79 蹂躙される蝦夷地 その2
その頃、アクセルが率いる部隊は深い山々を超え、木古内にあるアイヌの集落を襲撃。こちらも略奪と虐殺に手を染めていた。
「おい、あんたら……! 何の恨みがあって、俺らを皆殺しにするんだ……!」
「人間である。貴様らが死ぬ理由はそれだけだ」
「は、何を言って……ぐわああああ!!」
問いかけるアイヌの若者の首を、アクセルは剣で容赦なく突き刺す。
「師団長! 中野館とリコナイにいる人間は全て始末完了いたしました!」
「うむ、ご苦労。では1000人ほどリコナイに残り、あとはさらに東を目指すとしよう」
「はっ!」
燃え盛るリコナイの集落。大量の人間と家が、次々と炭化していく。そこにもう、在りし日の姿は無い。
その様子にアクセルは笑いを堪えきれなかった。
「ふふふふ、ふはははは! これが、我らがエルフ族を散々虐げてきた人間共への復讐だ! さあ人間共、地獄を見るがいい!!」
アクセルはそう叫び、リコナイを後にした。
◆◆◆◆◆
その翌日。さらに東方に進軍したアクセルの部隊は、不破一族の居館・茂別館を強襲した。
懸命に防衛戦を展開する一族。しかし衆寡敵せず、茂別館は業火に包まれていた。
「伝令! 異人の兵が、茂別館に火を放った模様!」
「もはや、これまでか……」
館主・武治は、既に諦めの表情。
斎藤道三に美濃を追われ、季広を頼って蝦夷地に逃げ込み20数年。ついに己の死期を悟った。
それは館内にいる4人の息子も、妻・お凛も、さらには兵でさえ同じであった。
「そ、そんな……」
「じゃが、領民の悉くを殺戮され、戦わぬは武士の恥! ここがワシらの死に場じゃ。ならば、最後の一兵まで異人どもと戦わん!」
「父上……」
「後のことは、五郎や残った者に託せばよい! 全軍! 外で迎撃し、最期まで我らの意地を見せるのだ!」
「おお!!」
徳山館の季広と同じく、武治もその誇りと玉砕の覚悟を以て戦に臨んだ。
半年前の戦争では、結果として敵前逃亡した形となってしまった。これはその禊の一戦である。
それに死すとも、一兵でも多く削げば残った人たちが助かる。
そのような使命感が、彼らを再び前線へと動かした。
「我が名は、不破兵部少輔武治! 我こそはと思う者は、我が首を捕って手柄とせよ!」
「不破太郎広治! その首、貰い受ける!」
「不破次郎季治! 参る!」
「不破三郎光益! 見参!」
「不破四郎家政! いざ!」
こうして、茂別館の前に現れた一族の武将たち。
だがアクセルは、小さな虫を大量に駆除するが如く、あまりに呆気なく彼らを始末した。
「大量殺処分」
「ぐわあああああああ!」
アクセルが魔法を唱えた直後、将兵は茂別館の建物もろとも一撃で殲滅された。
上からグシャリと潰された館の中からは、一族の呻き声も聞こえてくる。
アクセルは氷よりも冷たい目をしながら武治の死体に近付き、グリグリと踏みにじった。
「下等種族が……せいぜい、あの世で後悔しているがいい」
死体を蹴り飛ばした後、アクセルは部隊を集め函館平野へと向かっていった。
◆◆◆◆◆
その後も彼らは順調に進軍を続け、宇須岸館、志苔館は陥落。志苔館主・小林良道を討死させた。
根強い抵抗もあったものの、第4師団の残り兵力は7500とまだまだ健在。
こうして、彼らに抵抗する勢力は蝦夷地から消滅。
そして部下のホルガー・エッゲ大佐同様、彼らも蝦夷地から人間を消すべく、恐怖の大量虐殺を敢行した。
最初のターゲットは、亀田(現・函館市)に住む和人であった。
「お、お止め下さい! や、やめて……キャアアアアア!」
「に、逃げろ……うわああああっ!!」
第4師団に占拠された後の蝦夷地は、阿鼻叫喚の地獄の様相を呈していた。
異国の兵は「スポーツだ!」と叫びながら、サバンナの獲物を狩るように次々と人間を殺していく。
和人とアイヌ、商人や漁師、猟師の区別なく。
狂気が、第4師団を支配していく。
「自らが人間であったことを、末代まで呪うが良い」
亀田消滅後、アクセル率いる部隊は函館平野中に展開。 さらなる大量虐殺に精を出していく。
この残虐すぎる動きに、鷲ノ木(現・森町)の和人集落や内浦湾沿いのアイヌの集落が一斉に武装蜂起。
函館平野に向かい第4師団の排除を試みるも、全て返り討ちにあってしまう。
それどころか、反対に第4師団によって集落を滅ぼされてしまう事態に進展した。
こうして、渡島半島南部から人間の姿がほぼ消滅した。脇本館周辺と勝山館を残して――




