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不破一族の多世界征服記~転生者一族の興亡史~  作者: 伊達胆振守(旧:呉王夫差)
1章 戦国時代の東洋と異世界「ミズガルズ」
7/206

7 もう1人の転生者との誓い

 (2016/7/24追記)この小説ではミネルヴァを”軍神”としていますが、ネット上で再び気になって調べたところ、”軍神”と書かれた記述はなかったんですよね。フレイア同様、万能ではあるようですが。

 どこで見て勘違いしたんだろう……。とりあえず、『不破一族の多世界征服記~転生者一族の興亡史~』では、彼女を”軍神”として扱います。

「余――オレは“転生者”、前世の名前は知恩院海翔だ」


 まさかの当たり。将棋の指し手は見事に間違たが、俺の質問は正鵠を射ていた。

 でも同じ世界、同じ時代、同じ地域に“転生者が2人”ってどうなんだ?

 そして天才丸――いや、知恩院海翔はどういう経緯で転生に至ったのか。


「あのですね……」


「敬語はいい。おそらくお前とは精神的にほぼ同年齢だ。あと呼び名は“天才丸”で頼む」


「そ、そうか。じゃあ単刀直入に訊くけど、あんたはいつ転生の事実に気がついたんだ?」


「生まれてすぐ、だ」


 奇遇だな、俺と同じか。だとすれば、同様に考えて次の質問が容易に思いつく。


「もう1つ訊くけどさ、もしかしてあんたも“誰かによって”転生させられた、とかじゃないよな?」


「……どうやら、オレとお前は境遇が似ているようだな」


 突き詰めると、天才丸も転生後にあの2人の女神による説明と能力伝授を受けたということか。

 いやはや、まさかこんな所で現代から生まれ変わった同志に会うとは全く想定していなかった。少しは同じ目線で語り合える相手が現れてくれて助かったよ。

 何せ戦国の世において、孤独を覚えずに済むからな。


 そう言えば、天才丸って前世はどんな人間だったんだ?

 同じ目線で語り合える相手とは言ったけれど、そもそも前世は「知恩院」という名前からして、生活水準が俺ごときとは比較にならないんじゃないか?

 オタク知識に囚われ過ぎだ、と言われればそれまでだが、ここは自身のためにも知っておいたほうが良いだろう。


「あのさ、あんたって前世はどういう暮らしを送っていたんだ?」


すると、天才丸の体がピクッと軽く動いた――ように見えた。まるで、この何気ない質問に何らかの因縁でもあるかのようだった。


「――知りたいか?」


「まあね。どうせここは戦国時代なんだし、仮に未来のことを話しても、理解できる人なんて他に居ないんだしね」


 天才丸は、少し喋るのをためらう風にため息をつく。

 が、下手に隠し立てすることも無いだろうと思ったのか、少しずつではあるが岩のような重い口を開き始める。

 そしてその口から、想定外の単語ワードが飛び出したのだ。


「……オレは、“退魔師”の家の出身だった」


“退魔師”? いやいや、この世界がファンタジー世界と融合したのは知っていたけど、まさか天才丸――知恩院海翔という人間は前世でもファンタジーの人間だったのか?


