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不破一族の多世界征服記~転生者一族の興亡史~  作者: 伊達胆振守(旧:呉王夫差)
3章 対ミュルクヴィズラント王国戦争
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39 2度めの勝山館

 翌日。

 俺たちは起きてすぐに、山道を歩く準備を始めた。

 とは言え、ここから勝山館までは下りの行程。昨日ほど、息を切らしながら進むことは無さそうだ。


 そして湯ノ岱温泉から西に向かうこと5時間。

 そこに広がったのは妙に見覚えのある景色。

 そう、コタンシヤムの乱でも激戦を繰り広げた勝山館である。


「ようやく、たどり着いたか……。長かったな」


 だが戦況は芳しくないようだった。

 何故なら、勝山館の麓にある上ノ国の町には、既に数多くの王国の旗が立っていたからである。

 もうこんなところまで進出してきたのかと、俺は驚嘆した。


「父上、ここもそんなに安全とは言えませんね」


「じゃが、もうワシらの行く宛は御座らん。かくなる上は、味方とともに館で討ち死にも辞さぬ所存」


 いやいや、そんなに死に急がないでください父上。最後まで諦めない心が重要だって言ったの、あんたでしょう。

 でもこの戦況じゃあ、それも覚悟せねばならないのかな……。


 長距離を歩いてきたのと、味方の不利を見て重い足取りで歩く俺たち。

 するとリシヌンテが、ハッとした様子で横のほうに目を向けた。


「あれ~? あの人、もしかして~……」


「リシヌンテ?」


 そして彼女は勝山館に続く道から外れて、ふと発見した人影の方向に足を進めた。

 俺もリシヌンテを連れ戻そうと、一旦みんなの元から離れて追いかける。

 

「リシヌンテ。寄り道しちゃダメだって……」


 そうリシヌンテに注意しようとすると、目の前に大勢の人が並んでいるのを発見した。

 蝦夷錦を羽織り、街を眺める1人の老人と、その背後にいる多くの兵士たち。この人たちもアイヌなのか?

 するとリシヌンテは、意外な人物の名前を発した。


「――ハシタインさん!」

 

 ハシタイン? もしかして、あの西蝦夷地の代表者とされた首長?

 てかリシヌンテ。そんな人物相手に随分と軽い感じで挨拶したな。

 

「確かに私はハシタインだが、お前は……?」


「覚えてない? リシヌンテだよ~!」


「リシヌンテ? まさかチコモタインのところの……」


「うん! 娘だよ~」


「そうかそうか。忘れてすまぬな。それにしても、大きくなったもんだ。10年以上前は、まだこんなに小さかったもんじゃが」

 

 なんだこの2人、知り合いだったのか。

 しかも10年以上前って、和人とアイヌ間の取り決めである「夷狄(いてき)商舶往還(しょうはくおうかん)法度(はっと)」が結ばれた時のことじゃないか。

 条約は季広さんとハシタイン、チコモタインの3人が集まって結ばれたもの。

 ということはその時に一度、2人は2人で顔合わせていたのか。 それならそうと事前に伝えてくれよ、まったく。


「そちらは和人の武士であるか?」


「あ、はい。そうですが」


 するとハシタインは俺の前に移動して、いきなり頭を下げた。


「すまぬのう。先の戦いでは、コタンシヤムとヌクリの兄弟を止められなくて」


「へ?」


 いや、あれはあの兄弟が勝手に暴走しただけの話じゃ……。なんであんたが謝罪するんだ? 


「いやなに、私とあの兄弟とは治めている集落が近くてのう。歳は離れていたが、仲良しこよしだったのじゃ。じゃが、その友情を以てしても阻止できなかったことを謝ろうと思っての」


「こちらこそ……その……すみません」


 なんか上手く返しづらい話されちゃったよ。

 俺は返す言葉が見つからず、とりあえずこちらも頭を下げた。


「それで、なぜハシタインさんはこちらに?」


「そのお詫びのしるしに、私らも勝山館にて共闘させてもらうことになったのじゃ。よろしくの」


「あ、こちらこそよろしく……」


 義理堅い首長さんだな。ま、でもそのほうがこちらとして助かる。戦力不足で常時苦戦中だったから有難い。


「ところでハシタインさん。今って、どんな感じなの~?」


「見ての通りじゃ。町は既に占拠されておる。それにこの状況に対し、和人側が如何なる策を用いるのかもわからぬ。だから勝山館に向かっている最中だったのじゃ」


「奇遇ですね。俺たちもちょうど同じ目的でこちらに」


「そうであるか。では、道案内を頼む」


「わかりました」


 こうして俺たちは、西蝦夷地のアイヌの首長・ハシタインとその配下を連れて、皆のところに戻っていった。

 ただ今までの流れから考えると、いくら加勢しに来る人がいたところで焼け石に水。

 正直、形勢がひっくり返る可能性は極めて低い。打開策なんて本当にあるのか? 

 拭いきれない不安を抱えたまま、俺たちは勝山館へと入っていったのだった。

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