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怪談の学校  作者: runa
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早朝の訪問



 瓢箪君との遭遇以外は特に目立ったこともない。

 何事もなく校内へ入った。

 入る直前にも見上げたが、この学校の外観と内観は見事に期待を裏切ってくれる。

 …ギャップが凄いな。

 なんだろう。表現するのに語彙が足りないのが申し訳ない。

 和洋折衷かな…。

 うん。つまりは木造なのだけれど、古びた印象はなくて見事に自然光と調和している。なんだか、匠の作品といった趣さえ感じさせる内観だ。

 果たしてビフォーが存在したかは不明です。

 …通じなかったら、聞き流して下さい。


 さて、校内に入ってまず思うのは。


 意外と閑散としている。


 やはり、というのはあくまで内心の声。

 一応父の助言を信じて此処までは『透明化』せずに来ている。それで、結論としては瓢箪君一人と顔を会わせただけで済んでいる。これは、予想していたよりかは遥かに平穏なルートだった。

 正直、拍子抜けしているのだ。

 けれども、気を緩めるのはまた別問題。

 この時間帯に限る話。下見の時点で血生臭い事態に直面せずに済んだ。ただそれだけの成果への感想。


 追々分かっていくことではあるものの。

『透明化』とは、この学園に転入する自分にとって命綱同然のスキルに当たるわけで。


 今は未熟といって差し支えないそれを、ここ一週間程のあまりに切迫した期間内で習得を課された自分が父に無言で微笑みを向けたのも無理はない。

 人間、あまりに無茶ぶりをされたときには笑うしかないって本当かな、と。そんな風に思えていた自分が懐かしい…身に染みて実感することになりました。

 うん。本当に何をしてくれたんだあの父。


 あぁ、麗らかな陽光が惜しげもなく射し込んでくる。たかが下駄箱と侮ってはいけない。

 この学園の下駄箱は、規模が違う。

 広さが計り知れない。あと、追加で伝えておくとすればその不揃いさだろうか。

 高さ、大きさがまちまちだ。これは、つまりオーダーメイドと言って正しいのか。

 流石、神仏に始まり妖怪、その他諸々が集う学舎。

 この違和感たるや、現世から来たものにしか通じないのだろうな。

 この際誰でも構わない。

 分かち合えないのがもどかしいばかりですよ。うん。

 来客用のスリッパに履き替えながらそう思った。



 それはさておき、早朝の下見。

 これから向かう先は、ラスボスの居室…

 些か調子に乗りました。緊張すると出てくる私の悪い癖。

 それにどちらかと言えば対照的な存在で。

 話を聞いた限りでは。むしろ、身近といって差し支えないような。

 いえ、初対面…と言えばそうなのですが。

 追ってはっきりしていく事なので今は省略させて下さい。

 気を取り直して、話を本筋に戻すと。


 今日は、学園の理事長へ挨拶にやって来ました。

 つまり向かうところは理事長室。


 向かうところ怪異無しの廊下を見渡し、下駄箱のある正面棟から西へ向かって歩いていく。


 長い直線の廊下の先、奥まった位置に重厚な暗色の扉。


 事前に知らされてはいたものの、予想外にスムーズな道行に何となく疑いの念を抱くのも自然な心理。何せ、ここはそういうところ。

 新学期から通うとは思えない発言ですが、事実なので。

 従って、一応ここで確認しておく。

 視線の先の表札は。


『理事長室』

 おや、あってました。

 でも伝わらない部分で、拭いきれない違和感が。

 何だろう。やけに字体がファンシーだ。

 普通は明朝体なりゴシックなり…いや、詳しくは分からないのであまり深くは追及できない。

 うん。親しみやすいだけなら害はない。

 一人扉の前で頷いて、続けて扉をノックする。


「どうぞ、入りたまえ」


 なんだか…想像より遥かに意気込んだ返答だった。

 一拍おいて、ドアノブを回して入室する。


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