当てるのに使う。だが、《九十九噛み》にも応用可能だ。

 

 ――《ロサゼール》。


 人体には急所がある。一般的なのは頭や喉だ。

 急所に攻撃を食らうと、ダメージがクリティカルする。

 《ロサゼール》は急所を作り出す。薔薇の文様が急所の印なのである。


 ユマの腹を食い破り、血に濡れた槍が顔を出す。クリティカルしたとはいえ、突き抜けるだけの威力は無かったらしい。だが、順番待ちをする槍はまだ八十本近くある。後続の槍が俺の番だと、ユマの腹に刺さった槍を押しだそうとしていた。

 このまま手をこまねいていればユマは遠からず絶命する。

 だが、俺と違って時間が豊富にあったユマならば――


「やっぱ使えたか、《サンクチュアリ》」


 盾が一際強く輝いた瞬間から、槍はユマに届かなくなっていた。

 痺れを切らして使用に踏み切ったか。

 《サンクチュアリ》には表の顔と裏の顔がある。


 表の顔は仲間を守る、という騎士のクラスを体現する使い方。

 発動時、《サンクチュアリ》の周囲にいた者も、聖域の中に入る事を許される。これを利用して竜のブレスから神官を守ったりする。


 裏の顔は敵を引き寄せ、《サンクチュアリ》を使う。一旦、聖域に入ってしまうと出る事も出来ない。敵は十秒間の間、タイマンを強いられる。聖域は血生臭い地獄へ変わる。

 ユマは聖域に俺を閉じ込めるべく、ギリギリまで耐えていたのだ。


 聖域は非常に狭い。定員は精々、三名といったところだろう。

 足を止めての戦いになる。

 それならユマに分がある……というか、勝てる気が全くしない。

 ユマはこの五百年で恐ろしく強くなっていた。

 傍から見れば翻弄しているように見えるかも知れないが、それはユマの長所を消すように俺が戦っているからであり、力に対し力で挑めば鎧袖一触でやられるのがオチだ。

 ちなみに《サンクチュアリ》の習得には年単位かかる為、俺は使えない。

 

「一、二、三……」

 

 《サンクチュアリ》の有効時間を数えながらユマを追う。ユマは上へ上へと昇っていっていた。《サンクチュアリ》は絶対に壊れないシェルターだ。だが、質量自体はユマ一人分しかないのである。槍が《サンクチュアリ》を押し上げて行っているのだ。


 ユマは回復薬を取り出していたが、離陸したロケットの中で飲めるか、という話だ。中身が零れる回復薬に見切りをつけ、ユマは拳闘士クラスの《治癒功》を発動させる。

 なんというか。

 俺が言えた義理ではないが。

 実に多芸な男である。

 

「……七、八……」


 トップランカーは正確な体内時計を持つ。バフの効果時間がアイコンで示されるMMOと違い、VRMMOではアイコンは表示されないのだ。バフ切れはそのまま死に直結する恐れがある。何分にも渡るバフが切れる時間を、誤差数秒で見極める事が出来る。

 ならば、十秒という時間はどうか。

 俺やユマのレベルとなると、間違える方が難しい。

 