「オレは、将来を有望視される“退魔師”として、家族や親戚一同から大いに期待されていた」


 冗談はよせ、最初に浮かんだ感想だ。


 俺は家族はともかく、親戚には存在すら認めて貰えない悲しい人間だったのに。社会では暴行を加えられるだけのサンドバッグにされ、辛酸を散々舐めさせられる人生。

 魔法は無いし、奇跡も無い。良いことなんか1つもなかった。だから、俺より恵まれている海翔に俺の気持ちはわからない。


「だがオレはある時、退魔師の仕事で致命的なミスを犯してしまった。目が覚めるとこの世界にいたから、きっとオレは死んだのだろう」


ところが、天才丸の表情は至って真剣。まっすぐ俺の顔を見つめる。とても、嘘、偽りの類を語っているようには見えない。ましてや、俺を見下している素振り1つ見せない。


 もし仮に本当に“退魔師”なる超能力者の家系出身ならば、海翔のステータスを見ると、ひょっとしたら魔力に関する能力が高いのではないかと俺は予想した。

 実のところ、話にリアリティはあるがまだ信用はできない。それも理由だ。


「……なあ天才丸、一旦、そこを動かないでくれるか?」


「構わないが」


「ありがとう」


 周りに人がいないことを確認し、天才丸を座らせた状態にし、俺はステータス表示を行った。

 この世界の海翔はあくまで主君の子息・“天才丸”。フランクに会話している場面を他の家臣に見つかれば、「身分を弁えろ」と大目玉を食らいかねない。


 大丈夫だ、やろう。


――――――――――――――――――――――――――――


 名前 天才丸


 HP 2860/2860

 MP 1552/1552

 攻撃 171

 防御 148

 魔攻 290

 魔防 313

 敏捷性 127

 名声 7084


――――――――――――――――――――――――――――


 仮説通りだ。この人は魔法に秀でている。天才丸の話は嘘八百ではないようだ。


しかも俺より能力が高いと言うことは、早い段階から相当キツい鍛錬を積んできたのだろう。

ただ打たれ弱い面もあるから、そこは俺が前衛となってフォローしとかないとな。


 俺が天才丸のステータスに目を凝らしていると、向こうも俺と同じく俺の能力値を開示していた。


「ステータス表示か。ここもお前と同じものを授けられたみたいだな」


「同じものを与えられたってことは、あんたもミネルヴァやフレイアに会ったってことか?」


 俺はふと、深い考え無しに尋ねてみた。与えられた武器が一緒ならば、夢の中で出会った人物も同一なのだろう。そんな程度に訊いたのだ。


 だが天才丸は、この世界が想像以上に混沌としている事情を示す体験を語る。


「いや、オレが出会ったのは“アフロディーテ”と“九天玄女”であったな」


「!?」


 耳を疑った。ミネルヴァやフレイアの他に、転生者を送り込んだ神がいたことに。

 しかも天才丸を異世界に転生させた神、両方ともミネルヴァやフレイアとは別の神話に登場する人物だ。


「それマジの話か?」


「ああ、本当だ」


 どうやら“世界樹”の異常は、俺の予想より深刻なようだ。何せ、他の神々にもう1人助っ人を用意させるくらいなのだから。

 けれど出現した神々には共通点がある。


 まず“アフロディーテ”。

 ギリシャ神話における愛と美の女神だ。これは北欧神話のフレイアに相当する。


 そして“九天玄女”。

 日本では如何せんマイナーな方だが、中国神話における軍神で女仙だ。そして“軍神”という点で、ローマ神話のミネルヴァに相当する。


 偶然の一致なのか? そうとは思えない。事態は急を要しているのかもしれない。

 これは、早いとこ“秩序”をしっかり築き上げていかないとな。それも巨大隕石が落ちても、あるいは槍が降ってきてもビクともしないくらい強固なヤツを。

 問題は、海翔――天才丸に俺と同じ意志があるかどうかだ。


「なあ、あんたはこの世界に“秩序”を打ち立てたいと思うか?」


 天才丸は俺に背中を向け、館の外を眺めながら志のこもった声で答えた。


「当然だ。ただでさえ、前世でもやり残したことは沢山あった。ならばこの世界では、誰も成し遂げられないような『偉業』を成し遂げよう」


 どうやら考えていることは一緒みたいだ。「誰も成し遂げられない『偉業』」、俺の秘かな目標でもある。


 それに天才丸の前世は“退魔師”。さっきまで俺は、前世の天才丸の生まれの良さに僻ひがんでいた。

 が、よくよく熟考してみれば、天才丸には俺には想像もつかない後継者としてのプレッシャーも相当あったはず。

 しかも道半ばで倒れたんだ、さぞ無念だっただろう。俺よりレベルが高かったのは、その無念を晴らすため鍛錬に励んでいたから。


 前世に不平不満があったのは互いに同じ。だったら今、嫉妬心を消して海翔―――天才丸と組むべきじゃないのか?

 やってやろう。上を向いてな。


「じゃ、創ろうじゃないか。俺たちの“秩序”を」


「ああ。果てしない道のりが待っているけどな」


「大丈夫さ。俺達には“未来の知識”がある。これだけでも十分さ」


 俺たちは互いに向かい合い、小さな、そしてどこか誇らしげな笑みを浮かべる。

 共通の目的地ゴールがあるというのは、なんとも気持ちいいものだ。


「そうだ。この世界では、オレとお前はあくまで『主従関係』だ。だから主従としての誓いもたてようじゃないか」


「んじゃ、三国志の劉備、関羽、張飛のように桃園の誓いでもやるか?」


「フッ、良いだろう」


 俺がこの方式を選んだのは、どこかカッコいいと思ったからだけではない。義兄弟のごとく近しい関係となることで、子孫の代でも、より深く連帯を強めようとしたからだ。

 それに、これでようやく前世では叶わなかった「武親」の「親」、“親睦を結ぶ”ことを達成するわけだからな。


 そして俺たちは、お互い腰に差している刀を抜き、上でクロスさせるように高く掲げた。


「我ら、生まれた日、時は違えども!」


「同年、同月、同日に死せんことを誓わん!」


 太陽が刃を交わす俺たちを煌々と照らしたこの瞬間、蠣崎家と不破家の代々続く密接な繋がりが、今ここに締結された。 


「では行こうか、珍妙丸よ。オレ――余たちの『覇道』を!」


「合点承知の助!」


そして、チートな転生者どうしの主従による「世界征服」への茨の道が、切り開かれたのであった。

 第1章、終。

 江戸時代以前は、人や物事を中国の故事になぞらえることが多かったようです

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