大切な友達
葵と咲は、産まれたときからの幼馴染。
でも、中学になってからというものの、だんだん遊ばなくなりました。
小学校のころは沢山遊んでいたのに、どうしてだろう。
葵は、咲とすれ違うたびに思います。
そんなある日のことでした。
「葵。一緒に帰ろ?」
咲が、葵のクラスまでやっきて、言いました。
「うん。いいけど・・・」
突然の出来事にびっくりはしたものの、葵は咲と一緒に帰ることにしました。
「いままで、ごめんね」
咲は、うつむきながら言います。
「なにが?」
葵は訳が分からず、咲に問いかけます。
しばらくの間、二人とも黙っていましたが、やがて、咲が口を開きました。
「だって、今まで葵のことほったらかしにして、ほかの子と遊んでたし・・・」
そういう咲の目は、大粒の涙がたまっていました。
「気にしてない」
葵がそういうと、咲は自分の涙を手の甲でぬぐいました。
ずっと流れる涙を、咲はずっとぬぐっていました。
「・・・・・」
葵は、咲に一枚のハンカチを差し出しました。
それは、小学校の修学旅行のときに買った、葵と咲の、思い出のハンカチでした。
「これって・・・!」
そのハンカチを見るなり、咲は目を見開きました。
「覚えてくれてたの・・・?あの日のこと・・・・・」
咲は、葵の差し出したハンカチを、両手で大事そうに受け取りました。
そして、ハンカチを力いっぱい抱きしめた。
「もちろん。修学旅行の次の日、私の家で咲と一緒に、おそろいのハンカチに名前を入れたこと。今でも、思い出すよ」
「もう・・・捨てたかと思ってた・・・・」
咲はそういうと、自分のカバンから、葵と同じハンカチを引っ張り出した。
「ありがと・・・葵」
咲にそういわれ、一瞬戸惑った葵でしたが、やがてにっこりとほほ笑みました。
「こちらこそ。どうもありがとう」
「あのさ・・・。もし良かったら、また、咲と友達になってくれる?」
葵の笑みを見て、咲は、また葵と友達になりたい。
そういう気持ちが、あふれ出てきました。
無理だ。
そういわれるのは分かっていても、今は自分の気持ちを、葵に伝えたかったのです。
「なんで?」
葵の口から出た言葉は、咲の想像を上回りました。
「え・・えと。その・・・なんていうか・・・」
葵の問いに、咲は答えることができません。
答えは分かっているけれど、言葉にならないのです。
「元から友達じゃん」
咲が戸惑っていると、葵が言いました。
目を見開く咲に、葵は続けます。
「初めから・・・生まれた時から、友達でしょ?それは変わらない。だから、わざわざやり直す必要なんて無いよ。でしょ?咲」
葵の言葉に、咲は心の底から感謝しました。
「うん・・・!!これからもよろしくね」
いい友達を持ったなと、咲は思いました。
おしまい