「……十秒」


 右目の痛みを堪え、《龍勢添翼》を発動。

 刀がユマを袈裟斬りにする。ユマの目が点になった。驚愕の中に不満があった。

 まだ、十秒経っていない、と。

 俺の体内時計でも十秒はまだだ。

 だが、《サンクチュアリ》は十秒経ったから消えたのだ。

 お誂え向きに《サンクチュアリ》が目に見えていた。

 零れた回復薬が《サンクチュアリ》を浮き上がらせていたのである。

 目に見えているのなら。

 時は誤魔化す事が出来る。


 《龍勢添翼》は敵の血を啜る度に《敏捷》に補正を得る。このアーツを防ぐ為にはまず一刀目を防ぐのが肝要なのである。しかし、ユマは一刀目を無防備に受けてしまった。

 ただでさえユマは俺の動きについて来るので精一杯だった。

 最早、《龍勢添翼》は止まらない。

 まずユマの左手を狙う。面倒なのを持っている。盾がユマの手から離れた。

 後は好きに料理するだけ。

 顔。

 首。

 腹。

 手。

 足。

 全身を斬り刻み――刀から光が消えた。


「…………」

「…………」


 ユマが両手を広げていた。

 俯いている為、顔は見えない。

 あたかも磔刑にかけられ。

 処刑を待つ罪人に見えた。

 俺は柄を握る手に力を込め――


「……………………プレイヤーは……」


 ユマが何か言った。


「…………」


 俺は眼下に目をやる。地表が豆粒のようだ。かなりの高度である。

 ユマは全身から血を流し、錐揉みしながら落下している。

 

「…………」


 俺は前のめりに倒れ込む。風の足場を蹴り、ユマを追う。すぐに追いついた。風を操り上下の向きを正す。ユマは俺の姿を認めると、再び口を開いた。


「…………この世界にいるプレイヤーは……デスゲームで命を落とした……人達。君が殺した……人達だ……宣戦布告するまでも無い。君は最初から……世界の敵だ……」

「…………」


 独白めいたユマの言葉を聞きながら、やはりかと思う。

 俺の顔を見て逃げ出すプレイヤーを見た時に察した。だが、全員が全員、俺が殺したワケではない。世界槍ホルンで命を落としたプレイヤーも多い。とはいえ、俺がいなければデスゲームはスムーズにクリアされていたワケで。間接的に俺が殺したと言っても間違いではない。


「……復活のシステムは……正常に稼動していた……デスゲームが終わり……僕らはログアウトしようとした……だが、出来なかった……スニヤは復活のシステムに……手を入れていて……知らぬ間に僕らの魂は……この世界のものへと……変質させられていた……」

「…………チッ。スニヤ。俺に黙ってたな」

 

 復活は無い。

 そう信じたのはデスゲームで死んだプレイヤーが、帰って来ることがなかったからだ。

 だが、スニヤが一枚噛んでいたなら、如何様にも出来たはずだ。

 復活地点を隔離された空間に変えるだけでいい。

 スニヤが俺に言わなかった理由は察しがつく。死を軽んじて欲しくなかったのだろう。

 

 職人のレベルが下がっていることにも納得がいった。

 《XFO》を始めたプレイヤーはまず選択を迫られる。

 戦士としてメインクラスを伸ばすか、職人としてサブクラスを伸ばすか。

 両立は難しい。つぎ込んだ時間がレベルに直結するからだ。

 デスゲームで命を落としたのは戦士達だ。

 高名な職人はみなログアウトしたのだろう。


 異世界化の直後はかなりの数の最終装備があったはず。だが、最終装備を手入れするには相応の素材と職人のスキルが必要となる。最終装備が壊れれば、狩場のランクを下げるしかない。

 後はこの負のスパイラル。

 プレイヤーが無謀な狩りを行えたのは復活があったからだ。命がかかった状況で装備の為に強敵を狩りに行こうという物好きは少ないだろう。

 だが、分からない。


「なぜ、いまそれを?」

「……僕に勝てたら……教えるといった……からね……」

「それは敗北宣言って事か?」

「……はは、そう……取って貰っても……構わない……」


 そうか。

 参った。

 どうするか。

 正直、かなり気は晴れた。俺の周りの風も穏やかだ。

 白旗を挙げた人間を殺すのは気が重い。

 だが、考える時間はあまりない。

 こうしている間にも地上が迫って来ている。

 ユマは瀕死である。落下すれば死ぬ。


「ところで魔法使わないのか」


 風魔法が使えたら命を繋ぐ事ぐらいは出来るだろう。


「……使えたら……使っているよ」


 だろうな。

 最初の攻防でユマは《エアハンマー》を避けなかった。あの時からおかしいと思っていたのだ。ユマには《魔力》が見えていない、つまり、《魔力感知》を持っていない。

 そうするとユマは……ああ、面倒くせぇな。気付きたくなかった。


「……これが何か分かるかい?」

「石?」


 ユマが取り出したのは禍々しい赤い石だった。

 

