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怪談の学校  作者: runa
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少女の心境

 日和 呉葉。

 それが、現世における少女の名前だった。


 少女は1週間前に人生の転機を迎えることになり、その転機から1週間後の今は、ただ見上げている。

 視線の先に、今後通うことになった学舎。


 朝陽を浴びて清々しいまでの空気の中で、其処だけが周囲から浮いている。

 まずは、烏がやたら多い。

 陽光に照らされているにも関わらず、陰影が7割以上を占めている。

 どこか沼地を思わせる校庭が広がっている。

 一見しただけで、分かったのはそれくらい。これ以上の内情は実際に入るまでは分からない。


 この学園の前に立つことになったのには、訳がある。


 1週間前に遡れば全ての起因ははっきりする。

 けれども、その辺りを語る前にまずは基本的なところを要約しておこう。



 少女は半透明である。

 この学園の入学条件はオカルトに分類されること。

 少女は条件を満たす存在であり。

 

 つまり、少女は怪異である。


 そして、ここが大切だ。

 少女にはまだ怪異としての認識がない。

 しかし、入学手続きは滞りなく済んでいる。



 以上。うん、言いたいことは分かる。

 意味がわからない。そうだね。同意見です。


 さて、話を進めよう。さくさく進めたい。なにしろ現実はいつまでも立ち止まってはいられないものである。

 校舎を校門越しに見上げていた少女は一歩を踏み出した。

踏み出したところで、草木の茂みから『それ』は期待を裏切ることなく飛び出してくる。


 頭の大きな少年だ。

 両手を広げて、こちらを驚かせようと飛び出してきたものだろう。

 状況と、特徴。照らし合わせて彼が何者であるかを知るのには、さして時間は掛からない。

 その上で、彼に返せる反応の最善も理解していた。


 けれども、ここはあえてスルーします。

 個人的な恨みはないが、今はさくさく進む場面なので。

 現実とは無情なものだよ、少年。


「……ごめんね。ちょっと君の登場は早かったみたいだ」


 暫し迷ったのは、僅かばかりの良心が成せる間だ。しかし、その良心も今は儚い。

 少女の反応に、やや涙目になった少年はとぼとぼと元の位置へ戻って行き、再び身を潜めていた。

 その哀愁漂う背を見送った時には再び良心が戻ってきた。

 これは、自分が悪い。

 大いに反省した。

 そして、同時に実感する。


 噂に違わぬ学舎にして、その日常。

ここが、オカルト界におけるエリート校『怪談学園』である。



 因みに、冒頭から飛び出す羽目になった少年は瓢箪小僧です。

 次に会うときには、瓢箪君に省略。



『怪談学園』

 オカルト界における、エリート校。小中高大纏めて広大な面積を誇る付属校であり、その知名度は現世においても、けして低いものではなかった。


 今朝からそこに佇む自分。

 一言で纏めようかな。

 下見に来ました。






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