「……僕はこれを廃都リファエルで見付けた」


 廃都リファエル。

 魔王が最初に滅ぼしたとされる小国である。Chapter4のダンジョンとして登場した。俺は攻略に参加していないので詳しくは知らないが、こんな石があったという話は一度も聞いた事が無い。この五百年の間に発掘されたのか。

 《鑑定》して見ると――《穢れ》の結晶と出た。

 ……確定だな。絶対、ロクなもんじゃねぇ。

 

「……アイラ。手間をかけさせる」


 そう言うとユマは石を握り潰した。

 石の破片から禍々しい赤い光が飛び出す。蛇のようにのたうつ光は、瞬く間にユマの全身を覆う。それだけでは飽き足らず、俺にまで光を伸ばして来た。

 俺は刀に手をかけ――


「オウリィィィィ! それに触れるなァァァ!」


 ――絶叫が聞こえて来た。

 

 地表を見るとシュシュが顔面を蒼白にさせていた。

 俺の直感もアレはヤバいと告げている。

 ユマを一瞥し、飛び退る。風を操り減速し、地上に降り立つ。


「お、オウリ。平気か? 触れておらんか?」


 シュシュが俺の身体をぺたぺたと触る。

 たぶんなと答えながら、ユマの落下地点を見る。もうもうと土煙りが上がっていた。

 せめて、俺の刀で最期をと思ったのだが。

 

「オウリ! 油断するな! ユマは魔族化した!」


 シュシュの警告を裏付けるように、土煙りの向こうから笑い声がした。

 俺は手を振り、風を吹かす。土煙りが晴れると、そこには――


「……はははは。魔族化すると憎悪に囚われると聞いたけどね。肩透かしを食らった気分だよ。何も変わらない。ただ、やる事が明確になっただけだ」


 瞳を赤く変じさせたユマがいた。

 シュシュの話によれば最初の魔族はヒューマンが変じたものだ。ならば、ハイヒューマンが魔族になったとしてもおかしくは無い。

 

「……はは、流石は元ゲーマーだな。セオリーを分かってる。ボスは変身しねぇとな」


 軽口を叩くが重苦しい口調になってしまう。

 ユマを見ているだけで背筋が凍る。原初的な恐怖が鎌首をもたげるのだ。魔王シュラム・スクラントを見た時もこうだった。何らかのスキルが働いている可能性がある。

 しかし、魔族を見ただけではこうはならない。

 ユマは魔族というか。

 魔王になってないか?


「……お、オウリ。あれには勝てん」


 身体を固くするシュシュ。その頭を撫でながら俺は言う。


「やってみりゃ案外なんとかなるもんさ」

「ば、馬鹿を言うでない! 魔族化した者はステータスが――」

「分かってる」


 ユマを《鑑定》して見ると、一部の情報しか見れなかった。強さに大きな隔たりがあると起きる現象である。ユマはさぞかし出鱈目なステータスになっているに違いない。

 だが、それがなんだというのか。

 

「ステータスで負けてんのはいつものことだ。俺は所詮、魔法使いでしかないからな」

「うぅぅぅぅぅ! 駄目だ! 駄目だ! 駄目だ! 駄目といったら駄目だ!」


 シュシュは半泣きで、俺の腰にしがみ付く。シュシュは何度も魔王と化しており、魔族の脅威は人一番分かっている。だが、この反応は度を逸しているように思えた。

 あの赤い光が原因だろう。光を見詰めるシュシュの目は異常だった。

 むずがるシュシュを俺から引き剝がしたのはセティだった。騎士団は片付けたらしい。


「兄さんは勝つよ。私は信じてる。ううん、知ってるんだ」

「はは。妹から期待されちゃ、兄は頑張るしかねぇな」

「もう兄さんが私に責任感じることはないんだよ。自分の身を守れるくらいには強くなった。兄さんには自分の好きなようにして欲しい。あ、でも責任を取ってくれるのなら――」

「あ、うん。分かった。気が楽になった」


 この先は聞いてはいけない。そんな予感があり、強引に話を切る。

 セティの態度は五百年前と変わらない。変わらないからこそ困ってしまうのである。

 セティを猫可愛がり出来たのは彼女が子供だったからだ。

 距離感を測りかねているトコを、ぐいぐい迫って来られると……正直、どうしたらいいのか分からなくなる。


「……オウリ、武運を祈る」


 アリシアが固い表情で言う。俺は軽く頷く。彼女は分かっている。言葉は必要ない。

 意外な事にユマは悠々とした態度で俺を待ち受けていた。


「別れは済ませたかい?」

「ほざけ。死ぬのはてめぇだ。お前は俺の刀で死ぬ(・・・・・・)

「…………君は。いや、今言う事ではないね」


 ユマが剣を構える。

 勇ましいその姿にかつて勇者と評した彼を見た。思えば五百年前もユマは俺を殺しに来たのだ。俺を殺す。その一点に目標が絞れた事で、かつての人間性が蘇ったのかも知れない。皮肉な話だ。人間辞めて人間性を取り戻したという事になるのだから。


「最後の勝負だ、オウリ」


 言うなりユマが駆け出す。尋常でない早さだった。まるでコマ落としである。

 ユマが地面を蹴ったかと思うと、別の場所にその姿が現れるのだ。

 《瞬動》ではない。《チャクラ》を練っている様子も無い。素のステータスだけで実現している動きだ。スキルを使われたら手に負えなかった。だが、今回に限ってはスキルを恐れる必要はない。ユマはステータスこそ上がったが、慣熟訓練を行っていないのである。

 それでなくてもユマはステータスを持て余し気味に見える。

 スキルを使うと墓穴を掘る恐れがある。


 目算では後四歩。

 四歩でユマは俺の元へ到達する。

 迂回すれば当然話は別だが、事ここに至っては真っ直ぐ来る。

 ユマはもう死ぬ。

 魔族化しても《生命力》は回復しなかったようである。顔が土気色だ。一瞬、魔族化の影響かと思ったが、魔族の特徴は瞳の色だけ。全身の《出血》だって止まっていない。ユマが通った場所に赤い軌跡が残っている。元々、落下で死ななかった事が奇跡だ。

 瀕死の状態で動けば余命は減る。

 一秒後か、二秒後か。

 ユマは死ぬ。

 だが、ユマを殺すのは俺の刀だ。


 ――一歩。


 甲高い音が聞こえた。セティの、シュシュの、アリシアの声。

 刹那において声は単なる音となる。だが、感じ取れるものはあった。セティは喜、シュシュは悲、アリシアは勇だ。セティは飛び跳ね、シュシュは目を覆い、アリシアは腕を上げている。見えないが不思議と確信出来た。


 ――二歩。


 「行くぜ、相棒」と心中で声をかければ、「任せて」と八咫姫が光る。


 ――三歩。


 ユマが俺の眼前にいた。既に剣を振り被っている。やはり、四歩だと思わせたのはブラフか。緩急をつけて来ると思っていた。だから、慌てることなく左目の《魔眼》を発動。

 ユマの動きが止まる。停止ではないのだが。微妙に動いてはいる。


「――《(つい)の太刀》」


 抜刀術の奥義。

 《絶夢》のような付加能力もなければ、挙動を補正してくれる事もない。アーツに頼り切った者が放ったならば、刀を抜く事もままならない、使い手の技量が問われるアーツだ。

 だが、威力はアーツの中で一、二を争う。

 右足を踏み込む。身体を捻り、一気に抜刀。

 ユマと目が合う。

 彼の瞳に憎しみは無く。

 勝利への飢えだけがあった。

 ああ、懐かしいな、ユマ。ゲーム時代によく見た目だ。トップランカー。揃ってこの目をしていた。俺の方が強い。子供じみた思いだ。だが、理解出来る俺もまた。

 自然と口角が上がる。

 世界が止まったように錯覚する。その世界で俺だけが動いている。音が消え、色が消え、痛みが消えた。自身の身体を一振りの刀と化す。ただ斬る事だけを希求する。より強く、より早く。オウリという自我が溶け、八咫姫と混ざりあい――


「…………」

「…………」


 チン、という音で我に返る。知らぬ間に納刀していた。音が戻って来ていた。

 途中から記憶が無ない。だが、斬ったと確信していた。あの時、俺は八咫姫であり、八咫姫は俺だった。斬ったかどうか。その判断を刀は誤らない。


「よう、刻の不条理を感じたか?」


 肩越しに振り返る。ユマが左右(・・)にいた。上半身と下半身だ。

 ユマは天を仰いでいた。憑き物が落ちたような顔だ。


「…………ああ、酷いな。なんだい、今のは」

「《刻の魔眼》。天然モノのな」

 

 俺は左目を押さえる。本日、二度目の左目の使用は、尋常でない疼痛を生んでいた。

 対象の時をコンマ数秒加速、減速する。右目が加速、左目が減速だ。生まれ持った俺の異能。視線を介して使う。使いすぎると失明する。痛みがその証拠、らしい。

 地球では目の錯覚で終わる程度の効果。

 だが、この世界では奥の手になり得る。

 目にも留まらぬ高速戦闘において、コンマ数秒もズレれば致命的な隙を生む。

 ユマが目算を誤ったように。

 《サンクチュアリ》の有効時間を読み違えたように。


「ユマ、お前、アイラから魔法の習得方法を聞かなかったのか」


 俺が多くのクラス外スキルを習得しているのは、スニヤから習得方法を聞いたからである。ユマはアイラから聞いたのだろう。同じ輪廻の神だし、それはすぐ分かった。

 だが、ユマは魔法を使わなかった。

 ユマが魔法を使っていれば、厳しい戦いになったはずだ。

 聞いていないというのならいい。だが、聞いていて使えないのであれば――


「……聞いたさ。でも……理解……出来なくて、ね」

「…………」


 クラス外スキルの存在が明らかになった時、プレイヤーはこぞって魔法の習得に挑んだ。

 やはり、魔法は憧れだったのである。

 プレイヤーは早い段階で習得方法に辿り着いていた。

 しかし、確立されることはなかった。

 魔法を習得できたプレイヤーはいた。

 だが、絶対数は少なく、再現性も取れず、噂で終わってしまった。

 魔法使いへの第一歩が《魔力》を感じ取ってみよう、というものだったからだ。

 《魔力》が無い――無いとされている地球人が、《魔力》を感じ取るのは難しかった。

 だが、ユマはこの世界で生きて五百年。《魔力》を認識していないハズがないのだ。

 習得は容易なはず。

 しかし、ユマは魔法が使えないという。

 これが意味する事は一つ。

 ユマはまだ自分を地球人だと思っているのだ。


 もし俺がこの世界へ来て。

 セティが存在しておらず。

 意に沿わぬ転生をさせられたら。

 ああ、狂うかも知れないな。

 ……そう言う意味か。魂の牢獄ってのは。


 俺はハァ、とため息を吐く。


「転生したら俺を殺しに来い、ユマ。遊び相手になってやるよ。お前に拒否権はないぜ。だってよ、黒衣の死神に殺された魂は無理矢理召使いにされるんだろ。ま、お前が来るまでに適当な役職考えといてやるよ」


 ユマが俺の方を向く。物凄い呆れ顔だった。


「…………君は……さっきも思ったが……案外、おせっかいだな」


 ユマは最後に喉を鳴らすと、それきり動かなくなった。

 気が付けば。

 風は凪いでいた。

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